精神保健医療における診療報酬の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
200601042A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療における診療報酬の在り方に関する研究
課題番号
H18-政策-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 輝彦(国立精神・神経センター)
研究分担者(所属機関)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 萱間 真美(聖路加看護大学)
  • 末安 民生(慶應義塾大学看護医療学部)
  • 伊藤 弘人(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 佐藤 忠彦(社会福祉法人桜ヶ丘社会事業協会桜ヶ丘記念病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、「精神保健医療の改革ビジョン」を実現するために、精神保健医療の質的向上に資する支払方式の開発モデルを提示することである。
研究方法
診療報酬上の精神科包括病棟の動向に関する研究、クリニカル・パス調査データによるコスト計算の可能性についての研究、精神科訪問看護の実態に関する研究、精神科の薬物処方・行動制限における看護職の役割に関する研究、精神科における薬剤処方・行動制限最適化に関する研究を行った。
結果と考察
1)診療報酬上の精神科包括病棟の動向では、精神科救急・急性期病棟は全国的に急速な増加を遂げており、精神療養病棟と児童思春期精神科入院医療管理加算は微増の傾向にあった。
2)パス調査によるコスト計算の可能性では、12週退院群では状態によってmECTを考慮すると答えた病院の比率が高く、作業療法の導入比率が低く、看護ケアに関する書き込みが多かった。
3)精神科訪問看護の実態に関する研究では、精神科訪問看護を実施している訪問看護ステーションでは、82.2%が複数の看護師による同行訪問を実施し、その理由として、ケア対象者の安全確保に加え、暴力行為があることが挙げられた。
4)薬物処方・行動制限における看護職の役割では、退院支援カンファレンスが治療継続に寄与していることが明らかになった。薬物療法の調査では急性期治療病棟の看護者の88.2%は処方に関心があり、88.8%が受け持ちあるいは入院直後の患者の処方を把握していた。看護者の情報が処方に影響を及ぼすと考えている割合は72.5%であるが、医師に情報提供を積極的に行っているのは28.1%であった。
5)精神科における薬剤処方・行動制限最適化では、(1)身体拘束の適切性の判断と医師の処方態度にばらつきが認められたこと、(2)統合失調症精神運動興奮への初期治療では、抗精神病薬の主剤としてはリスペリドン(11名: 55%)とハロペリドール注射液(9名: 45%)に分かれたこと、(3)急性期医療への薬剤師の関与の必要性を11病院中9病院の薬剤師を認識しているものの実際に入院時から係っている薬剤師は3病院であったこと、が明らかになった。
結論
精神科包括病棟の取得が進んでいる今日、クリニカル・パス等を用いてコスト計算を行いつつ、精神科訪問看護との関連を勘案した支払方式が必要であることが示されていた。また精神科薬物処方・行動制限にはばらつきが存在しており、その最適化のために看護職や薬剤師の関与の効果を明らかにする等の検証を通じて、ばらつきの均てん化に資する経済的インセンティブの付与が必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-05-14
更新日
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