難治性眼表面疾患に対する培養粘膜上皮幹細胞シート移植術の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200608017A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性眼表面疾患に対する培養粘膜上皮幹細胞シート移植術の開発に関する研究
課題番号
H16-再生-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 坪田 一男(慶応義塾大学 医学部)
  • 橋本 公二(愛媛大学 医学部)
  • 島崎 潤(東京歯科大学 眼科)
  • 中村 隆宏(同志社大学 研究開発推進機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
22,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
角膜上皮幹細胞が高度に傷害されて生じる難治性眼表面疾患では、有効な治療法が未だに開発されていない。本研究では、当疾患に対する再生医療学的治療法の開発を主目的として、拒絶反応の危険性のない自己口腔粘膜上皮幹細胞を用いた眼表面再建術の開発を検討した。具体的には、最新の組織工学・培養技術・分子生物学的手法を用い、また安全性かつ倫理的側面に配慮し、細胞レベルから実際の臨床応用にいたる幹細胞を用いた再生医療技術を多角的・包括的に検討・開発した。
研究方法
これまでの培養口腔粘膜上皮移植術の臨床経過を基礎および臨床的側面から中長期的評価を行い、その適応と問題点ならびに検討課題を明らかにした。次に、移植に使用する培養粘膜上皮シートの生物学的性質の向上を目的として、clonal analysis法やp75分子を用いて口腔粘膜上皮幹細胞の純化を試みた。さらに、安全性・倫理面に配慮した粘膜上皮幹細胞シート移植術の開発を念頭に、培養環境の安全性の整備(血清、フィーダー細胞、培養基質など)に関する一連の基礎ならび臨床的研究を行った。
結果と考察
これまで当施設で施行した培養口腔粘膜上皮移植症例45眼中44眼(98%)で重層化した培養口腔粘膜上皮シートが術後早期の時点で角膜および結膜を含めた眼表面に生着した。問題点としてあげられた術後のグラフト内への血管新生に関しても、血管新生抑制因子であるTSP1がその分子機構の強く関与していることが示唆された。Clonal analysisにより得たholocloneの細胞群は、前述のp75を高率に発現していることがわかり、p75がヒト口腔粘膜上皮幹細胞のマーカーとしての可能性を見出した。培養時の安全性や倫理的課題に関する検討で、自己血清を用いた培養上皮シート移植術の臨床成績も良好であることがわかった。またγ線滅菌処理した乾燥羊膜基質を用いた培養上皮シートは移植可能であることがわかった。さらに、実験レベルではあるが、異種フィーダー細胞にかわる新しいフィーダー細胞として、角膜実質幹細胞を分離し、そのフィーダー細胞としての有効性を示した。
結論
難治性眼表面疾患に対する培養粘膜上皮幹細胞移植術の開発に向けて、さまざまな角度から本術式の有効性や問題点、課題等を考察した。今後は、臨床応用可能な培養粘膜上皮幹細胞移植の開発に向け、厚生省の幹細胞に対する治療指針に則り、本術式の安全性や倫理面に配慮した手法を厳密に確立し、その適応範囲や有効性、予想される合併症について考察を重ねていく。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

文献情報

文献番号
200608017B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性眼表面疾患に対する培養粘膜上皮幹細胞シート移植術の開発に関する研究
課題番号
H16-再生-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 坪田 一男(慶應義塾大学 医学部)
  • 橋本 公二(愛媛大学 医学部)
  • 島崎 潤(東京歯科大学 眼科)
  • 中村 隆宏(同志社大学 研究開発推進機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
角膜上皮幹細胞が高度に傷害されて生じる難治性眼表面疾患では、有効な治療法が未だに開発されていない。本研究では、当疾患に対する再生医療学的治療法の開発を主目的として、拒絶反応の危険性のない自己口腔粘膜上皮幹細胞を用いた眼表面再建術の開発を検討した。具体的には、最新の組織工学・培養技術・分子生物学的手法を用い、また安全性かつ倫理的側面に配慮し、細胞レベルから実際の臨床応用にいたる幹細胞を用いた再生医療技術を多角的・包括的に検討・開発した。
研究方法
幹細胞移植開発への前段階に位置づけられるこれまでの培養口腔粘膜上皮移植術の臨床経過を基礎および臨床的側面から総合評価を行い、その適応と問題点ならびに検討課題を明らかにした。次に、移植に使用する培養粘膜上皮シートの生物学的性質の向上を目的として、網羅的な遺伝子発現解析より得られた幹細胞マーカーの情報を用いる手法や、単一細胞レベルにおけるclonal analysis法を用いて口腔粘膜上皮幹細胞の純化を試みた。さらに、臨床応用に向けてその安全性・倫理面に配慮した粘膜上皮幹細胞シート移植術の開発を念頭に、培養環境の整備(血清、フィーダー細胞、培養基質など)に関する一連の基礎ならび臨床的研究を行った。
結果と考察
これまで当施設で施行した培養口腔粘膜上皮移植症例45眼中44眼(98%)で重層化した培養口腔粘膜上皮シートが術後早期の時点で角膜および結膜を含めた眼表面に生着し、視力回復が可能であることがわかった。幹細胞研究に関しては、遺伝子発現プロファイルによる網羅的解析から、神経成長因子の低親和性受容体であるp75が口腔粘膜上皮において局所限定的に発現していることを見出し、p75がヒト口腔粘膜上皮幹細胞のマーカーとしての可能性を見出した。培養時の安全性や倫理的課題に関する検討で、自己血清を用いた培養口腔粘膜上皮シート移植術は基礎的にも臨床的にも有効であることがわかった。また培養基質の安全性に関する検討項目で、γ線滅菌処理を施行した新規の乾燥羊膜基質は、常温保存可能で従来の羊膜と同等の物理学的・細胞生物学的特徴を保持し、乾燥羊膜を基質に用いた培養上皮シートの作製も可能であることがわかった。
結論
難治性眼表面疾患に対する培養粘膜上皮幹細胞移植術の開発に向けて、さまざまな角度から本術式の有効性や問題点、課題等を考察した。今後は、臨床応用可能な培養粘膜上皮幹細胞移植の開発に向け、厚生省の幹細胞に対する治療指針に則り、本術式の安全性や倫理面に配慮した手法を厳密に確立し、その適応範囲や有効性、予想される合併症について考察を重ねていく。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200608017C