少子化関連施策の効果と出生率の見通しに関する研究

文献情報

文献番号
200601026A
報告書区分
総括
研究課題名
少子化関連施策の効果と出生率の見通しに関する研究
課題番号
H17-政策-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 重郷(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 安藏 伸治(明治大学 政経学部)
  • 中嶋 和夫(岡山県立大学 保健福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 少子化関連施策の効果を人口学、社会学、経済学などの見地から評価研究を行い、今後の少子化対策のあり方について施策提言をすることを目的する。
研究方法
 少子化対策要因の出生率におよぼす影響をマクロモデルにより分析するとともに、『出生動向基本調査(社人研)』の個票データを用いた多変量解析を行った。また、少子化の見通しならびに少子化対策に関して有識者を対象とするデルファイ調査を実施した。
結果と考察
 少子化対策要因の出生率に及ぼす影響をその効果の高い順に示せば、「保育所定員数」、「非正規賃金」、「非正規就業率」、「児童・家族関係給付費」という順になる。個別の政策だけを変化では効果はあまりなく、すべての政策を変化させた場合、どのシナリオにおいても出生率は上昇傾向を示した。したがって、少子化対策の効力を十分に発揮させるためには、従来の少子化対策から労働政策に至るまでの幅広い少子化対策を、包括的に実施しなければならないことを示唆している。
 有配偶女子労働力率の変化と結婚・出産の機会費用に関する研究からは、シミュレーションでは、スウェーデンのケースが最も機会費用軽減効果が高かった。これは、20?34歳の労働力率の正規就業継続が大幅に高まると、かなり大きな軽減効果が生まれることを意味している。
結論
 わが国の少子化要因は結婚・出産という多様な要因によって複雑に構成されている。その結果、女性の就業行動や形態が結婚・出産の機会費用を高コスト化させている。施策によりこの高コスト観を軽減しようとするが、出生率水準にまで波及効果は届いていない。
 わが国で少子化対策があまり有効でなかった理由ははっきりしている。効果があったと考えられている北欧諸国に比べると、投じられた予算の規模があまりに小さかったからである。小さな予算からは小さな効果しか生まれない。企業や自治体での「次世代育成支援行動計画」の作成や、2006年に策定された「新しい少子化対策」や地方自治体、一部民間企業の積極的な取り組みも始まってきた。どのような施策が有効なのか、どれだけの費用を掛ければどれだけの効果が生まれるのか、したがって国や自治体がどれだけの予算を準備すればいいのか。最終的に解明すべき課題はそのようなものであるが、現状においては、さまざまな角度からの政策要因の効果研究を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-18
更新日
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