成体脳に内在する神経幹細胞の賦活化に関する開発的研究

文献情報

文献番号
200608034A
報告書区分
総括
研究課題名
成体脳に内在する神経幹細胞の賦活化に関する開発的研究
課題番号
H17-再生-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高坂 新一(国立精神・神経センター神経研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 圭司(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 湯浅 茂樹(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
17,951,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
パーキンソン病を代表とする神経変性疾患では、脳内の特定の部位におけるニューロンが変性脱落することにより重篤な機能障害が生じる。本研究は、神経変性疾患の新たな治療法として、再生医療に基づきより効率的かつ安全性の高い内在性神経幹細胞を賦活化させる低分子化合物の薬剤開発を目的とする。そのため、成体脳内在性の神経幹細胞の分裂や増殖、移動、分化に関わる分子(例えば、NMDA受容体やその関連分子、G蛋白質共役型受容体等)に着目し、その分子基盤を解明するとともに、これらの分子を標的とする薬剤の開発を行う。
研究方法
個々の研究方法に関しては、分担研究報告書を参照されたい。
結果と考察
1.成体脳神経幹細胞の賦活化を指標としたNMDA受容体阻害剤の探索ならびにその分子基盤の解明
 NMDA受容体阻害剤であるメマンチンを成体のマウスに投与することで、海馬歯状回顆粒細胞下層に内在する性神経幹細胞の増殖が亢進することを確認した。また、マウス胎仔の大脳皮質でNMDA受容体阻害剤の投与により発現が亢進する分子として、NotchのリガンドであるDelta-like1およびDeltex3を見出した。

2.成体脳神経幹細胞の増殖、分化、シナプス新生に関する形態学的基盤の解析
 メマンチン投与により、海馬歯状回顆粒細胞下層にPSA-NCAM陽性細胞およびcalretinin陽性細胞数の増加が認められたことから、メマンチンはニューロンへの分化を亢進することが示唆された。さらに、これらの新生した幼弱ニューロンのシナプスの形成をならびに詳細な微細構造を解析するための新たな手法として、電子線トモグラフィー法を確立した。

3.成体脳神経幹細胞の分化増殖を制御するG蛋白質共役型受容体リガンドの探索
 エンドセリンB型受容体のブロッカーであるBQ788を成体マウスの脳室内に持続的に投与した結果、GFAP陽性ならびにDcx陽性の神経幹細胞の脳室周囲からの移動・分散が誘導された。
結論
NMDA受容体阻害剤であるメマンチンを成体マウスに投与することで、海馬歯状回顆粒細胞下層における内在性の神経幹細胞の増殖、ならびにニューロンへの分化が亢進した。また、エンドセリンB型受容体のブロッカーであるBQ788を成体マウスの脳室内に持続的に投与することで、脳室周囲の神経幹細胞の移動・分散が誘導された。

公開日・更新日

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