税制と社会保障

文献情報

文献番号
200601015A
報告書区分
総括
研究課題名
税制と社会保障
課題番号
H17-政策-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 島崎 謙治(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 本田 達郎((財)医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
  • 米山 正敏(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 酒井 正(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 尾澤 恵(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 漆原 克文(川崎医療福祉大学医療福祉学部)
  • 加藤 久和(明治大学政治経済学部)
  • 佐藤 雅代(北海道大学公共政策大学院)
  • 宮里 尚三(日本大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成19年を目途に抜本的改革を行うことが与党平成16年度税制改正大綱で決定され、「平成17年度税制改正に関する答申」は「社会保障における税負担と社会保障負担の意義・役割や、そのどちらにより重く依存すべきかの検討が重要な政策課題」と指摘している。少子高齢化と社会経済の変化の中で、税制改革は社会保障制度に大きな影響を与える要素であり、持続可能な社会保障制度を構築するためには、税制との関係と役割分担について検討する必要がある。したがって、本研究では、租税の転嫁と帰着を視点とした実証分析や企業アンケート調査、および制度分析と国際比較とを組み合わせて多角的に分析を行うことを目的とする。
研究方法
平成18年度は、実証・計量分析については、社会保障財源と経済成長率との関係と税財源が利用される基礎年金のリスクシャアリングの分析、市町村合併による福祉予算等への影響および賃金・雇用への社会保険料の帰着に関する実証分析、中小企業に対する帰着に関するアンケート調査を行った。また、社会保障における税財源の活用の根拠を費用便益分析により検討した。制度分析については、社会保険料の事業主負担の制度分析とOECD及び諸外国の動向調査を行った。
結果と考察
基礎年金のある年金制度から所得比例型年金制度へ移行すると社会的公正が低くなる場合があり、基礎年金の国庫負担は重要である。中小企業への調査から、社会保障財政のために仮に社会保険料の引き上げがある場合には賃金・雇用調整で対応する後転・帰着が生じやすいのに対して、仮に消費税率が上がる場合には価格転嫁が生じやすいという、企業の対応の非対称性が示された。高齢者福祉と障害者福祉の費用便益分析によれば、それぞれの社会的便益は費用を上回り、税財源・福祉予算の役割は重要である。制度分析によれば、事業主負担は利益享受説を基本とし利益享受者の参画による制度の安定的・効率的運営に正当性を見出せる。
結論
社会保険料の事業主負担の転嫁・帰着は複雑な要因によって決まるものであり、経済理論が必ずしもその通り当てはまるとは限らず、実証分析に基づく検討が必要である。社会保障における税制・税財源の役割は重要であるが、税制改革が低所得層に及ぼす影響を緩和する配慮が必要である。西欧諸国の動向を見ても、社会保険方式が中心であるが、これを補う税財源の活用が進むと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-06-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200601015B
報告書区分
総合
研究課題名
税制と社会保障
課題番号
H17-政策-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 島崎 謙治(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 米山 正敏(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 酒井 正(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 尾澤 恵(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 本田 達郎((財)医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
  • 漆原 克文(川崎医療福祉大学医療福祉学部)
  • 加藤 久和(明治大学政治経済学部)
  • 佐藤 雅代(北海道大学公共政策大学院)
  • 宮里 尚三(日本大学経済学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成19年を目途に抜本的改革を行うことが与党平成16年度税制改正大綱で決定され、「平成17年度税制改正に関する答申」は「社会保障における税負担と社会保障負担の意義・役割や、そのどちらにより重く依存すべきかの検討が重要な政策課題」と指摘している。少子高齢化と社会経済の変化のもとで、税制改革は社会保障制度に大きな影響を与える要素であり、持続可能な社会保障制度を構築するためには、税制との関係と役割分担について検討する必要がある。本研究では、税の転嫁と帰着を視点とした実証分析と企業アンケート調査および制度分析と国際比較とを組み合わせて、多角的に研究することを目的とする。
研究方法
社会保障の税財源等の実証分析については、消費税の転嫁と社会保険料の賃金・雇用に及ぼす帰着に関する計量分析、および企業アンケート調査を行った。また、社会保障の税財源の効果に関しては、経済成長率との関係、基礎年金のリスクシャアリングの分析、福祉の税財源の費用便益分析を行った。制度分析については、社会保険料の事業主負担の社会保障法学的分析とOECD及び諸外国の動向調査を行った。
結果と考察
時系列分析によれば消費税は導入時点よりも追加的引き上げの時の方が転嫁の程度が大きく、社会保障財源として消費税を利用する場合には価格転嫁に留意する必要がある。中小企業調査から、社会保障財政のために仮に社会保険料を引き上げると賃金・雇用調整で対応する帰着が生じやすいのに対して、仮に消費税率を上げると価格転嫁が生じやすいという、企業対応の非対称性が見いだされた。基礎年金のある年金制度から所得比例型年金へ移行すると社会的厚生が低くなる場合があり、基礎年金の国庫負担は重要である。高齢者福祉と障害者福祉の社会的便益は費用を上回ることがわかり、当該分野での公費負担は重要である。制度分析によれば、社会保険の事業主負担は利益享受説を基本とし利益享受者の参画による制度の安定的・効率的運営に正当性を見出せる。
結論
社会保障における税財源の活用に関心が高まっているが、税の転嫁・帰着は複雑であり、経済理論がそのまま当てはまるとは限らず、実証分析と社会保障法学的な制度分析とを合わせた多角的な検討が必要である。西欧諸国の動向を見ても、社会保険方式が中心であり、社会保障での税財源の活用はこれを補完する形で進むと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-06-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200601015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
消費税の転嫁については、価格伸縮性や産業構造を考慮しても導入時点よりも引き上げ時点の方が転嫁の程度が大きく、社会保障財源として消費税を活用する際には価格転嫁に留意する必要があることを示した。社会保険料については、賃金への帰着だけでなく雇用戦略にも影響する複雑な側面を明らかにした。また、社会保障法学的な制度分析により、児童手当と扶養手当との調整について考察し、また社会保険料の事業主負担は利益享受説を基本とし利益享受者の参画による制度の安定的・効率的運営に正当性を見出せることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
実証分析については公表統計および企業調査に基づいており、また社会保障法学的な制度分析については、文献研究、ヒアリングおよび海外動向調査に基づいており、本研究は臨床的観点からの成果を含むものではない。
ガイドライン等の開発
社会保障制度審議会の平成15年6月『今後の社会保障改革の方向性に関する意見書』4章「社会保障改革の方向性 (2)負担の在り方」は、「経済・財政とのバランス、(中略)などの観点もあわせ考え、国民に選択を求めていく必要」があり、「財源については、保険料、公費負担、利用者負担の適切な組み合わせにより、確実かつ安定的なものとする必要がある」と指摘している。本研究は、税の転嫁と帰着の複雑さ、事業主負担の根拠と先進諸国の税財源利用の動向を示すことにより、社会保障負担の選択に関する検討材料を提供している。
その他行政的観点からの成果
経済財政諮問会議の平成19年1月『日本経済の進路と戦略』第3章では、持続可能で信頼できる社会保障制度の構築のために、「改革努力を継続し、国民が負担可能な範囲となるよう制度全般にわたり不断の見直しを行う」ことと指摘されている。この点について、本研究では、福祉の税財源の費用便益分析が示すように社会保障の給付には社会的便益があり、また所得保障を通じた経済効果もあることなどを考慮した、国民負担率の新たな概念構成を試み、上記の指摘に対する検討材料を提供している。
その他のインパクト
本研究事業のための外国研究者招聘事業によりハーバード大学のデビット・ワイズ教授を招聘し、平成18年11月1日に厚生科学セミナー「社会保障と日本経済」を開催し、年金給付への課税が高齢者の就業インセンティブと年金受給に影響し、年金改革と税制とが関連する問題について国際比較を行った。この問題を含めた社会保障と国民経済との関係について公開討議を行い、その成果を『季刊社会保障研究』第42巻第4号で公表した。また、「税制と社会保障の分析視点と国民負担率の概念構成」は時事通信社『厚生福祉』で取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-