医療保険、医療費抑制、医療技術、医療の質の研究―医薬品価格規制と研究開発

文献情報

文献番号
200601021A
報告書区分
総括
研究課題名
医療保険、医療費抑制、医療技術、医療の質の研究―医薬品価格規制と研究開発
課題番号
H17-政策-一般-011
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
姉川 知史(慶應義塾大学大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
1,863,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は,医療保険制度の維持,医療費抑制,医療技術の革新と普及,医療の質の向上という4つの異なる政策課題の関係を明確にすることを,医薬品を題材として検討する。政府は薬価低下によって,医療保険制度の維持と医療費抑制を追求してきた。これが医療技術の革新と普及にどのように影響したか,薬価低下が,医療の質にどのように影響したかを検討した。
研究方法
 3年計画の第2年目の平成18年度は次の研究を行った。第1は,医療保険制度における新薬の薬価決定要因分析の拡張である。新薬については類似の医薬品を参考にした「類似薬効比較方式」と,研究開発費用を反映させた「原価方式」の2種類があるが,このような薬価が,いかなる医薬品属性と関連するか事後的検証がない。そこで,1982年以降に承認された新薬を対象にして,経済学におけるhedonic pricingの手法を用いて薬価,納入価格,薬価差の決定要因分析を行った。 
 第2に,医療保険制度が医薬品企業の研究開発の方向と程度にどのように影響するかに関する実証分析(個別研究A)を行った。これは医療保険制度が医療技術の進歩の速度と方向にどのような影響を与えるかに関する実証分析である。また,同じく,医薬品価格が医薬品の国際的普及にどのように影響するかを,医薬品承認によって調べた(個別研究B)。
 この研究では,循環器官用薬50成分,抗菌剤50成分ほどを対象として,日本での発売の有無,海外の代表的市場で発売の有無を区別した。医薬品成分別に,薬価,納入価格,薬価差の指標を作成し,さらに類似医薬品成分毎に販売量をウェイトとした集計指標を作成した。各医薬品成分の日本における発売時期を特定し,発売の有無を説明する経済モデルを特定して,統計的推定を行った。次に,研究開発期間を推定し,その長短を説明する経済モデルを特定して,統計的推定を行った。
結果と考察
 上記の個別研究Aの結果,医薬品の剤型(錠剤・カプセル,注射薬,その他),容量の大小,力価の大小,包装容量による薬価差に対する影響が明らかになった。
 個別研究Bの結果,薬価の大きい医薬品成分,薬価差の大きい医薬品成分ほど研究開発がなされ,発売される可能性が大きく,発売までに研究開発期間が短い傾向が示された。

結論
 薬価,納入価格,その他の要因が医薬品企業にとって十分な利益をもたらさないとき,医薬品企業はその医薬品を日本に導入せず,その結果,drug lagが拡大する。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
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