多施設連携による高齢者主要疾患横断的メディカル・バイオリソースバンク及びデータベース構築と遺伝子・遺伝子産物網羅的解析に基づく疾患・薬物応答関連分子経路の解明

文献情報

文献番号
200607007A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設連携による高齢者主要疾患横断的メディカル・バイオリソースバンク及びデータベース構築と遺伝子・遺伝子産物網羅的解析に基づく疾患・薬物応答関連分子経路の解明
課題番号
H16-ゲノム-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 輝彦(国立がんセンター研究所腫瘍ゲノム解析・情報研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 雄一(国立精神神経センター神経研究所 疾病研究第二部)
  • 山田 哲司(国立がんセンター研究所 化学療法部)
  • 安田 和基(国立国際医療センター研究所 代謝疾患研究部)
  • 加藤 規弘(国立国際医療センター研究所 遺伝子診断治療開発研究部)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター 病院長)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所 副所長)
  • 澤田 純一(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
145,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床試料に対する分子網羅的・体系的解析に基づく、認知症・がん・糖尿病・高血圧・喘息等の革新的な診療・予防法確立を最終目的とする。H18年度は疾患関連分子の解析を進めるとともに、この種の研究の最も重要な基盤である質・量に優れたバイオリソースバンクを各施設に構築、共同研究等を通して多施設連携型活用を目指す。
研究方法
国立高度医療センターを中心に試料及び臨床情報等のバンク・データベース化を継続した。アルツハイマー病、糖尿病、高血圧の候補遺伝子多型あるいは変異について、診療情報や中間形質等との相関を解析した。肝細胞がん切除標本組織の全エクソン・アレイによる発現プロファイル情報を解析した。主要な薬物応答関連候補遺伝子の日本人のハプロタイプとその頻度推定を継続した。
結果と考察
認知症例ミトコンドリアゲノムの塩基配列解析から、疾患と関連が示唆されるSNPを複数抽出し、欧米の報告と異なることを見出した。肝細胞がん全エクソン・トランスクリプトーム解析から、がん特異的なスプライシングプロファイルの存在を示唆した。高血圧素因候補遺伝子10種類に変異・多型を361個見出した。吹田研究3654人を対象とした相関解析から、SLC9A2、UMOD、ELN遺伝子と血圧との相関が見出された。吹田サンプル約2000名の解析から、高血圧症例の約10%にアルドステロン分泌過剰の疑いを認めた。アルドステロン合成酵素遺伝子(CYP11B2)のプロモーター領域多型と食塩摂取量、収縮期血圧の関係を定量的に評価した。薬物動態関連遺伝子のうち、CYP2C8、CYP2D6、ABCC1の連鎖不平衡解析及び高多型密度ハプロタイプ解析を行い、主要ハプロタイプをタグする多型を同定した。以上の成果は他の研究事業とも一部連携して疾患ゲノムデータベースGeMDBJ、代謝性疾患の統合データベースJMDBase等から公開した。これらのバンク及びデータベースを維持し、新規試料等受け入れが可能な体制を本研究終了後も確保することが重要課題である。
結論
質の高い診療等の情報が附随した臨床試料のバンク構築・維持・発展及び共同研究等による活用は今後のomics疾患研究推進の最重要要素であり、その基盤構築を行った。分子網羅的な強力な手法により、疾患の本態解明に資する情報が抽出され、今後の生物学的機能解析等を踏まえて、創薬標的分子経路同定につながると期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200607007B
報告書区分
総合
研究課題名
多施設連携による高齢者主要疾患横断的メディカル・バイオリソースバンク及びデータベース構築と遺伝子・遺伝子産物網羅的解析に基づく疾患・薬物応答関連分子経路の解明
課題番号
H16-ゲノム-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 輝彦(国立がんセンター研究所腫瘍ゲノム解析・情報研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 雄一(国立精神神経センター神経研究所 疾病研究第二部)
  • 山田 哲司(国立がんセンター研究所 化学療法部)
  • 安田 和基(国立国際医療センター研究所 代謝疾患研究部)
  • 加藤 規弘(国立国際医療センター研究所 遺伝子診断治療開発研究部)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター 病院長)
  • 斎藤 博久(国立成育医療センター研究所 免疫アレルギー研究部)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所 副所長)
  • 澤田 純一(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症・がん・糖尿病・高血圧・喘息等の革新的な診療・予防法確立を最終目的として、臨床試料に対する分子レベルの解析を行う。また、この種の研究の最も重要な基盤である質・量に優れたバイオリソースバンクを各施設に構築、共同研究等を通して多施設連携型活用を目指す。
研究方法
国立高度医療センターを中心に試料及び臨床情報等のバンク・データベース整備を行った。アルツハイマー病、膵がん、糖尿病、高血圧の候補遺伝子多型・変異について、診療情報や中間形質等との相関を解析した。肝細胞がん組織の全エクソン・アレイ発現プロファイル情報を解析した。主要な薬物応答関連候補遺伝子の日本人のハプロタイプを解析した。
結果と考察
アルツハイマー病症例のミトコンドリアゲノム塩基配列解析から、疾患と関連が示唆されるSNPを複数抽出し、欧米の報告と異なることを見出した。放射線や化学療法を受けた食道がん、肺小細胞がん症例を対象に血清または血漿低分子タンパク質とペプチドを大規模に検索し、治療効果に相関する分子群を見出した。膵がんの易罹患性と相関する代謝酵素の遺伝子多型を見出した。肝細胞がん全エクソン発現解析から、がん特異的なスプライシングプロファイルの存在を示唆した。高血圧の候補遺伝子の約1000 SNPsの頻度情報のデータベース化を進め、アルドステロン合成酵素遺伝子(CYP11B2)プロモーター領域の多型とアルドステロンレベル、食塩摂取量、収縮期血圧の関係を定量的に解析した。エラスチン遺伝子多型とpulse wave velocity間に相関を認め、収縮期高血圧の素因であること、炎症性サイトカインの遺伝子MCP1の多型が血管合併症発症に寄与すること等を示唆した。アレルギー疾患を含む炎症組織トランスクリプトーム・データベース構築を行い、複数の特定機能分子を同定した。薬物動態・薬力学上特に重要と考えられる15種の遺伝子につき、蓄積した遺伝子多型情報を基に連鎖不平衡解析及びハプロタイプ解析を行い、遺伝薬理学上有用性の高い高多型密度ハプロタイプ情報のデータベース化と公開を進めた。
結論
質の高い診療情報が附随した臨床試料のバンク構築とその共同研究等による活用はomics疾患研究推進の最重要要素であり、その基盤構築を行った。分子網羅的な手法により疾患の本態解明に資する新知見を得て、今後の機能解析等を通して創薬標的分子経路同定につながると期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200607007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)認知症、糖尿病、小児がん等のバイオバンク構築を進めた。2)がんの治療効果を予測しうるバイオマーカーを開発した。膵がん罹患と相関する遺伝子多型を見出した。3)ALDH2遺伝子等を除き、一般に高血圧発症に寄与度の高い変異の頻度は低いことを見出した。4)代謝性疾患の遺伝素因に関する統合データベースJMDBaseを公開した。5)炎症組織トランスクリプトーム解析から、複数の特定機能分子を同定した。6)薬物代謝・動態関連遺伝子の日本人の高密度ハプロタイプを明らかにした。
臨床的観点からの成果
1、2、3、5)アルツハイマー病に関連するミトコンドリアDNA多型、高血圧の遺伝素因の構造や生活習慣と相互作用する複数の遺伝子多型、膵がんの遺伝素因、アレルギー性疾患に関係する分子群について新たな知見を得、我が国の症例の理解・対策に貢献した。2)食道がん・肺小細胞がんの化学療法・放射線療法個別化を推進した。4)質・量に優れたバイオリソースバンク構築は、代謝症候群等の診断、治療、予防の個別化技術開発の重要基盤となる。6)遺伝子多型と薬物応答性との臨床相関解析研究の立案・遂行に有用な情報を提供した。
ガイドライン等の開発
3)今後、高血圧対策の手順作りにおいて、CYP11B2 T(-344)C変異は、減塩により効率よく血圧を下げられる個人を同定する指標となりうる。6)日本人における薬物代謝酵素及び動態関連遺伝子のハプロタイプ情報は、医薬品申請にあたってのゲノム薬理学的情報に関する今後のガイドライン作成に極めて有用な基礎的情報となる。
その他行政的観点からの成果
ミレニアムプロジェクト、メディカルフロンティア、プロテオームファクトリー等の先行する大型プロジェクトの成果や経験、方法論を基盤に、試料等パネルを発展的に再構築したことは、医学・科学行政上、意義が大きい。ゲノム、プロテオームなどの重層的な解析により、SNP等が重要な表現型の代替バイオマーカーとして同定できれば、健康行政上大きな成果となる。平成20年度に40歳以上の生活習慣病検診が必須化されることに関連して、代謝症候群の療養指導に役立てるべく、患者指導用ツール(診療データブック)を作成した。
その他のインパクト
2)2005年9月26日、日本経済新聞に「血中たんぱく質解析でがん治療効果を予測」として報道された。3)メディカル・トリビューンに、マイクロRNAと食塩感受性に関する研究が取り上げられた。4)2005年11月5日に、読売新聞一面に国際医療センターにおける「明日の医療実現プロジェクト」のスタートが取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
85件
その他論文(和文)
24件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
72件
学会発表(国際学会等)
36件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計6件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tamura Y, Sakasegawa Y, Omi K, et al.
Associaiton study of the chemokine, CXC motif, ligand 1 (CXCL1) gene with sporadic Alzheimer’s disease in a Japanese population.
Neuroscience Letters , 379 (3) , 149-151  (2005)
原著論文2
Kajimoto K, Shioji K, Tago N, et al.
Assessment of MEF2A mutations in myocardial infarction in Japanese patients.
Circulation Journal , 69 (10) , 1192-1195  (2005)
原著論文3
Iwanaga Y, Nishi I, Ono K, et al.
Angiotensin-converting enzyme genotype is not associated with exercise capacity or the training effect of cardiac rehabilitation in patients after myocardial infarction.
Circulation Journal , 69 (11) , 1315-1319  (2005)
原著論文4
Naraba H, Kokubo Y, Tomoike H, et al.
Functional Confirmation of Gitelman’s Syndrome Mutations in Japanese.
Hypertension Research , 28 (10) , 805-809  (2005)
原著論文5
Naraba H, Iwai N.
Assessment of the MicroRNA System in Salt-Sensitive Hypertension.
Hypertension Research , 28 (10) , 819-826  (2005)
原著論文6
Iwai N, Kajimoto K, Tomoike H, et al.
Polymorphism of CYP11B2 determines salt sensitivity in Japanese.
Hypertension , 49 (4) , 825-831  (2007)
原著論文7
Maekawa K, Itoda M, Sai K, et al.
Genetic variations and haplotype structure of the ABC transporter gene ABCG2 in a Japanese population.
Drug Metabolism and Pharmacokinetics , 21 (2) , 109-121  (2006)
原著論文8
Kim SR, Saito Y, Maekawa K, et al.
Thirty novel genetic variations in the SLC29A1 gene encoding human equilibrative nucleoside transporter 1 (hENT1).
Drug Metabolism and Pharmacokinetics , 21 (3) , 248-256  (2006)
原著論文9
Soyama A, Saito Y, Ohno Y, et al.
Diverse structures of chimeric CYP-REP7/6-containing CYP2D6 and a novel defective CYP2D6 haplotype harboring single-type *36 and CYP-REP7/6 in Japanese.
Drug Metabolism and Pharmacokinetics , 21 (5) , 395-405  (2006)
原著論文10
Kim SR, Ozawa S, Saito Y, et al.
Fourteen novel genetic variations and haplotype structures of the TYMS gene encoding human thymidylate synthase (TS).
Drug Metabolism and Pharmacokinetics , 21 (6) , 509-516  (2006)
原著論文11
Saito Y, Katori N, Soyama A, et al.
CYP2C8 haplotype structures and their influence on pharmacokinetics of paclitaxel in a Japanese population.
Pharmacogenetics and Genomics , 17 (7) , 461-471  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-