慢性腎障害の重症化防止を目的とした幹細胞移植による残存腎機能再構築

文献情報

文献番号
200608042A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性腎障害の重症化防止を目的とした幹細胞移植による残存腎機能再構築
課題番号
H17-再生-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大島 伸一(国立長寿医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 篠崎 尚史(東京歯科大学市川総合病院)
  • 菅谷 健(東京歯科大学市川総合病院)
  • 室原 豊明(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 小野 佳成(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 松尾 清一(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 山本 徳則(名古屋大学医学部附属病院)
  • 槇野 博史(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 野入 英世(東京大学医学部附属病院)
  • 谷口 英樹(横浜市立大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
37,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、腎障害の重症化防止を達成すべく、幹細胞移植による安全性評価法を確立し、残存腎機能の再構築を目指す。
研究方法
本研究は3つの研究チームよりなる。各チームは互いに緊密に連携し、施設を超えて移植細胞の輸送や移植プロセスの効率化・標準化を図る。
結果と考察
1)骨髄末梢血間葉系幹細胞移植チームは、移植細胞の対象を、骨髄末梢血由来に加え、脂肪由来間葉系幹細胞にまで広げ治療効果を検討した。その結果、ヒト脂肪細胞から効率よく間葉系幹細胞を分離培養する方法を確立することに成功し、サイトカイン分泌能の高い間葉系細胞を選択的に分離できた(特許申請済み)。さらにヌードラットに遷延性の間質線維化を伴う腎障害モデルを作製し、前述のヒト細胞を腎被膜下に投与することにより長期間の生着と腎機能改善が達成された。一方、ラット骨髄由来間葉系細胞を静脈内投与しても腎機能の改善は見られなかったことから、間葉系幹細胞に関して腎局所投与の有効性が確認された。
2)組織特異的上皮系幹細胞移殖チームは、ラット、マウス腎組織特異的幹細胞の移植プロセスの標準化を図り、至適条件をイヌなどの大型動物における細胞移植方法に敷衍し、治療効果の評価を行った。ラット腎幹細胞を急性腎不全モデルに被膜下移植した結果、多種の腎尿細管上皮細胞への分化、生着、腎機能改善を確認した。また、マウス腎幹細胞について、致死性のCisplatin腎症に対し生存率向上を可能にする移植細胞の形質を特定した。さらに、イヌ急性腎不全モデルに対して同様の腎組織特異的幹細胞を採取し自家細胞移殖を行い、腎機能の改善が確認された。
3)セルプロセシングチームは、標準化された培養法に従い、ヒト腎疾患患者尿中からの腎幹/前駆細胞の単離培養例を初年度に比し大幅に増加できた(計56例)。また、マウス腎由来幹細胞を用いてsingle cell sortingによりSP細胞を継代し、そのSP細胞比率が一定となるよう形質維持された移植細胞の品質管理方法を設定した。
結論
低血清培養を用いたヒト脂肪由来幹細胞は、患者の負担、動物原料の排斥、十分な細胞数の確保、治療効果などすべての面で、有利な条件を兼ね備えており、臨床応用が期待できると考えられる。また、ヒト腎組織特異的幹/前駆細胞の安全性評価に有用なバイオマーカーを用いた細胞移植標準化の可能性が示された。

公開日・更新日

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