抗血小板薬の反応性に関連する遺伝子の同定

文献情報

文献番号
200607001A
報告書区分
総括
研究課題名
抗血小板薬の反応性に関連する遺伝子の同定
課題番号
H16-ゲノム-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(慶應義塾大学 医学部内科)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 満(慶應義塾大学 医学部中央臨床検査部)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学 医学部内科)
  • 松原 由美子(慶應義塾大学 医学部内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
28,688,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
冠状動脈疾患(CAD)や虚血性脳血管障害(CVD)に対する再発予防や一次予防に抗血小板薬が頻用されている。しかし薬剤に対する反応性が乏しい患者では血栓の予防効果が低く再発率が高いため、その原因因子の検出が急務となっている。本研究は「抗血小板薬の効果の個体差の原因となる遺伝子を同定する」ことを目的とした。
研究方法
(1) CVDに関連する遺伝子多型をmicroarrayを用いたcase-control studyにて検討、(2)CAD患者におけるヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の遺伝子多型と白血球テロメア長(リアルタイムPCRにて測定)の関係を検討、(3) 抗血小板薬服用者に対する反応性に関与する遺伝子多型をmicroarray解析により検討、(4)glycoprotein(GP) Ib alphaの遺伝子多型と血小板のアスピリン反応性の関係を検討、(5) CVD患者における抗血小板薬の服用状況と血小板機能を検討、(6)マウスES細胞・ヒト造血幹細胞からin vitro分化誘導による巨核球分化・血小板産生を形態観察、表面抗原の検討により確認(7) 造血幹細胞から血小板産生の各過程を電子顕微鏡観察ならびに免疫電子顕微鏡により観察した。
結果と考察
(1)網羅的検討によりCVDに関与する遺伝子多型を検出した、(2)hTERTの-1327T/C遺伝子多型はCAD患者における白血球テロメア長に影響していた、(3) PFA-100(R)で評価したアスピリン感受性に関連する遺伝子多型を検出した、(4)GP Ib alphaの145Thr/Met遺伝子多型が血小板のアスピリン反応性と関連することを見いだした。(5) CVD患者における抗血小板薬の反応性について解析した。(6,7)マウスES細胞・ヒト造血幹細胞を用いた際の遺伝子改変巨核球・血小板を得るプロトコールを確立したことを認めた。造血幹細胞から血小板産生の各過程を電子顕微鏡観察ならびに免疫電子顕微鏡観察により検討した結果、血小板産生にアポトーシスが関与すること、血小板産生時に巨核球のglobal fragmentationが起きることを認めた。
結論
CVDに関与する遺伝子多型を検出した、hTERTの-1327T/C遺伝子多型がCAD患者における白血球テロメア長への関与を認めた、アスピリン感受性に関連する遺伝子多型を網羅的解析により検出した、GP Ib alphaの145Thr/Met遺伝子多型は血小板アスピリン反応性と関連する、ヒト造血幹細胞を用いた際の遺伝子改変巨核球・血小板を得るプロトコールを確立し、 血小板産生機序の解明に迫った。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200607001B
報告書区分
総合
研究課題名
抗血小板薬の反応性に関連する遺伝子の同定
課題番号
H16-ゲノム-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(慶應義塾大学 医学部内科)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 満(慶應義塾大学 医学部中央臨床検査部)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学 医学部内科)
  • 棚橋 紀夫(慶應義塾大学 医学部内科)
  • 猪子 英俊(東海大学 医学部基礎医学系分子生命科学)
  • 松原 由美子(慶應義塾大学 医学部内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
冠状動脈疾患や虚血性脳血管障害に対する再発予防や一次予防に抗血小板薬が頻用されている。しかし抗血小板薬に対する反応性が乏しい「不応症」の患者では血栓の予防効果が低く再発率が高い。したがって抗血小板薬に対する感受性の原因となる因子の検出が急務となっている。本研究目的は抗血小板薬の反応性に関連する遺伝子を同定することである。
研究方法
抗血小板薬服用者、非服用者(in vitro アスピリン添加)より得た血液を用いてPFA-100による血小板機能評価を行い、抗血小板薬反応群と非反応群に分け、両群で有為に異なる遺伝子多型をmicroarrayを用いた網羅的解析および候補因子アプローチにより検討した。動脈血栓症と関連する因子の遺伝子多型をcase-control study (網羅的解析および候補因子アプローチ)により検討した。DSP-Xの酸化ストレスによる構造変化をその組みかえ蛋白を用いて検討した。マウスES細胞・ヒト造血幹細胞からin vitro分化誘導により巨核球分化・血小板産生を行った。
結果と考察
microarray解析の結果、抗血小板薬感受性に関連する遺伝子多型を検出した。glycoprotein Ib alphaの遺伝子多型と血小板のアスピリン反応性の関連を認めた。脳血管障害の疾患感受性に関連する遺伝子多型をmicroarrayを用いたcase-control studyにより検出した。冠状動脈疾患の疾患感受性にヒトテロメラーゼ逆転写酵素の遺伝子多型が関与していることを認めた。この遺伝子多型は転写活性や白血球テロメア長との関連も認めた。DSP-Xは酸化ストレスによりその構造変化を示した。マウスES細胞あるいはヒト造血幹細胞を用いた際の遺伝子改変巨核球・血小板を得た。
結論
抗血小板薬の反応性に関連する遺伝子多型を検出した。動脈血栓症の疾患感受性に関連する遺伝子多型を検出した。
マウスES細胞あるいはヒト造血幹細胞を用いた際の遺伝子改変巨核球・血小板を得るプロトコールを確立した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200607001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では抗血小板薬の反応性に関連する遺伝子を同定するために、候補因子アプローチに加え、マイクロアレイを用いた網羅的解析を行った。さらに抗血小板薬の反応性にはもとの血栓形成能も関与すると考え動脈血栓症に関連する遺伝子多型を候補因子アプローチ、マイクロアレイ解析により検討した。これらユニークな方法により得られた結果は、抗血小板薬の反応性に関連する遺伝子の同定のみならず、抗血小板薬の反応性の個体差の機序の解明にも貢献した。

臨床的観点からの成果
抗血小板薬の反応性に関連する遺伝子を同定した本研究の成果は「個人ごとの抗血小板薬選択」のための血小板機能評価システム、抗血小板薬の効果予想の遺伝子診断システムの構築、その実用化に向かうことと考えられる。抗血小板薬は世界中で大量に使用されている薬剤であり、抗血小板療法の個別化医療は生命リスクの軽減、個々の患者ごとに適切な抗血小板薬を選択する根拠となり、無効な薬剤の使用を減少させるという医療経済面への貢献において非常に重要である。
ガイドライン等の開発
本研究の成果は具体的にガイドライン等の開発には現時点で関与していない。しかし学会等での成果発表において注目されているため今後、今回得られた結果は血小板機能評価システム、抗血小板薬の効果予想の遺伝子診断システムを用いた抗血小板療法の個別化医療のガイドライン作成につながると考えられる。
その他行政的観点からの成果
抗血小板薬による疾患のマネージメントを必要とする患者は数多いため、抗血小板薬は世界中で、また日本においても大量に使用されている薬剤である。その抗血小板薬の反応性の個体差に関連する遺伝子多型を同定した本研究の成果は個々の患者ごとに適切な抗血小板薬を選択する根拠となり、無効な薬剤の使用を減少させるという医療経済面への貢献において非常に重要である。
その他のインパクト
血液の学会では世界最大であるアメリカ血液学会に本研究の成果が採択され、それら発表の際には多くの専門家から注目された。また、日本血液学会、日本血栓止血学会における本研究の成果発表においても活発な議論が行われた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
96件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-