ヒト腫瘍の発生と進展に関わる分子病態の解析とその臨床応用

文献情報

文献番号
200621043A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト腫瘍の発生と進展に関わる分子病態の解析とその臨床応用
課題番号
H16-3次がん-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
立松 正衞(愛知県がんセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬戸 加大(愛知県がんセンター研究所・遺伝子医療研究部)
  • 関戸 好孝(愛知県がんセンター研究所・分子腫瘍学部)
  • 稲垣 昌樹(愛知県がんセンター研究所・発がん制御研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
24,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消化器がんや造血器腫瘍等における分子病態を分子標的薬感受性、ゲノム異常、DNAメチル化異常、増殖・浸潤にかかわる細胞骨格等より検索し、得られた情報の新しいがん診断・治療ヘの臨床応用を目的とする。
研究方法
1.胃がんHER2高発現細胞株を用いてGefitinib やTrastuzumabなど分子標的治療薬に対する感受性機構。2.アレイCGH法による胃MALTリンパ腫除菌療法反応性とゲノム異常。3.細胞骨格関連のトリコプレインやアルバトロスのsiRNAを用いたRNA干渉法等による機能等の解析。
結果と考察
1.HER2高発現胃がん細胞株のgefitinib高感受性が、同薬剤によるPI3K/Akt経路の阻害によるアポトーシス誘導によること、一方、trastuzumabがHER2高発現胃がんの腹膜転移に対して有効性が高い事はHER2高発現胃がん細胞の生存に必須なPI3K/Akt経路の抑制と抗体依存性細胞障害(ADCC)の両者が関与する可能性が示唆された。
2. 除菌抵抗性胃MALTリンパ腫のうちAPI2-MALT1キメラ遺伝子陽性群ではキメラ遺伝子以外のゲノム異常を認めなかったが、キメラ遺伝子陰性群では多様なゲノム異常が存在する事を明らかにし、ゲノム異常が除菌治療反応性を予測するマーカーとなりうること示した。3.トリコプレインでは微小管の安定性の低下、アルバトロスでは細胞間接着装置複合体の消失より、細胞骨格および細胞間接着を制御していることを明らかにした。
結論
1. HER2高発現胃がん細胞株のgefitinib高感受性はPI3K/Aktシグナル伝達経路の遮断によるアポトーシス誘導に起因。HER2高発現細胞株の腹膜転移が Trastuzumabに対して高い感受性はPI3K/Aktシグナル伝達経路の抑制および抗体依存性細胞障害活性(ADCC)の両者に起因する可能性を明らかにした。
2. API2-MALT1キメラ遺伝子のない除菌療法抵抗性胃MALTリンパ腫には多様なゲノム異常が認められ、API2-MALT1キメラ遺伝子のある胃MALTリンパ腫は他のゲノム異常が認められず、除菌治療抵抗性の原因遺伝子はAPI2-MALT1キメラ遺伝子であることが強く示唆された。
3. 新規ケラチン結合蛋白質トリコプレインは微小管の安定化に、アルバトロスは細胞間接着装置複合体の構築に必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200621043B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト腫瘍の発生と進展に関わる分子病態の解析とその臨床応用
課題番号
H16-3次がん-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
立松 正衞(愛知県がんセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬戸 加大(愛知県がんセンター研究所・遺伝子医療研究部)
  • 長田 啓隆(愛知県がんセンター研究所・分子腫瘍学部)
  • 関戸 好孝(愛知県がんセンター研究所・分子腫瘍学部)
  • 稲垣 昌樹(愛知県がんセンター研究所・発がん制御研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消化器がんや造血器腫瘍等における分子病態を分子標的薬感受性、ゲノム異常、DNAメチル化異常、増殖・浸潤にかかわる細胞骨格等より検索し、得られた情報の新しいがん診断・治療ヘの臨床応用を目的とする。
研究方法
1. GFP-遺伝子導入腹膜転移モデルやHER2高発現細胞株を用いて胃がんの分子標的薬感受性の検索。2. MALTリンパ腫におけるAPI2-MALT1キメラ遺伝子やアレイCGH法によるゲノム異常解析、3.分裂期キナーゼ群や新規ケラチン結合蛋白質の機能解析。
結果と考察
1.胃がんの腹膜転移は大網乳斑に選択的に初発(微小)転移巣を形成する早期と、播種性に進展する後期の2段階から成り、前者は化学療法感受性があり、後者はTNF-αにより抑制できる。また、HER2高発現細胞株はGefitinib、Trastuzumabに対して高感受性で、PI3K/Aktシグナルの抑制が関与。 2. 除菌療法抵抗性胃MALTリンパ腫には、API2-MALT1キメラ遺伝子が存在し、存在しない症例では多様なゲノムコピー数変化が認められる。 3. 分裂期キナーゼ群の Plk1は、分裂中期から後期への進行および中間径フィラメントの均等分配過程に関与し、新規ケラチン結合蛋白質トリコプレインの中心体局在は母中心小体の遠位端に限局し、微小管の安定化に必要であることを見出した。また新規ケラチン結合蛋白質アルバトロスは細胞間接着装置複合体の近傍に分布し、細胞間接着装置複合体の構築および強固な接着に特異的に必要であることを見出した。
結論
1. 胃がんの腹膜転移は大網の節外性リンパ組織である乳斑に選択的に初発(微小)し、この時期は化学療法に反応する。またHER2高発現胃がん細胞株のgefitinib高感受性はPI3K/Aktシグナル伝達経路の遮断によるアポトーシス誘導に起因する。
2. 胃MALTリンパ腫でピロリ菌除菌療法無効症例のうち、半数にAPI2-MALT1キメラ遺伝子が認められ、API2-MALT1キメラ遺伝子のない除菌療法抵抗性胃MALTリンパ腫には多様なゲノム異常が存在する。 3. 分裂期キナーゼ群のPlk1の機能は、Cdk1の基質のリン酸化反応を通じて制御される。また新規ケラチン結合蛋白質のトリコプレインは微小管の安定化に必要で、アルバトロスは細胞間接着装置複合体の形成・維持に必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621043C