重度熱傷、皮膚潰瘍等に対する新規超微細多孔質薄膜を活用した培養皮膚再生技術の開発

文献情報

文献番号
200608043A
報告書区分
総括
研究課題名
重度熱傷、皮膚潰瘍等に対する新規超微細多孔質薄膜を活用した培養皮膚再生技術の開発
課題番号
H17-再生-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
McMillan、James R.(北海道大学・創成科学共同研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 田畑 泰彦(京都大学・再生医科学研究所)
  • 下村 政嗣(北海道大学・電子科学研究所附属ナノテクノロジー研究センター)
  • 芝木 晃彦(北海道大学・医学部)
  • 阿部 理一郎(北海道大学・北海道大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
12,456,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、新しい発想に基づく皮膚再生の開発を行い、同時に創傷治療に応用することである。本研究で用いる人工膜(多孔質薄膜)はハニカム構造を呈する多孔質薄膜は細胞接着時に、細胞と接する面積が小さいため、細胞へのダメージも小さい。かつ、その構造ゆえに膜内の小孔に徐放剤をはじめとする様々な極小物質を蓄えることができる。この膜は細胞を、特に3次元的に培養できることを明らかにしており、今回の検討においても最適なものと考える。加えて、新規徐放剤を作成し、至適因子を持続的に供給することで、より生体に近い機能を獲得させる。
研究方法
培養モデル、動物モデルを用いた生体における人工皮膚の効果の検討を行う。創傷治癒促進作用の最も効果が発現できる、薄膜の種類、細胞(表皮細胞、線維芽細胞)の種類、徐放剤の種類、徐放剤に含有、放出させるサイトカイン・成長因子の種類を同定する。平成17年度の研究において、培養モデルを用いた生体における人工皮膚の効果の検討を行い、種々の皮膚構成細胞を用いてより生体皮膚に機能・構造的に近い人工皮膚を作製しえた。
結果と考察
本年度の研究で、多孔質薄膜作製の最適条件を検討し、多孔質膜を用いた人工皮膚を作製した。人工皮膚組織再生に必要とされる上皮細胞と真皮細胞からなる3次元組織形成には、孔の貫通した膜の孔径、膜厚の最適化が必要である。今後は、孔径3ミクロン以下の孔貫通膜の製膜条件検討を行う。加えて徐放剤に関しては、ゼラチンハイドロゲルから生理活性をもつbFGFとTGF-β1の徐放を実験的に確認していた。本年度の研究によって、それらの成長因子がハイドロゲルの作製条件によって、異なる時間パターンで徐放化されることがわかった。また、人工膜との組み合わせを考えて、フィルム、粒子状などの異なる形状をもつハイドロゲルの作製条件も確立した。さらに、多孔質薄膜、および細胞・培養条件の最適条件をそれぞれ検討し、研究成果に基づく人工皮膚を作製した。さらに作製した人工皮膚をマウス皮膚創傷部に移植し、創傷治癒を促進することを明らかにした。今後は現在までの成果を、より臨床応用に近づけるべく、創傷治癒促進効果のより高い人工膜の作製を行う。あわせて、人工膜の孔径が及ぼす細胞への影響の詳細な検討も引き続き行う。
結論
 今回の研究で、新規多孔質薄膜および新規徐放剤を用いた人工皮膚を作成した。加えてこの人工膜は創処治癒を促進させることを明らかにした。

公開日・更新日

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