遠隔診断の技術を用いたがんの病理診断支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200622055A
報告書区分
総括
研究課題名
遠隔診断の技術を用いたがんの病理診断支援のあり方に関する研究
課題番号
H18-がん臨床-一般-024
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
松野 吉宏(国立がんセンター がん対策情報センター 臨床試験・診療支援部 病理診断コンサルテーション推進室)
研究分担者(所属機関)
  • 澤井 高志(岩手医科大学病理学第一講座)
  • 野口 雅之(筑波大学大学院人間総合科学研究科(基礎医学系))
  • 有廣 光司(広島大学病院)
  • 真鍋 俊明(京都大学医学部附属病院病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高い水準の病理診断を均てん化するためには、各診療施設の病理医を効率よく迅速に支援する体制の整備が必要である。本研究はバーチャルスライド(VS)の特性を生かした効率の良いがんの病理診断支援のあり方を検討することを目的とする。
研究方法
VS画像(HE染色および免疫染色標本)をwebサーバーを介して研究協力者約30名に限定的に公開し、閲覧・評価してもらい感想を募った。都道府県がん診療連携拠点病院の病理医のほとんどを含む病理医と意見交換会を開催し、VSを含む遠隔病理診断支援網についての討論を行った。インターネットを介した病理画像観察による病理医間の診断較差を検討した。また、茨城県内の中核病院間で静止画像とテレビ会議システムでの遠隔診断のトライアルを行った。日本病理学会中国・四国支部内で実施されている診断コンサルテーションの実績や問題点を解析した。病理医間ネットワークの種々の様態について検討した。
結果と考察
意見交換会においては、診断責任の所在を明確化する必要性の是非、診断機器としてのVSの認知に関する問題点、標本作製や画像取得に関する技術的改良や技術の標準化の必要性、拠点病院以外の施設への診断支援網の展開等についての重要な討論が活発に行われた。今後も定期的に行う必要がある。都道府県内の5,6基幹病院間で光ファイバーを用いれば十分に実地の使用に耐え、各病院間で日常の標本の診断のコンサルテーションを自由に行うことが可能であり、テレビ会議システムを用いて問題症例や希少症例の経験を共有化することもできた。日本病理学会中国四国地域に属する病理医が実施した全コンサルテーションのうち、中国四国地域内でのコンサルテーションが62.9%にも上っており、コンサルタントとクライアントがお互いに”顔”が見えることの重要性を反映していると思われた。
結論
VSなどの遠隔診断技術を有効に利用したがんの病理診断支援網を構築、実効あるものとするためには病理医や病理技術者の技術・意識の向上、体制整備、技術改良などの問題解決が必要であり、機器のネットワーク機能の整備とともに人的ネットワークの確立・拡充が望まれる。VSによる診断精度研究を進めるとともに、全国的あるいは地域、臓器別コンサルテーション網の基盤を利用した遠隔診断支援のあり方を検討していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-05-01
更新日
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