高齢者疾患の共通のリスクファクター・肥満を抑えるための新戦略

文献情報

文献番号
200607004A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者疾患の共通のリスクファクター・肥満を抑えるための新戦略
課題番号
H16-ゲノム-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
鍋島 陽一(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 俊彦(京都大学大学院医学研究科)
  • 伊村 明浩(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,238,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は申請者が発見した新たな事実を基盤として、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの加齢に伴って発症する疾患の最大のリスクファクターである肥満や代謝異常におけるコレステロール代謝、カルシウム代謝の関与を解明し、加齢疾患の発症予防、老化遅延、健康老化の実現を目指すものである。
研究方法
(1)コレステロール代謝制御、カルシウム代謝制御におけるβ-Klotho、α-Klothoの分子機能、(2)β-Klotho/FGFシステムの機能に影響を与える分子の検索、(3)β-Klothoノックアウトマウスにおいて老化遅延、寿命延長が起こるかの3項目の検討した。
結果と考察
(1) β-Klotho遺伝子ノックアウトマウスでは多量のコレステロールが胆汁酸に変換されて糞便中に排泄され、体内のコレステロール量が低下し、体重が減少する。β-Klotho遺伝子は、この代謝特性を担う遺伝子の一つであると推定され、β-Klothoがコレステロール代謝を制御する機構にどのように関与しているかを中心に解析を進め、コレステロールを胆汁酸へと変換する律速酵素(Cyp7A1)とCyp8 B1の活性が亢進していることを突き止めた。(2)血中を循環しているFGF23、FGF19がどのようにしてターゲット細胞を特異的に認識してシグナルを伝えるかは謎とされてきたが、この制御機構にα-Klotho、β-Klothoが関与していることを確認した。(3)ヒトβ-Klotho遺伝子多型と連鎖する疾患は確認されていない。(4)老化遅延、寿命延長に付いては解析中である。
結論
β-Klothoノックアウトマウスではコレステロールを胆汁酸へと変換する律速酵素(Cyp7A1)とCyp8 B1の活性が亢進していた。FGF19/15がFGFR4を介してCyp7A1の発現を抑制しており、このシグナル伝達システムにβ-Klothoが必須である事を確認した。また、β-KlothoノックアウトマウスではFGF15の発現が亢進しており、絶食によりFGF15の発現亢進が示唆されており,これらの結果からβ-Klothoは食事摂取に応答してコレステロール代謝を制御する機構に関与していると推定された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200607004B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者疾患の共通のリスクファクター・肥満を抑えるための新戦略
課題番号
H16-ゲノム-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
鍋島 陽一(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 俊彦(京都大学大学院医学研究科)
  • 伊村 明浩(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動脈硬化、高血圧、糖尿病などの加齢に伴って発症する疾患の最大のリスクファクターである肥満や代謝異常におけるコレステロール代謝、カルシウム代謝の関与を解明し、加齢疾患の発症予防、老化遅延、健康老化の実現を目指すものである。
研究方法
(1)コレステロール代謝制御、カルシウム代謝制御におけるβ-Klotho、α-Klothoの分子機能、(2)循環するFGFとKlothoファミリーによる代謝制御機構の解析(3)ヒトβ-Klotho遺伝子多型と加齢疾患の発症頻度、(4)β-Klothoノックアウトマウスにおいて老化遅延、寿命延長、(5)β-Klotho/FGFシステムの機能を制御するシステムの開発と制御分子の探索の5項目を検討した。
結果と考察
β-Klothoノックアウトマウスではコレステロールを胆汁酸へと変換する律速酵素(Cyp7A1)とCyp8 B1の活性が亢進していた。コレステロール、胆汁酸の腸肝循環を担う分子群には大きな異常がなく、Cyp7A1とCyp8B1を共通に負に制御する転写因子、SHPに異常があり、絶えずCyp7A1、Cyp8 B1遺伝子の発現が亢進していた。FGF19/15がFGFR4を介してCyp7A1の発現を抑制しており、このシグナル伝達システムにβ-Klothoが必須である事を確認した。また、β-Klothoは食事摂取に応答してコレステロール代謝を制御する機構に関与していると推定され、コレステロール代謝改善剤の新たなターゲットとしてβ-Klotho/FGF/19システムが推定された。その機能を解析する培養系を立ち上げた。ヒトβ-Klotho遺伝子多型を解析したが、現時点では特定の疾患と明瞭な連鎖が確認されていない。β-Klothoノックアウトマウスの老化遅延、寿命延長は解析中である。コレステロール代謝改善剤の新たなターゲットとしてβ-Klothoシステムが想定され、特許出願した。
結論
β-Klothoノックアウトマウスではコレステロールを胆汁酸へと変換する律速酵素(Cyp7A1)とCyp8 B1の活性が亢進していた。FGF19/15がFGFR4を介してCyp7A1の発現を抑制しており、このシグナル伝達システムにβ-Klothoが必須である事を確認した。また、β-KlothoノックアウトマウスではFGF15の発現が亢進しており、絶食によりFGF15の発現亢進が示唆されており,これらの結果からβ-Klothoは食事摂取に応答してコレステロール代謝を制御する機構に関与していることが示唆された。コレステロール代謝改善剤の新たなターゲットとしてβ-Klothoシステムが想定される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200607004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
コレステロール代謝を制御する新たなシグナル伝達システムとしてbeta-Klotho/FGF19システムを発見した。
beta-Klotho/FGF19システムはコレステロールから胆汁酸を合成する代謝経路の律速酵素であるCyp7A1の発現抑制を介してコレステロール代謝を制御していることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
薬剤や抗体のスクリーニングに利用できるbeta-Klotho/FGF19の機能を解析出来る培養細胞系ができた。
ガイドライン等の開発
該当せず
その他行政的観点からの成果
該当せず
その他のインパクト
該当せず

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tohyama O., Imura A., Iwano A. et al
Klotho is a novel β-glucuronidase capable of hydrolyzing steroid β-glucuronides.
J. Biol Chem. , 279 (11) , 9777-9784  (2004)
原著論文2
K Takeshita, T Fujimori, Y Kurotaki et al
Sinoatrial Node Dysfunction and Early Unexpected Death of Mice with a Defect of Klotho Gene Expression.
Circulation , 109 (14) , 1776-1782  (2004)
原著論文3
Imura A. Iwano A., Kita N. et al
Secreted Klotho protein in sera and CSF: Implication for post-translational cleavage in release of Klotho protein from cell membrane.
FEBS Letter , 565 (2) , 143-147  (2004)
原著論文4
Shimada T.,Takeshita Y., Murohara T. et al
Angiogenesis and vasculogenesis are impaired in the precocious-aging Klotho mouse.
Circulation 1 , 110 , 1148-1155  (2004)
原著論文5
Ito S., Fujimori T., Furuya A et al
Impaired negative feedback suppressionof bile acid synthesis in mice lacking βKlotho.
J. Clin. Invest. , 115 , 2202-2208  (2005)
原著論文6
Toyama R., Nabeshima Y., Tsuji Y. et al
Impaired regulation of gonadotropin-releasing hormone leads to the atrophy of the female reproductive system in klotho-deficient mice.
Endocrinology , 147 (1) , 120-129  (2006)
原著論文7
Sato A., Hirai T., Imura A. et al
Morphological mechanism of the development of pulmonary emphysema in klotho mice.
Proc Natl Acad Sci USA , 104 (7) , 2331-2336  (2007)
原著論文8
Imura A., Tsuji Y., Murata M. et al
α-Klotho as a regulator of Calcium homeostasis.
Science  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-