霊長類ES細胞の品質管理と同種移植の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
200608013A
報告書区分
総括
研究課題名
霊長類ES細胞の品質管理と同種移植の安全性確保に関する研究
課題番号
H16-再生-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
寺尾 恵治(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 仁藤 新治(田辺製薬先端医学研究所)
  • 花園 豊(自治医科大学再生医療研究部)
  • 久和 茂(東京大学農学生命科学研究科)
  • 山元 恵(国立水俣病総合研究センター)
  • 中村 紳一朗(社団法人予防衛生協会)
  • 下澤 律浩(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではES細胞を用いた再生医療・細胞治療の臨床応用を最終目的として、ヒトに近縁な霊長類のES細胞を対象として、ES細胞の品質管理および分化細胞の同種移植に伴うリスク評価に関わる標準プロトコルを作成することを当面の目標とした。
研究方法
分担研究者により樹立されたカニクイザルのES細胞(CMK6、CMK6/G)について解析を行った。具体的培養方法、分化誘導方法、解析方法については分担研究報告書に詳述する。同種移植の実験は独立行政法人医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センターの交配方法で妊娠し、胎齢の明らかな胎児に移植した。
結果と考察
カニクイザルES細胞に発現している未分化マーカー遺伝子の検索を継続し、Caveolin1、CyclinA1、GABRB3、Oct3/4、PRDM14遺伝子が未分化マーカー遺伝子であることを確認した。
ビスフェノールA(BFA)存在下での胚様体形成の系を用いて、ES細胞特異的な未分化マーカー遺伝子の検索を行った。その結果、4種の候補遺伝子を同定した。
サルES細胞からastrocyteを効率よく分化させる条件を見出した。この培養法で得られたastrocyteの培養上清は、馴化培地として有効であった。
免疫機能が正常な成体カニクイザルにES細胞を同種移植した場合には、移植部位や移植細胞数にかかわらず拒絶が生じ、テラトーマ形成は認められなかった。
免疫不全マウスを用いた品質管理(多分化能)と安全性評価(テラトーマ形成能)の有効性を評価する目的で、SCIDマウスで確認された奇形種を病理学に解析した結果、三胚葉の構成成分が確認されたが、移植3ヶ月では三胚葉組織が明確に区別できることが明らかになった。
結論
霊長類ES細胞の品質管理に適用可能な遺伝子マーカー、タンパク質マーカーとして、新たに4種の候補遺伝子と6種のタンパク質を同定した。Astrocyte Conditioned Medium(ACM)中の液性因子により、ES細胞から分化誘導した神経幹細胞を神経細胞用無血清培地中で接着培養することによって、効率的な分化を可能にした。
分化誘導培養した霊長類ES細胞を胎児に同種移植すると全例にテラトーマ形成が認められるが、免疫機能が正常な成体カニクイザルでは免疫拒絶が生じることから、同種移植によるテラトーマ形成などのリスク評価では、免疫寛容成立前の胎児を利用する方法が必須であることが判明した。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

文献情報

文献番号
200608013B
報告書区分
総合
研究課題名
霊長類ES細胞の品質管理と同種移植の安全性確保に関する研究
課題番号
H16-再生-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
寺尾 恵治(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 仁藤 新治(田辺製薬先端医学研究所)
  • 久和 茂(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 花園 豊(自治医科大学再生医療研究部)
  • 山元 恵(国立水俣病総合研究センター)
  • 中村 紳一朗(社団法人予防衛生協会)
  • 下澤 律浩(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではES細胞を用いた再生医療・細胞治療の臨床応用を最終目的として、ヒトに近縁な霊長類のES細胞を対象として、ES細胞の品質管理および分化細胞の同種移植に伴うリスク評価に関わる標準プロトコルを作成することを目標とした。
研究方法
分担研究者により樹立されたカニクイザルのES細胞(CMK6、CMK6/G)と滋賀医科大学で樹立されたカニクイザルES細胞(CMSA3、CMSA-6)の3種のES細胞株について解析を行った。具体的培養方法、分化誘導方法、解析方法については研究報告書に詳述する。同種移植の実験は独立行政法人医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センターの交配方法で妊娠し、胎齢の明らかな胎児に移植した。
結果と考察
カニクイザルの標準ES細胞株としてCMK6株をとりあげ、未分化細胞、EBおよびNSCに発現している約1000種のタンパク質を網羅的に解析した結果、未分化細胞高発現している9種と分化細胞に高発現している15種のタンパク質を特定した。Caveolin1、CyclinA1、GABRB3、Oct3/4、PRDM14遺伝子が未分化ES細胞で特異的に発現していることを明らかにした。Neural Stem Sphere(NSS)と命名した球状の細胞集合体を形成させ、効率的に神経幹細胞および神経細胞へ分化誘導する技術を確立した。前造血細胞に分化させたES細胞をサル胎仔に移植した場合には、その造血系を一部再構築できたが(2-5%),全例でテラトーマが形成された。一方、分化誘導した前造血細胞から未分化マーカーであるSSEA-4陽性細胞を除去してサル胎児に同種移植した場合には、テラトーマ形成を完全に予防することができた。
結論
霊長類ES細胞の品質管理に適用可能な遺伝子マーカー、タンパク質マーカーを検索し、ES細胞に特異的に発現している遺伝子と高発現するタンパク質を新たに見いだし、継代培養されるES細胞のStemnessを評価する指標を得た。
分化誘導培養した霊長類ES細胞を胎児に同種移植すると全例にテラトーマ形成が認められた。分化誘導細胞からSSEA-4陽性細胞を除去すると、テラトーマの形成は認められないことから、in vitro分化誘導では程度の差はあるが未分化なES細胞が残存し、テラトーマ形成のリスクが生じることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200608013C