間葉系幹細胞を利用した造血幹細胞移植技術の高度化・安全性向上に関する研究

文献情報

文献番号
200608048A
報告書区分
総括
研究課題名
間葉系幹細胞を利用した造血幹細胞移植技術の高度化・安全性向上に関する研究
課題番号
H17-再生-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 敬也(自治医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 久米 晃啓(自治医科大学分子病態治療研究センター)
  • 花園 豊(自治医科大学分子病態治療研究センター)
  • 長谷川 護(ディナベック株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,597,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血幹細胞移植の高度化、安全化を図る目的で、以下の3つの研究を実施した。1)間葉系幹細胞(MSC)によるGVHD抑制の分子メカニズムの探索、ならびに臨床研究実施に向けた準備、2)造血幹細胞移植モデル実験系におけるMSC共移植による生着促進効果の検討、3)ヒト型選択的増幅遺伝子(SAG)を用いた遺伝子導入造血系細胞の体内増幅に関する基礎的検討。
研究方法
1)初代培養マウス骨髄由来MSCを用い、MSCの免疫抑制機序の解明を試みた。2)MSC共移植による生着促進に関しては、ヒツジ胎仔への移植実験系で、移植細胞としてはサルES由来造血細胞を用いた。3)造血幹細胞遺伝子治療開発研究で、SAG技術の実用化研究を推進すると共に、SAGの機能を補完するための患者前処置について検討を行った。その他、遺伝傷害性の危険のないセンダイウイルス(SeV)ベクターにSAGを搭載し、SeVベクターの造血幹細胞治療への応用の可能性について検討した。
結果と考察
1)MSCはNO(nitric oxide)を産生し、Tリンパ球のstat5などのシグナル伝達系を抑制し、細胞増殖を抑制していることが示された。尚、MSCを用いた臨床研究計画(課題名「造血幹細胞移植後に発症した難治性急性GVHDに対する血縁者由来間葉系幹細胞を用いた治療」)は学内倫理委員会で承認され、対象症例の出現に備えた準備を行った。2)MSCを共移植した1頭のヒツジでサル造血細胞の生着を認めた。MSCの生着促進効果については、さらに例数を増やして解析する必要がある。3)慢性肉芽腫症(CGD)モデルマウスにおいて細胞増幅効果を示した臨床用SAGの機能を、サルにおいて確認する前臨床研究の準備を進めた。また、SAG導入細胞の生着を促進するため、最小限の前処置を加える検討を行った。SAG搭載SeVベクターについては、細胞株を用いた実験では増幅効果を認めたが、臍帯血CD34陽性細胞では増幅がみられず、その原因を調べている。
結論
1)MSCの免疫抑制メカニズムの一つとして、NOが関与していることを証明した。2)ヒツジ胎仔への移植実験系でMSC共移植による造血細胞の生着促進効果を検討した。3)改良型SAGを用いることにより、慢性肉芽腫症遺伝子治療の効果を増強しうると考えられる。SeVの造血幹細胞遺伝子治療への応用の可能性について検討した。

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