ゲノム医学を用いた骨粗鬆症ならびに変形性関節症疾患遺伝子の同定・機能解析とその診断・治療への応用

文献情報

文献番号
200607024A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム医学を用いた骨粗鬆症ならびに変形性関節症疾患遺伝子の同定・機能解析とその診断・治療への応用
課題番号
H17-ゲノム-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 聡(東京大学医学部附属病院 抗加齢医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野)
  • 堺 隆一(国立がんセンター研究所細胞増殖因子研究部)
  • 津久井 通(埼玉医科大学医学部ゲノム医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症(OP)・変形性関節症(OA)は、腰背痛や骨折、運動障害等を伴い特に高齢者の健康を損なう症候群である。本研究は、ゲノム医学の手法を活用し、骨と軟骨における遺伝子情報制御分子とその共役因子、標的因子群を網羅的に同定解析し、遺伝子改変動物とヒト遺伝学を用いて、生物個体レベルでそれらの分子機能と、骨関節疾患遺伝子としての意義を明らかにし、新しい診断、治療法への応用を計ることを目的とする。
研究方法
1)Wnt-LRP5経路とOP・OAとの関連を調べた。2)IGFシグナル経路遺伝子のSNPとOAとの関連を調べた。3) OP・OAに関する全ゲノムSNP解析を行った。4)骨芽細胞におけるSXR応答経路の解析を行った。5) 骨芽細胞におけるビタミンK応答遺伝子を探った。6)骨芽細胞におけるステロイド応答遺伝子の解析を行った。7)破骨細胞における女性ホルモン受容体の高次機能の解析を行った。8)骨軟骨におけるリン酸化蛋白質の解析を行った。9)ビタミンK、ERに関連して軟骨細胞もしくは肝臓特異的遺伝子改変動物(cTg)の作製と解析を行った。
結果と考察
1)Wnt-LRP5経路に関するWnt10B、WISP1のSNPとOPならびにOAの指標がそれぞれ相関した。2)IGF1RのSNPがOAの指標と相関し、疾患遺伝子としての役割が注目された。3) 全ゲノム解析により特にP値の低い有望な候補疾患遺伝子が得られた。4)骨芽細胞におけるビタミンK/SXR の新規標的遺伝子TSKがビタミンKのコラーゲン蓄積作用を担うことを発見し、骨治療薬の作用点として注目された。5) ビタミンK2のPKAのリン酸化を介する新しいシグナル経路を明らかにした。6)骨芽細胞において新しいステロイド標的エレメントを同定した。7)破骨細胞でのエストロゲン受容体の新しい役割を発見した。8)骨での新しいシグナル伝達経路を明らかにし、新規メカニカルストレスセンサーを同定した。9)ERならびにGGCX cTgマウスを作製し骨軟骨の異常を認め、疾患モデルと治療薬の評価に有用と考えられた。
結論
本研究により、TSKをはじめとする骨関節疾患遺伝子ならびに治療薬の新しい標的分子とその役割を明らかにし、関連した疾患モデル動物を作製解析した。Wnt10B、WISP1等の骨量もしくは骨変形の指標に相関する遺伝子のSNPを複数同定し、ゲノム医学を用いた研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-04
更新日
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