保健医療情報の広報メディアツールとしての疫学の研究と開発

文献情報

文献番号
199700155A
報告書区分
総括
研究課題名
保健医療情報の広報メディアツールとしての疫学の研究と開発
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
丸井 英二(国立国際医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど、情報の担い手であるマスメディアの役割と機能は保健医療政策を推進するために無視できない。しかし、報道は事実を正しく伝えていないという不満が、行政側と住民側の双方に常に存在する。これはエイズの問題の時にも、O-157による集団食中毒のときにも、ほとんど必ずと言ってよいほどに起きたことである。
こうした問題の解決のためには、学術的に表現された疫学データをマスメディアが適切に利用できるようにし、一般の人々に対しても誤解なく情報の伝達ができるために、情報のadvocacy の方法論を確立する必要がある。
本研究では、そうした疫学情報の適切な伝達のために広報メディアツールとしての疫学的方法論の開発を行い、社会的合意形成の一環として情報の受け手に適切な情報の伝達を可能とすることを目的とする。
研究方法
感染症の全国的流行や各種健康情報について見られたように、疫学的事実は必ずしも適切に社会に受け止められないことがある。そうした典型例の「科学的事実」と「人々の受け止め方」について、報道プロセスを追って、マスメディアによる報道の内容を中間項として過去の事実と方法をレトロスペクティブにまとめ、一連の経過を客観的に記述する。
次に、一般住民を対象とし、同一の疫学的情報を異なる形式で広報メディアとして用いて、その理解にどれほどの差が生じるか、またどのような形式での疫学的表示が有効であるかを検証する。
結果と考察
本研究は、わが国では新しい研究分野であり、海外における既存研究に関する基礎的な文献的考察をはじめとして、現状の把握と分析を進めた。そして、保健医療政策の実施過程における社会的合意形成のための重要なステップの一つとして、過去の実例について検討を始めている段階である。
とくに、イギリス、オーストラリアでは、若年者の喫煙と禁煙に関する疫学的研究成果を、どのようにマスメディアを通して人々に適切かつ説得力のある情報として伝達するかについての広範な研究が進んでいる。
また、オーストラリアではすでにcreative epidemiology という用語があり、先駆的に研究が進んでおり、地域保健医療におけるマスコミの役割は大きく、これをいかにして適切に利用するかという方法論の必要性への認識が確立している。
わが国における一般住民の意識については、本年度は予備的な段階に止まり、次年度以降に本格的な調査を実施する予定である。
本研究に類似した研究はわが国では依然として未開発な分野であるが、先進諸外国ではMedia advocacyの必要性が強く認識され、研究が進みつつある。とくに、行政的な研究成果が一般社会に受け入れられるか否かは、その情報公開の時期や方法がその後の方向を決定づけることもある。
今年度のO-157の原因ならびにその伝播経路についての発表ならびに報道も、行政に好意的とはいえなかった。個別の利害を超えて、行政研究の成果が広く受け入れられるためには、さらに研究が必要である。
本年度は研究開始時期が遅れたために、当初予定した調査を年度内に実施することができなかった。
しかし、今後の調査の基本的枠組みとなるべき、事例についての文献的調査を行い、今後の進展が見込まれる。
欧米における実例についても、印刷資料のみならず多種多様なマスメディアの経路を想定していく必要があり、場合によっては現地調査も企画していきたい。
結論
広報メディアツールとしての疫学的方法論の開発ならびに社会的合意形成の一環として情報の受け手に適切な情報の伝達を可能とすることを目的として、予備的な調査を行い、現状の問題点を整理することができた。次年度以降も、この研究を継続し、展開させていく予定である。

公開日・更新日

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更新日
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研究報告書(紙媒体)