組織幹細胞賦活化による心血管再生療法の開発

文献情報

文献番号
200608040A
報告書区分
総括
研究課題名
組織幹細胞賦活化による心血管再生療法の開発
課題番号
H17-再生-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
佐田 政隆(東京大学医学部附属病院・先端臨床医学開発講座)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 恭信(東京大学医学部附属病院・循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
材料工学的手法を駆使して徐放性合成化合物ON-1301を用いて生体の自然治癒力を増強する戦略の実用化を図る。今までの検討で、小動物、大動物を用いた実験において、有効性が確認できた。特殊医療機器を用いずに汎用性のある医療手段として確立するために、最高の安全性で、最大の効果を期待できる徐放薬の投与経路、徐放製剤性状を検討し、no option の下肢末梢血管疾患を対象にして臨床試験を開始させる。
研究方法
ON-1301 によって、増殖因子の発現が亢進し、血管新生が促進される分子機序を明らかにする。また、最大の血管新生促進効果が得られる徐放製剤の剤型、投与量、投与回数、投与経路を検討する。
結果と考察
プロスタサイクリン受容体活性化物質として開発された低分子合成化学物ON-1301が、線維芽細胞から増殖因子の分泌を促した。また、内皮細胞によるin vitro での管腔形成を濃度依存性に促進させた。ON-1301 をポリ乳酸グリコール酸で徐放化してラット下肢虚血肢に筋肉注射したところ血管新生を促進させた。マウス心筋梗塞モデルにおいても、徐放化ON-1301製剤を筋肉内投与した。内因性VEGF、HGFの発現が亢進し毛細血管密度も増加した。心筋拡大が抑制され死亡率、心臓破裂が有意に減少した。家畜ブタの慢性虚血モデルにおいて、徐放化ON-1301製剤の開胸手術により、心外膜側からを外科的に投与した。ON-1301により心拍出量は有意に増加して、壁運動・電位ともに改善し左室拡大を抑制した。心外膜からの外科的投与によるON-1301の有効性が確認できたため、より汎用性が高い投与法として、ON-1301-MSを冠動脈内へ投与したところ、no flow 現象が認められ、投与後1時間以内に4頭のうち2頭が死亡した。生存した動物でもON1301-MSによって心機能の低下が認められた。臨床試験を始める前には、ON1301-MSの剤型溶媒などの詳細かつ慎重な検討が必要であることを痛感した。
結論
徐放化したONO-1301の局所投与は有効かつ安全と思われる。今後、有効性、安全性の最適な治療手段を確立したのち、下肢虚血疾患患者を対象に臨床試験を開始する予定である。

公開日・更新日

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