若年者の就業行動・意識と少子高齢社会の関連に関する実証研究

文献情報

文献番号
200601006A
報告書区分
総括
研究課題名
若年者の就業行動・意識と少子高齢社会の関連に関する実証研究
課題番号
H16-政策-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 博樹(東京大学社会科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 浩(東京大学社会科学研究所)
  • 玄田 有史(東京大学社会科学研究所)
  • 佐藤 香(東京大学社会科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、少子高齢化と関連して現役世代を構成する若年層の就業行動や意識の実態を把握するとともに、彼らの行動や意識の変化についてパネル調査を実施して明らかにすることを目的とする。
研究方法
 平成18年度は、すでに実施した高校生調査、進路指導に関する高校調査、卒業後第1回、第2回追跡調査、保護者調査を分析するとともに、卒業後3年目追跡調査を実施した。3つの種類の調査票を用意した。何らかの職業についている(学生アルバイトを除く)就職者用(A票)、4年制大学・短大・専門学校・職業訓練校に通っている通学者用(B票)、通学も就労もしていない(浪人を含む)者用(C票)である。さらに高卒者の保護者を対象とした第2回保護者調査を実施した。
結果と考察
 本年度の研究から得られた知見は以下の通りである。
 第1に、働くことや将来の進路・目標(進路意識)が高校3年生の時点と卒業後にどのように変化したのかを分析すると、卒業後の方がむしろ進路意識が不明確化する傾向が見られた。男女の間では違いは見られないが、就職している者でその傾向は顕著であり、進学した者でも、大学へ進学した者の方が進路意識は不明確化していた。他方、短大へ進学した者では、意識が明確化している傾向が見られた。「家族とのコミュニケーション」は、進路意識を明確にする影響が見られた。
 第2に、世代間の連帯や扶助に関する若者の意識を分析すると、若者といえどもこれからの少子高齢社会において政府への期待は高く、世代間扶助として年金制度の重要性を認知していた。若者の中での考え方の違いは就職・進学といった進路の違いよりも、一人くらしか否かといった生活の場の状況や男女差が世代間扶助の意識と関連していた。
 第3に、世代間の連帯や扶助に関する若者の意識を分析すると、若者といえどもこれからの少子高齢社会において政府への期待は高く、世代間扶助として年金制度の重要性を認知していた。若者の中での考え方の違いは就職・進学といった進路の違いよりも、一人くらしか否かといった生活の場の状況や男女差が世代間扶助の意識と関連していた。
結論
 少子化による18歳人口の減少、進学率の上昇、卒業後無業者の増加、就職市場の縮小など高校生を取り巻く環境は大きく変貌している。このような環境の中で、高卒者は実社会にでていく時に抱く不安感や自分の進路についての悩みを卒業後も継続してかかえている姿が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200601006B
報告書区分
総合
研究課題名
若年者の就業行動・意識と少子高齢社会の関連に関する実証研究
課題番号
H16-政策-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 博樹(東京大学社会科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 浩(東京大学社会科学研究所)
  • 玄田 有史(東京大学社会科学研究所)
  • 佐藤 香(東京大学社会科学研究所)
  • 苅谷 剛彦(東京大学教育学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、少子高齢社会の到来の中で現役世代を担う若年層の進路行動・意識・価値観の実態を把握するともに、彼らの行動や意識の変化についてパネル調査を実施して明らかにし、これからの若年雇用政策や社会保障制度改革にむけての基礎的な資料を提供することにある。
研究方法
 高校3年生を対象とした「高校生調査」、学校を対象とした「進路指導に関する高校調査」を2004年1月から3月に実施し、その後卒業生を2004年10月、2005年10月、2006年10月の3回にわたって追跡調査した。さらに、卒業生の保護者を対象に2004年10月、2006年10月に調査を実施した。
結果と考察
 研究から得られた知見は以下の通りである。
 第1に、高校3年生が実社会へと巣立っていくときに抱く不安感や不本意に感じる心性を「着地不安」と捉え、その背景を分析した。着地不安は、現代の若者に特徴的といわれている「自己無能感」「やりたいこと志向」「現在志向」と深く結びついている。良好な友人関係、教師による期待は、生徒の自己無能感を低下させ、授業を面白いと感じさせることで、着地不安を間接的に軽減させることが明らかになった。
 第2に、働くことや将来の進路・目標(進路意識)が高校3年生の時点と卒業後にどのように変化したのかを分析すると、卒業後の方がむしろ進路意識が不明確化する傾向が見られた。男女の間では違いは見られないが、就職している者でその傾向は顕著であり、進学した者でも、大学へ進学した者の方が進路意識は不明確化していた。他方、短大へ進学した者では、意識が明確化している傾向が見られた。
 第3に、高卒後の進路選択の規定要因を分析すると、無業者や非正規雇用者は男性に多く、普通科の進学者は、就職の可能性は低くなるが、その代わり、進学か無業者になる確率が上昇する。大学進学率の高い高校ほど、就職や専門学校進学者より無業になる確率が高い。なお、職業科・専門学科の卒業生からは、無業者や非正規雇用者が特に出にくいことも明らかになった。
結論
 少子化による18歳人口の減少、進学率の上昇、卒業後無業者の増加、就職市場の縮小など高校生を取り巻く環境は大きく変貌している。このような先行き不透明さを反映してか、分析からは、高校卒業後に進路意識が不明確化したり、実社会にでていく不安感や自分の進路についての悩みをかかえたりという、迷える若者像が浮かび上がってきた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200601006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高校3年生を高卒後3年間にわたって追跡するパネル調査を実施することにより、若年層の進路行動・意識・価値観の実態を把握するだけでなく、彼らの行動や意識の変化について分析することが可能となった。少子化による18歳人口の減少、進学率の上昇、卒業後無業者の増加、就職市場の縮小など高卒者を取り巻く環境は大きく変貌しており、これらの環境変化が若年層のどのように影響をあたえていったのかを推察することができる。
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
高校在学時代の進路指導をはじめとした進路決定に向けた様々な活動経験、在学中の職業に関する考え方・意識などは、卒業後の若年者の意識とも深く関連しており、高校時代の進路指導の体制を積極的に援助する政策は、卒業後にもインパクトがあることが推察される。母子家庭出身者などの進学機会が限られており、社会的弱者や社会の周辺部に位置する若年層を救済する仕組みの重要性が明らかになった。若者といえどもこれからの少子高齢社会において政府への期待は高く、世代間扶助として年金制度の重要性を認知していた。
その他のインパクト
第6回「パネル調査・コンファレンス」(2006年12月21日、グランドヒル市ヶ谷ホテル、家計経済研究所主催)において報告した。研究成果を『中央公論』や『月刊 高校教育』など一般向け雑誌で公表した。

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
本田由紀
多元化する「能力」と日本社会
『多元化する「能力」と日本社会』 , 1-286  (2005)
原著論文2
石田浩
高校生の進路選択の背景と高校生調査
『高校生の進路選択と意識変容』 , 9-28  (2006)
原著論文3
元治恵子
進路に向けての活動の実態
『高校生の進路選択と意識変容』 , 29-42  (2006)
原著論文4
鶴田典子
希望進路の決定時期、および希望進路変更パターンについて
『高校生の進路選択と意識変容』 , 43-54  (2006)
原著論文5
佐藤香
若年者の「着地不安」
『高校生の進路選択と意識変容』 , 55-70  (2006)
原著論文6
本田由紀
対人関係と高校生活・進路選択
『高校生の進路選択と意識変容』 , 71-80  (2006)
原著論文7
深堀聰子
高校生の生活と意識の日米比較
『高校生の進路選択と意識変容』 , 81-96  (2006)
原著論文8
高橋康二
労働のセーフティネットの必要性と利用可能性
『高校生の進路選択と意識変容』 , 97-114  (2006)
原著論文9
鶴田典子
一人一社から複数応募へ
『高校生の進路選択と意識変容』 , 115-133  (2006)
原著論文10
本田由紀
「対人能力格差」がニートを生む
『中央公論』 , 120 (4) , 82-91  (2005)
原著論文11
佐藤香
不安と危機感 ―高校生の職業意識
『月刊高校教育』 , 9 , 38-43  (2005)
原著論文12
GENJI, Keiko
What Do Female High School Stu-dents Think of Their Future? : Educational Aspirations, Life Cou- rse Expectations and Gender Role Atitudes
Social Science Japan , 32 , 15-18  (2005)
原著論文13
佐藤香
専門学科からの進学
『IDE』 , 4 , 51-55  (2007)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-