シアロムチンPCLP1による脈管内皮幹細胞の分離とその培養系を用いた血管/リンパ管の再生医療の基盤技術の確立

文献情報

文献番号
200608037A
報告書区分
総括
研究課題名
シアロムチンPCLP1による脈管内皮幹細胞の分離とその培養系を用いた血管/リンパ管の再生医療の基盤技術の確立
課題番号
H17-再生-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
宮島 篤(東京大学分子細胞生物学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、脈管内皮前駆細胞から組織特異的な内皮細胞へと至る階層性獲得の分子基盤を解明し、リンパ管および血管の再生医療実現のための知見を蓄積し、また真に実現可能な細胞移植療法開発のため、実用的な細胞ソースからの脈管内皮前駆細胞の分離、分化誘導、増幅技術の開発を行う。
研究方法
マウス胎児より種々のマーカー遺伝子に対する抗体とセルソーターを用い特定の細胞群を分離し、試験管内での増殖能や分化能についての検討を行った。また、マウスES細胞を用い内皮細胞への分化誘導過程における種々のマーカー遺伝子の発現について検討した。
結果と考察
我々は、マウス胎児肝臓に存在するPCLP1強陽性細胞がOP9ストローマ細胞上で高い増殖能を示し、増殖因子の刺激により試験管内で血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞へと分化すること、マウスへの移植実験により培養前後の細胞はともに生体の血管へと生着することを見出した。PCLP1強陽性細胞は既知の内皮細胞マーカー遺伝子を発現しておらず新規の脈管内皮前駆細胞と考えられた。我々は今回、ストローマ細胞非存在下でPCLP1強陽性細胞を培養、増幅させる培養系の検討を行い確立した。ストローマ細胞非存在下で増幅させたPCLP1強陽性細胞は、増殖因子の添加によりFlk1の発現誘導が認められたことから、内皮細胞への分化能を保持していると考えられる。コロニー形成能を有する細胞の頻度や分化誘導効率などの定量的な検討が今後の課題である。
 我々は、脈管内皮細胞多様性獲得の様式や分子機構を解析するモデル臓器として肝臓に注目し、肝類洞内皮細胞およびリンパ管内皮細胞の分化機構について解析した。肝類洞内皮細胞、リンパ管内皮細胞、その他の内皮細胞はヒアルロン酸受容体であるStab2やLyve1の発現に加え、いくつかのマーカー遺伝子の発現を組み合わせることで、分離、識別可能であった。また、ES細胞からの内皮細胞分化誘導系において、Lyve-1陽性Stab2陽性で肝類洞内皮細胞様の発現プロファイルを示す細胞の誘導に成功した。今後、この系を用いることで内皮細胞多様性獲得の分子機構が明らかになると期待できる。
結論
我々の発見したPCLP1強陽性細胞は、細胞移植治療への応用の可能性が考えられる。一方で、移植可能な細胞ソースから同様の活性をもつ細胞を同定する必要などの課題も残る。内皮細胞分化の人為的な制御は、移植治療の効率化や標的組織を絞った血管新生誘導など、新たな治療戦略の開発につながるものと期待される。

公開日・更新日

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