プリオン蛋白及びその関連遺伝子の構造・機能に基づく治療法の開発

文献情報

文献番号
200607003A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン蛋白及びその関連遺伝子の構造・機能に基づく治療法の開発
課題番号
H16-ゲノム-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
片峰 茂(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 堂浦 克美(東北大学大学院医学系研究科)
  • 堀内 基広(北海道大学大学院獣医学研究科)
  • 桑田 一夫(岐阜大学人獣感染防御研究センター)
  • 調 漸(長崎大学医学部・歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
40,613,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プリオンタンパク遺伝子とプリオン病関連遺伝子及びそれらの産物の構造・機能を解明し、診断治療法の開発に資することを目的とした。
研究方法
(1) PrPの構造に係るバイオ・インフォーマテイクスにより見出した新規抗プリオン物質GN8の作用機構の解析。(2) PrPとDplの融合遺伝子及び変異遺伝子を有する遺伝子改変マウスにおける神経細胞死の解析。 (3) 培養細胞のプリオン感受性の差に基づく網羅的遺伝子探索とRNA干渉法により同定したプリオン増殖に関る宿主因子候補の生物活性の碓認。(4) 多数例CJDにおける拡散強調画像・脳脊髄液中の14-3-3蛋白・Tau蛋白の陽性率の検討。
結果と考察
(1)論理的創薬の手法により見出した新規抗プリオン化合物GN8 の作用メカニズムは,細胞型プリオンに結合し,その立体構造を安定化させるためであることが明らかとなった。 (2) PrPのN末領域は神経毒性を有するプリオン類似蛋白Dplに対してin transのみならずin cisにも抑制的に機能すること、PrPのN末領域のうちオクタペプチドリピート領域(a.a.51-90)とcharged motif領域(a.a.25-50)のどちらか一方のみで抗Dpl作用には十分であることが判った。(3) プリオン感染細胞における遺伝子発現のshRNAを用いた網羅的解析によりプリオン複製に関与する宿主遺伝子候補4種類を見出した。(4) プリオン感受性サブクローンN2a-5と非感受性サブクローンN2a-1の比較解析を実施して、プリオン増殖 (PrPScの産生) に関与すると考えられる宿主遺伝子として6遺伝子を同定した。(5) CJDの補助診断法として髄液タウ蛋白測定の有用性を示した。
結論
(1)プリオン病に対する治療薬を開発するためにPrPの立体構造変換過程を制御するための論理的創薬基盤が整備できた。(2) PrPはそれ自体の蛋白構造に神経細胞保護領域(N末領域)とDpl類似の細胞毒性領域(C末領域)をもつことが判明した。(3) PrPSc産生に関与する宿主因子の有力候補分子が同定でき、これらが治療の標的となる可能性を示した。(4)脳脊髄液中t-tau蛋白とMRI拡散強調画像の組合せがCJDの診断基準として最も有用性が高いことを示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200607003B
報告書区分
総合
研究課題名
プリオン蛋白及びその関連遺伝子の構造・機能に基づく治療法の開発
課題番号
H16-ゲノム-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
片峰 茂(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 堂浦 克美(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 堀内 基広(北海道大学大学院 獣医学研究科)
  • 桑田 一夫(岐阜大学 人獣感染防御研究センター)
  • 調 漸(長崎大学医学部・歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プリオンタンパク遺伝子とプリオン病関連遺伝子及びそれらの産物の構造・機能を解明し、診断治療法の開発に資することを目的とした。
研究方法
(1) PrPの構造に係るバイオ・インフォーマテイクスに基づく新規抗プリオン物質の探索。(2) 遺伝子改変マウスを用いたPrPとDplの神経細胞死に関る拮抗的作用の分子機構の解明。(3) 培養細胞のプリオン感受性の差に基づく網羅的遺伝子探索とRNA干渉法によるプリオン増殖に関る宿主因子の同定。(4)多数例及びCJDにおける病型別での拡散強調画像・脳脊髄液中の14-3-3蛋白・Tau蛋白の陽性率の検討。
結果と考察
(1)論理的創薬の手法により新規抗プリオン化合物GN8 を見出し、その作用メカニズムは,細胞型プリオンに結合し立体構造を安定化させるためであることが明らかとなった。 (2) PrPのN末領域は神経毒性を有するプリオン類似蛋白Dplに対してin transのみならずin cisにも抑制的に機能すること、PrPのN末領域のうちオクタペプチドリピート領域(a.a.51-90)とcharged motif領域(a.a.25-50)のどちらか一方のみで抗Dpl作用には十分であることが判った。(3) プリオン感染細胞における遺伝子発現のshRNAを用いた網羅的解析によりプリオン複製に関与する宿主遺伝子候補4種類を見出した。(4) プリオン感受性サブクローンN2a-5と非感受性サブクローンN2a-1の比較解析を実施して、プリオン増殖 (PrPScの産生) に関与すると考えられる宿主遺伝子として6遺伝子を同定した。(5) CJDの補助診断法として髄液タウ蛋白測定の有用性を示した。
結論
(1)プリオン病に対する治療薬を開発するためにPrPの立体構造変換過程を制御するための論理的創薬基盤が整備できた。(2) PrPはそれ自体の蛋白構造に神経細胞保護領域(N末領域)とDpl類似の細胞毒性領域(C末領域)をもつことが判明した。(3) PrPSc産生に関与する宿主因子の有力候補分子が同定でき、これらが治療の標的となる可能性を示した。(4)脳脊髄液中t-tau蛋白とMRI拡散強調画像の組合せがCJDの診断基準として最も有用性が高いことを示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200607003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
正常型PrPに結合し構造を安定化する新規化合物GN8を構造論的に予測し、in vitroとvivoで抗プリオン活性を碓認した。GN8 の作用メカニズムは,正常型PrPに結合し,その立体構造を安定化させるためであることを明らかにした。 (2)プリオン類似蛋白Dplの神経毒性分子機構の一端を明らかにした。 (3)プリオン複製に関与する宿主遺伝子候補を10種見出した。
臨床的観点からの成果
治療法開発の臨床試験遂行には確度の高い早期診断法の開発が不可欠である。本研究では、多数例のプリオン病患者における拡散強調画像・脳脊髄液中の14-3-3蛋白・Tau蛋白の診断の有効性の検討を行い、早期及び全経過において最も感度・特異度が高い組み合わせはMRI拡散強調画像と脳脊髄液 Tau蛋白定量であった。CJDの補助診断法として髄液タウ蛋白量の診断基準としての有用性を世界で初めて示したものである。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)をはじめとするプリオン病には有効な臨床治療手段がないのが現状である。世界における牛プリオン病(狂牛病)のヒトへの伝播をめぐるパニックに加え、我が国では不幸にも硬膜移植後のCJD患者が多発し感染性プリオン病の脅威にさらされている。このように焦眉の課題であるプリオン病診断・治療法の開発に向けていくつかの重要な知見を得た。
その他のインパクト
抗プリオン薬の化学構造の最適化を行うための論理的創薬に関する基盤を構築することが出来た。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
23件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計6件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamanaka H, Ishibashi D, Yamaguchi N et al.
Enhanced mucosal immunogenicity of prion protein following fusion with B subunit of Escherichia coli heat-labile enterotoxin.
Vaccine , 24 (15) , 2815-2823  (2006)
原著論文2
Satoh K, Shirabe S, Eguchi H et al.
14-3-3 protein, total tau and phosphorylated tau in cerebrospinal fluid of patients with Creutzfeldt-Jakob disease and neurodegenerative disease in Japan.
Cell Mol Neurobiol. , 26 (1) , 45-52  (2006)
原著論文3
Atarashi R, Sim VL, Nishida N et al.
Prion strain-dependent differences in conversion of mutant prion proteins in cell culture.
J Virol , 80 (16) , 7854-7862  (2006)
原著論文4
Ishikawa K, Kudo Y, Nishida N et al.
Styrylbenzoazole derivatives for imaging of prion plaques and treatment of transmissible spongiform encephalopathies.
J. Neurochem. , 99 , 198-205  (2006)
原著論文5
Sasaki K, Doh-ura k, Ironside J et al.
Clusterin expression in follicular dendritic cells associated with prion protein accumulation.
J. Pathol. , 209 (4) , 481-491  (2006)
原著論文6
Shintaku M, Yutani C, Doh-ura K
Brain stem lesions in sporadic Creutzfeldt-Jakob disease: A histopathological and immunohistochemical study.
Neuropathol. , 26 , 43-49  (2006)
原著論文7
Kawatake S, Nishimura Y, Sakaguchi S et al.
Surface plasmon resonance analysis for the screening of anti-prion compounds.
Biol Pharm Bull. , 29 (5) , 927-932  (2006)
原著論文8
Nakamitsu S, Miyazawa T, Horiuchi M, et al.
Sequence variation of bovine prion protein gene in Japanese cattle (Holstein and Japanese Black).
J. Vet. Med. Sci. , 68 , 27-33  (2006)
原著論文9
Horiuchi, M., Furuoka, H., Kitamura, N et al.
Alymphoplasia mice are resistant to prion infection via oral route.
Jpn. J. Vet. Res. , 53 , 150-159  (2006)
原著論文10
Yamaguchi S, Nishida Y, Sasaki K et al.
Inhibition of PrPSc formation by synthetic O-sulfated glycopyranosides and their polymers.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 349 , 485-491  (2006)
原著論文11
Watanabe Y, Inanami., Horiuchi M et al.
Identification of pH-sensitive regions in the mouse prion by the cysteine-scanning spin-labeling ESR technique. 350: 549-556 (2006)
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 350 , 549-556  (2006)
原著論文12
Arima K, Nishida N, Sakaguchi S et al.
Biological and biochemical characteristics of prion strains conserved in persistently infected cell cultures.
J. Virol. , 79 (11) , 7104-7112  (2005)
原著論文13
Nishida N, Katamine S, Manuelidis L
Reciprocal interference between specific CJD and scrapie agents in neural cell cultures.
Science , 21 (5747) , 493-496  (2005)
原著論文14
Sakurai-Yamashita Y, Sakaguchi S, Yoshikawa D et al.
Female-specific neuroprotection against transient brain ischemia observed in mice devoid of prion protein is abolished by ectopic expression of prion protein-like protein.
Neuroscience , 136 (1) , 281-287  (2005)
原著論文15
Furuoka, H., Yabuzoe, A., Horiuchi, M. et al.
Effective antigen-retrieval method for immunohistochemical detection of abnormal isoform of prion proteins in animals.
Acta Neuropathol. , 109 , 263-271  (2005)
原著論文16
Inanami, O., Hashida, S., Iizuka, D. et al.
Conformational change in full-length mouse prion: A site-directed spin-labeling study.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 335 , 785-792  (2005)
原著論文17
Kurosaki, Y., Ishiguro, N., Horiuchi, M et al.
Polymorphisms of caprine PrP gene detected in Japan.
J. Vet. Med. Sci. , 67 , 321-323  (2005)
原著論文18
Kataoka, N., Nishimura, M., Horiuchi, M et al.
Surveillance of chronic wasting disease in sika deer, Cervus nippon, from Tokachi district in Hokkaido.
J. Vet. Med. , 67 , 349-351  (2005)
原著論文19
Todd NV, Morrow J, Doh-ura K et al.
Cerebroventricular infusion of pentosan polysulphate in human variant Creutzfeldt-Jakob disease.
J Infect Dis. , 50 (5) , 394-396  (2005)
原著論文20
Tsuboi Y, Baba Y, Doh-ura K et al.
Diffusion-weighted MRI in familial Creutzfeldt-Jacob disease with the codon 200 mutation in the prion protein gene.
J Neurol Sci. , 232 , 45-49  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-