慢性疾患としての糖尿病の病期に注目した病態の解析と、新たな診断・治療法の探索

文献情報

文献番号
200607031A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性疾患としての糖尿病の病期に注目した病態の解析と、新たな診断・治療法の探索
課題番号
H17-ゲノム-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
安田 和基(国立国際医療センター 研究所・代謝疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鏑木 康志(国立国際医療センター 研究所・代謝疾患研究部)
  • 湯尾 明(国立国際医療センター 研究所・血液疾患研究部)
  • 大河内 仁志(国立国際医療センター 研究所・細胞組織再生医学研究部)
  • 浜崎 辰夫(国立国際医療センター 研究所・細胞修飾生体反応研究室)
  • 岡村 匡史(国立国際医療センター 研究所・ヒト型動物開発研究室)
  • 浅島 誠(東京大学大学院・総合文化研究科)
  • 江崎 治(独立行政法人国立健康・栄養研究所・基礎栄養プログラム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
180,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 糖尿病は、長い慢性の経過をたどって発症・進展する特徴がある。「成因」だけでなく「病期」に基づく新しい診断治療法の開発をめざし、糖尿病の真のオーダーメイド医療の実現を目標とする。
研究方法
 糖尿病の発症・進展に重要な、「環境因子」、「膵代償機序とその破綻」、「合併症」の3点に注目して、独自のin vitroモデルあるいは個体モデルを構築して解析した。日本人非肥満糖尿病のモデルとしてSendaiラットを解析し、また重層的な解析を可能にするヒト臨床パネルを構築した。
結果と考察
 発生工学的モデルを用い、運動の体脂肪減少効果にはAMPキナーゼが必要だが、糖代謝改善作用には他のメカニズムも関与すること、食事組成により、脂肪肝の成因および魚油による抑制効果が異なること、を示した。
 膵β細胞では、発生・分化・成熟の各段階について、網羅的解析により各段階に重要な分子の探索を試みた。膵初期発生については、昨年度報告したマウスES細胞およびツメガエル胚からの膵分化系について、条件検討によりさらに膵分化効率を上昇させた。内分泌系分化については、仔ブタ膵SP(side population)細胞の性質を詳細に検討し、また他臓器由来細胞から構築した分化系では糖尿病動物への移植で一時的ながら効果が見られた。高度に分化した膵β細胞の解析では、グルコース反応性を指標とした仔ブタ膵のin vitro成熟系を構築し、膵β細胞完全長cDNAライブラリーの解析から、新規の転写開始点や新規の機能分子を同定した。
 糖尿病合併症については、ヒト初代培養あるいは霊長類ES細胞由来の血管内皮細胞を用いて、グルコースによる機能障害モデルを確立した。また網膜色素上皮細胞から、グルコースで発現が増加する新規の網膜血管新生促進因子を同定した。
 個体モデルとして、Sendaiラットの耐糖能障害・膵ラ氏島障害を経時的に解析し、網羅的な発現遺伝子解析を行った。またヒト糖尿病患者900人以上から、ゲノム、血清・尿・硝子体、臨床情報などが完備したパネルを構築した。
結論
 全く独自の解析系を構築・駆使して、糖尿病の病態に関係するさまざまな知見を得た。これらは、創薬の標的やスクリーニング系として有用であるが、個別の研究成果を、糖尿病の慢性の発症・進展における「病期」の概念へ統合し、ヒト検体を用いた検証、および診断治療へ応用することが今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-