男性の育児休暇取得を促進する具体策に関する調査研究

文献情報

文献番号
200601003A
報告書区分
総括
研究課題名
男性の育児休暇取得を促進する具体策に関する調査研究
課題番号
H16-政策-一般-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岩男 壽美子(慶応義塾大学)
研究分担者(所属機関)
  • 国広 陽子(武蔵大学社会学部)
  • 高山 緑(慶應義塾大学理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
1,607,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
初年度の質問紙調査と2年目のヒアリング調査の結果得られたデータを総合的に検討し、取得率10%達成のための具体的方策を育児休業メニューを中心に析出し、あわせて、男性の育児休業取得に関する効果的な広報啓発資料を試作する。
研究方法
1.育児休業メニューの総合的検討
 育児休業メニューに関するデータに総合的検討を加え、父親と職場が望む休業メニューと、問題点を検討。また、育児休業メニューに関するヒアリング調査結果を一覧できる形にまとめた。
2.広報啓発資料の作成
 国民一般向けQ&A形式の動画と事業主・管理職向けのパンフレットを試作。男性の育児休業取得への理解と取得への動機付けにつながり、訴求対象及び利用媒体に相応しいものであり、また過去2年間の研究成果を生かしたもので、社員研修をはじめ多様な機会に利用可能であるよう工夫をこらして作成。
 
結果と考察
 最も支持されたメニューは、「期間中は完全に休む」であるが、職場の負担と収入減の問題が大きいため、期間は2週間から最長3ヶ月までとなっており、大半は1ヶ月までと短い。
 週休を増す仕組みには賛否両論があり、この形態は短期の「完全に休む」と組み合わせるのに相応しく、仕事との継続性を失わないですむ利点と、仕事の分担が難しい点などが挙げられている。期間は、1ヶ月から1年間と、比較的長期間が考えられている。
 「労働時間短縮」と「残業免除」については、強い支持がある一方、問題点の指摘も多く、期間としては1年間に集中している。 
 提示したような多様なメニューと柔軟な取得の仕方に対して積極的評価が示された。同時に、勤務管理の難しさを懸念する声も聞かれた。また、多様な選択肢を提供しても、実際に使われるものは限られたものになると予測されるが、まず多様なメニューの提示が重要とされた。
結論
男性の育児休業取得率10%達成には、育児休業の固定的イメージを払拭し、多様な選択肢のなかから利用可能という理解を広める必要がある。本研究の結果、ごく短期間の「完全に休む」休業形態と中期間(2ヶ月程度)の週休増または「残業免除」の組み合わせといった、ニーズに対応した柔軟なメニューが求められており、その結果生じる管理の難しさ(例え不就業時の給与管理)については、いくつかのケースを想定して、管理モデルを提供することが有益な支援策として考えられる。
また、制度の正しい理解が不十分であり、広報啓発活動の必要性が指摘されてきた。本研究で制作した2種類の広報啓発資料は、さまざまな機会に使用できるように作られており、広く活用することにより政策目標達成に向けて大きな成果が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200601003B
報告書区分
総合
研究課題名
男性の育児休暇取得を促進する具体策に関する調査研究
課題番号
H16-政策-一般-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岩男 壽美子(慶応義塾大学)
研究分担者(所属機関)
  • 国広 陽子(武蔵大学社会学部)
  • 高山 緑(慶應義塾大学理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
男性の育児休業取得率10%という政策目標達成に向けて、①潜在的取得希望者の存在を確認したうえで、②育児休業制度に関する子育て期の父親および事業主の意識と実態を把握し、育児休業が職場にもたらすメリットを明らかにし、③制度の改善や視点の転換を含めた取得促進のための取り組みを提案し、④そのための広報啓発資料を試作する。
研究方法
初年度は、子育て期の父親1000名を対象に質問紙調査を実施。平成17年度研究
2年目は、育児休業取得者13名および非取得者6名へのヒアリング調査と取得者の直属の上司または人事担当者14名へのヒアリング調査を実施。
3年目は、育児休業メニューの総合的検討と2種類の広報啓発資料を作成。

結果と考察
調査の結果、目標達成に必要なだけの潜在的取得希望者の存在が確認された。育児休業のメリットについては、直接仕事に結びつくメリット、例えば、商品開発へのアイデア、効率的な働き方、コミュニケーション・スキルや人間関係スキルの向上、夫婦や親子の絆の強まり、忍耐強さや責任感など人間力の向上など、さまざまなメリットが明らかになった。こうしたメリットは、1週間というごく短い育児休業期間でも、十分に得られている。多様で柔軟な休業形態と期間(育児休業メニュー)については、短期間の「完全に休む」形態と中期間(2ヶ月程度)の週休増または「残業免除」の組み合わせといった柔軟な制度へのニーズが高い。
結論
育児休業は1年間完全に休むという固定的なイメージが出来上がっていることが確認されたが、取得促進にはこうしたイメージが払拭される必要がある。個人も職場も多様である今日、休業形態と取得期間の柔軟な組み合わせを実現し、取得希望者のニーズと職場の状況を踏まえた事業主の納得を得やすい制度にする必要がある。取得促進には、事業所トップと上司の姿勢がきわめて重要である。また、仕事と個人の生活が密接不可分の関係にあることが示され、それぞれにおける経験や人間関係は、互いに相乗効果を発揮するwin-winの関係にあるべきものであり、「仕事と生活の調和」という捉え方を超えて、「仕事と個人の生活の統合」という視点が必要である。また、育児休業制度の正しい理解が不十分であり、試作した2種類の広報啓発資料は、さまざまな機会に実際に使用できるもので、広く活用されることを望んでいる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200601003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)」という考え方の限界を示し、「仕事と個人生活の統合」という視点に転換する必要を実証的に明らかにした。また、若い父親たちの意識やニーズがその親や上司の世代とは大きく変わっている実態を明確にしたことは態度研究への貢献である。自由記述回答にデータマイニングによる解析を行うことにより、豊かな情報が得られることを実証した。
臨床的観点からの成果
柔軟で多様な育児休業メニューの必要性を示し、父親のニーズに対応し、また事業主の納得を得やすいメニューの条件を具体的に明らかにした。
育児休業制度とそのメリットの周知を図ることにより、育児休業取得を促進するために、一般向けのQ&A形式の動画を用いた広報啓発資料と、事業主と管理職向けのパンフレットを制作。初年度と2年目に得られた研究成果を単なる研究報告と提言に留めず、広く活用できる広報啓発資料作成に生かした。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
政策目標値が工夫次第で達成可能な数値であることを確認し、取得促進につながる柔軟な育児休業制度の具体的形態を示し、同時にその際に解決すべき課題に対する具体的取り組みを提案した。
その他のインパクト
2006年10月サントリー文化財団主催文化講演会で講演、朝日新聞大阪版に掲載された。2007年2月恩賜財団母子愛育会主催の公開シンポジウムで報告。2007年4月号「中央公論」に本研究に関する論文を発表。同論文は英文誌Japan Echo Vol.34(2)に翻訳転載、海外の大学及びオピニオンリーダーに配布。

発表件数

原著論文(和文)
2件
岩男壽美子「子育てと仕事の両立支援」都市問題研究56巻6号2004年
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
国際ジェンダー学会大会2005年 日本心理学会大会2005年
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
岩男 壽美子
人間力と企業力を高める機会を逃すな
中央公論 , 122 (4) , 164-171  (2007)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-