文献情報
文献番号
200606012A
報告書区分
総括
研究課題名
原爆放射線の健康影響の評価に関する研究
課題番号
H18-特別-指定-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
甲斐 倫明(大分県立看護科学大学看護学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、DS02線量評価システムおよび最新の知見を反映して、疾患をもった原爆被ばく生存者の放射線の寄与を原因確率として推定する。原爆被ばく生存者が被ばくした線量は、従来、DS86線量評価システムを用いて評価され、疫学調査の解析に利用されてきた。しかし、近年、中性子線量が計算値と測定値で一致しない問題を解決するためにDS86線量評価システムの見直しが実施された。新線量評価システムDS02に基づいた健康影響評価は線量評価の問題に対する信頼度を回復したことで重要な再評価である。本研究では、最新の情報に基づいた原因確率PCの推定値を得ることを目的する。
研究方法
原爆被爆者の疫学調査解析に利用されてきた線量評価DS86がDS02に改定された結果に基づいた評価を行うために、放射線影響研究所が実施している1950年から1998年までのがん発症率の疫学調査報告(Radiation Res,2007)を利用する。本研究では相対リスクモデルの解析結果を利用した。対象とした固形がんは、大腸がん、胃ガン、肝がん、肺がん、甲状腺がん、乳がん、膀胱がん、皮膚がん(非メラノーマ)、食道がん、卵巣がん、脳・神経系腫瘍、その他のがん(上記以外を含めた非増加のがんを除いたがん)である。白血病については、2004年に発表された死亡率を解析した論文(Preston et al. Radiation Res. 162,377-389,2004)を参考にして、2006年に発刊されたBEIR-VIIの解析結果を利用した。
結果と考察
PCは、被ばく時年齢、発症年齢(白血病は死亡率年齢)および線量の関数として評価した。結果は現行のPCと比較し、グラフに示した。乳がんの結果では、最新の情報を用いると、若年齢被ばく伴い早期に発症する乳がんのPCが従来の評価に比べれ高い。しかし、発症年齢が50歳以上では逆に従来の評価に比べて低くなる傾向が認められた。この発症年齢が50歳以上においてPCが低くなる傾向は他の固形がんについても当てはまり、従来の評価が発症年齢を加味せず、一定としたことによる違いが生じた。PCの評価を最新の情報に基づくことで、より信頼できる情報を提供できた。しかし、統計解析に伴う不確かさ、他の要因による影響などを考慮する必要がある。
結論
最新の原爆被爆生存者の疫学データを基づいてPCの再評価を行った。
公開日・更新日
公開日
2007-09-29
更新日
-