アデノ随伴ウイルス(AAV)を利用した遺伝子治療法の開発研究

文献情報

文献番号
200607032A
報告書区分
総括
研究課題名
アデノ随伴ウイルス(AAV)を利用した遺伝子治療法の開発研究
課題番号
H17-遺伝子-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 敬也(自治医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 水上 浩明(自治医科大学分子病態治療研究センター)
  • 竹内 隆正(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
38,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非病原性AAVを利用した遺伝子導入法について、以下の3つの研究を実施した。1)新規AAVベクター作製法(バキュロウイルスを利用する方法)と、AAVベクターの特徴を活かした遺伝子治療法の開発、2)AAVの特徴を利用した第19番染色体部位(AAVS1)特異的遺伝子組込み法の応用開発、3)野生型AAVゲノムが組み込まれるAAVS1 insulatorの機能に関する解析、などを行った。
研究方法
1)(i)バキュロウイルス法によるAAVベクター作製では、1型AAVベクター粒子中のVP1量増加の効果を調べた。(ii)脳卒中易発症高血圧ラットやダール食塩感受性ラットを用い、AAV1ベクター筋注法によるIL-10の持続的な体内発現を行った。(iii) AAVベクターでも遺伝子導入と免疫反応の関連が問題となっており、中和抗体に関する検討を行った。2)間葉系幹細胞(MSC)への応用実験を継続し、MSC由来細胞株へ遺伝子導入を試みた。3)AAVS1 insulatorおよび他種のinsulatorをAAVベクターに搭載し、マウス骨格筋での遺伝子発現を検討した。
結果と考察
1)(i) 1型AAVベクターのVP1量増加により、遺伝子発現を約1.5倍高めることができた。(ii) IL-10遺伝子治療モデル実験で、炎症制御と高血圧の改善に伴う脳硬塞や心不全の発症予防効果を確認し、生存期間の有意の延長が得られた。(iii)8型AAVに対する中和抗体の検出感度を向上させたところ、カニクイザルのコロニーにおいて高い陽性率を認め、低力価であっても中和抗体により遺伝子導入効率が低下することが明らかとなった。2)MSCに対して、約10%の頻度でAAVS1へ遺伝子を特異的に組み込ませることができた。この技術は、遺伝子導入に伴う細胞癌化を防ぐ革新的技術となる。3)遺伝子発現は、AAVS1 insulatorを用いた際に効果が最大であった。
結論
1)バキュロウイルス法によるAAVベクター作製法を改良した。IL-10発現AAVベクター筋注法による遺伝子治療モデル実験で、脳硬塞や心不全の発症予防効果が得られた。遺伝子導入効率には中和抗体の影響が強くでた。2)MSCへの部位特異的遺伝子組込み法を行った。3)AAVS1 insulator搭載AAVベクターで、マウス骨格筋での遺伝子発現が良好であった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-