肝疾患の治療薬に関する薬効評価について全国システム構築に関する研究

文献情報

文献番号
199700157A
報告書区分
総括
研究課題名
肝疾患の治療薬に関する薬効評価について全国システム構築に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 右人(国立長崎中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤文英(国立病院九州医療センター)
  • 升田隆雄(国立名古屋病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤治験に対する考え方が変わりつつあり治験の責任分担、所要経費の割り振り、データ解析の主導性、評価の客観性、実施施設の妥当性等が大きくクローズアップされている。本研究班では今後の治験の在り方につき提言を行うと同時に、厚生省直轄の国立病院・療養所の大きなネットワークを利用し、より効率よいかつ正確な治験が可能であるようネットワーク作りを進めると共に実際の治験を担当しようとするものである。
研究方法
国立病院・療養所病院情報システム(HOSPNet)を利用し全国立病院・療養所にA型肝炎発生状況を問い掛けると共に、今後の肝炎調査研究或いは治験への可能性につき問い掛けを行った。今後この手段を用い各施設の交流を密にし治験施設としての的確さいわゆる専門家の存在、肝疾患臨床研究への関心度及び協力度の調査を行い本院の肝疾患施設センター化を明確にしていく。更に過去20年間国立病院でウイルス肝炎疫学調査及びC型肝炎治療共同研究等を継続してきた16施設を重点施設として、全体評価と16施設での評価を比較することにより全体施設での結果の客観性、正確性を検討する。
第2年度ではHOSPNet上に1.急性肝炎の疫学調査、2.C型慢性肝炎IFN治療例、3.自己免疫性肝疾患、4.肝疾患予後調査の4本の柱で全国ネットワーク施設でのデータベース作りを行ってきた。本データベースの解析により治験発生に対し適応できる施設を選択し、治験開始がいつでも可能なネットワーク構築を促進させる。
結果と考察
結果=HOSPNetを用い239施設へA型急性肝炎月別発生頻度を問い合わせ、毎月17日締切で我が国におけるA型急性肝炎発生頻度を調査してきた。調査協力は95施設で行われた。1例以上の登録施設は41施設で総計102例の急性肝炎がこの1年間で登録されている。月別発生頻度を以下に示す。
従来国立病院では17施設でウイルス肝炎疫学調査とその詳細を実施し、本院を基幹施設として血清を送付しウイルス学的診断を統一的に行ってきた。従来の成績同様年初期にA型肝炎は集中していたが、過去1年では予期された程大きな流行は見られなかった。95施設より集計した102例につき現在第2次調査が進行中である。
また、C型慢性肝炎に対するIFN治療導入例を同様に月毎の実施数として登録を行っている。過去1年間で80施設533例の登録が行われている。
過去8年間のIFN導入例は我が国ではやや減少傾向にあった。これら533例のIFN導入例に対し現在2次調査としてその詳細を解析中である。
国立病院・療養所におけるデータベース構築のためこれら急性A型肝炎、C型肝炎IFN治療例の他、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変調査及び各施設での肝疾患予後調査として死因の解析を進行中である。国立長崎中央病院、国立病院九州医療センター、国立大阪病院、国立相模原病院、国立国際医療センター、国立療養所東京病院、国立療養所霧島病院の7カ所をキーステーションにこれらの疾患別データベースとその詳細を解析しつつあり、今後治験適応施設が即座に決定出来るよう組織構築が進行中である。
考案=我が国の治験は空洞化傾向にあると言われている。これは治験の煩雑さ或いは所要経費の問題、報酬の問題がクローズアップされ施設での取り扱いが煩雑かつ困難であることによる。今後治験が空洞化しないためには新薬許認可を行う厚生省の直轄病院として国立病院・療養所はその機能を受け持つべきである。国立病院・療養所が我が国で最大の医療ネットワークであることを利用しデータベースを完成させ、どの疾患に対する治験であるかにより治験可能施設を速やかに抽出し治験開始が行われるようシステム構築を行わうことは当面意義あることと思う。
国立病院・療養所でのHOSPNetによる情報交換、データ集積はこの目的に対し大きな威力を発揮する。現にHOSPNet上掲示板に示された入力様式により各種のデータが一瞬のうちに集積され、かつ質疑応答等もE-mailを用い容易に行うことができデータベースに対する量、質ともに飛躍的発展が見られる。本研究班でもデータの大多数はHOSPNet上で登録交換され解析データの開示もHOSPNetを用いている。
HOSPNetにより選択された施設がいかに治験を開始するかの詳細については別紙に記した。ネットワークが厚生省直轄病院であることより今後IRB或いはインフォームドコンセント様式等は構築施設での統一のものを用いIRBを共有するシステム等事務的煩雑さをシステムで受け持つようにすることが大切である。
結論
厚生省直轄病院である国立病院・療養所99施設で肝疾患に対するデータベース構築を行うことにより新しい治験が発生した場合その薬剤に対する治験施設として適切な病院を選定し、治験が効率よく開始されるよう、ネットワークでの施設準備を進めてきた。

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