文献情報
文献番号
200606013A
報告書区分
総括
研究課題名
脳死者の発生等に関する研究
課題番号
H18-特別-指定-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
有賀 徹(昭和大学医学部)
研究分担者(所属機関)
- 島崎 修次(杏林大学医学部)
- 寺岡 慧(東京女子医科大学)
- 横田 裕行(日本医科大学)
- 布施 明(日本医科大学)
- 阿部 俊昭(東京慈恵会医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成9年に臓器の移植に関する法律が定められて以降、本年3月までに法律に基づいた脳死判定を行った症例は50余例である。本研究の目的は、脳死下における臓器の提供が進まない現状について分析し、今後の方策などを探ることである
研究方法
脳死下に臓器の摘出ができる4類型(日本脳神経外科学会専門医訓練A項施設、日本救急医学会指導医指定施設、大学附属病院、救命救急センター)と脳神経外科学会同C項施設、救急医学会専門医(旧認定医)指定施設との全1634施設にアンケート調査を行い、541施設(33.1%)から回答を得た。これらのアンケート結果を分析し、考察を加えた
結果と考察
1年間の全死亡は30856例(57.0例/施設)で、このうち、脳死を経たと思われる死亡は5496例(10.2例同)であった。その中で何らかの基準により脳死を判定(診断)したものは1601例(3.0同)であった。我が国における年間の脳死死亡は約1万例(推測)であるから、その半数強を担う施設の意見を分析できた。脳死症例が臓器提供に繋がらない理由について①家族の申し出がない、②脳死判定そのものをしない、③院内体制が整備されていないなどが多くを占めた。脳死判定に否定的(②)な理由として、時間が掛かる、面倒な仕事になるだろうなどがあった。院内体制(③)については人的・物的資源の不足、マニュアルの不備が挙げられた。救急医療などの日常業務に追われる中で、付加的な脳死下臓器提供の業務に当る余裕が現場にはほとんどないことが推測される。救急施設がそのような負荷を克服し、脳死下臓器提供を円滑に進めるためには、脳死判定以降の作業を支援する組織的な体系構築やマスコミ対応などの代行を望むなどが挙げられた(各々64%、44%)。救急病院に脳死判定料を与えるなどの支援を行う体系を考慮する必要があろう
結論
脳死症例が臓器提供に繋がらない理由について「家族の申し出がない」が最多であり、まずは啓蒙活動が重要である。平成15-18年中に日本臓器移植ネットワーク東日本支部に寄せられた有効情報365例のうち、脳死と考えられたものは183例(45.8例/年)であった。それらから脳死下臓器提供13例があり、意思表示カード所持・不所持に関わらず多くが心停止後に腎臓提供となった。情報が寄せられれば一定の成果が得られる。情報を増やすには啓蒙活動に加えて、救急施設への支援体系の構築が求められる
公開日・更新日
公開日
2007-05-08
更新日
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