糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)

文献情報

文献番号
200618025A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H17-チーム(生活心筋)-若手-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山田 信博(筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
戦後の生活習慣の急速な変化は、生活習慣病の蔓延、とりわけ肥満・高脂質血症、糖尿病などの増加と切っても切れない関係があり、特に急激な2型糖尿病患者数の増大はその代表格である。本研究JDCSでは日本全国より多数の症例を登録し、患者教育による生活習慣改善を中心的な介入手段として、前向きに追跡調査を進めてきた。本年度は第10年目の節目の年となり、臨床研究チームの力により、これまで得られたデータベースの補強・整備として、未回収症例記録票の回収強化と得られたデータの解析・評価に特に力をいれることを本助成の目的である。
研究方法
JDCSの事務局は、茨城県つくば市にある筑波大学大学院臨床医学系内分泌代謝糖尿病内科におかれ、さらに東京お茶の水にある糖尿病データセンターにおいても、データの収集・解析・事務などの作業が実施されている。登録症例のすべてのデータは、散逸を防ぎ質を保証するために、この糖尿病データセンターにおいて一元管理がなされている。各合併症の診断基準は予めプロトコールで定められており、たとえば網膜症についてはその発症(1次予防)および単純性網膜症の進展(2次予防)、腎症については尿アルブミン300 mg/24hr以上の出現とし、それぞれ専門家の判定委員により判定されている。各種データはコンピューターに入力し、統計専門家による解析や効果判定を実施している。
結果と考察
これまでの解析の中で、欧米人患者とは異なる日本人患者のさまざまな特徴が明らかにされてきた。たとえば、糖尿病の病態的基盤とも言える肥満度が、欧米人患者と日本人患者都で極端に異なること、各種合併症の発症率、リスクファクターなどもかなり異なること、などが明らかになった。また、アルコール摂取の影響や、メタボリックシンドローム診断の意義なども、欧米人患者とかなり異なっていることが判明した。一方、生活習慣介入が、すでに発症した2型糖尿病患者において、わずかながら有意にHbA1Cを改善させたことなども報告されている。上記の成果は臨床研究チームの活躍による部分が大きく、このような生活習慣病の大規模臨床研究に臨床研究チームが大きな役割を果たしうることが如実に示された。
結論
日本人糖尿病患者の実像を把握して、日本人患者の診療に役立つ臨床エビデンスを確立するという所期の目的は、十分に達せられ、今後さらに多くの深化した解析が予定されている。今回トレーニングされた臨床研究チームのスタッフは、今後ともこれらの解析に携わり、貢献する予定である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-11-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200618025B
報告書区分
総合
研究課題名
糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H17-チーム(生活心筋)-若手-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山田 信博(筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本格的な高齢化社会を迎え、生活の質や高騰する医療費との関係においても、2型糖尿病はもっとも重視すべき疾患のひとつである。これまで欧米で実施されてきた大規模臨床研究の結果が、遺伝的背景やライフスタイルが欧米人とは異なる日本人糖尿病患者にそのまま適用できるか否かは明らかでなく、日本人患者を対象にした研究によるエビデンスが求められる。日本人患者の診療に安心して使える臨床エビデンスを確立するために、日本人患者を対象にした大規模臨床研究によるエビデンスが今後ますます求められることになるが、それを臨床研究チームの貢献によりどれだけ充実したものにできるかという試みが本研究の目的である。
研究方法
臨床研究チームの具体的な活動内容としては、患者と主治医の橋渡し的な役割に加えて、症例票の記入補助、臨床データの確認、転記ミスの発見と修正などデータベースの整備、参加施設間の連絡の支援などの地道な作業である。今回のプロジェクトで、日本の糖尿病患者と糖尿病専門医、臨床研究チームが協力して築き上げた貴重なコホートは、今後とも日本のみならず東アジア諸国を始めとする世界の糖尿病診療に大きく貢献していくことが期待されている。
結果と考察
臨床研究チームはこのプロジェクトに極めて大きな役割を果たしてきた。これまでの解析の中で、欧米人患者とは異なる日本人患者のさまざまな特徴が明らかにされてきた。たとえば、糖尿病の病態的基盤とも言える肥満度が、欧米人患者と日本人患者都で極端に異なること、各種合併症の発症率、リスクファクターなどもかなり異なること、などが明らかになった。また、アルコール摂取の影響や、メタボリックシンドローム診断の意義なども、欧米人患者とかなり異なっていることが判明した。一方、生活習慣介入が、すでに発症した2型糖尿病患者において、わずかながら有意にHbA1Cを改善させたことなども報告されている。上記の成果は臨床研究チームの活躍による部分が大きく、このような生活習慣病の大規模臨床研究に臨床研究チームが大きな役割を果たしうることが如実に示された。
結論
日本人患者の診療に安心して使える臨床エビデンスを確立するために、日本人患者を対象にした大規模臨床研究によるエビデンスが今後ますます求められることになるが、それを支える臨床研究チームの整備も国家的課題であると思われる。日本では臨床研究チームはまだ、欧米ほど活躍していないが、本研究などの成果により社会的に認知されてくるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200618025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Japan Diabetes Complications Study (JDCS)は、若手医師・協力者の臨床研究チームを活用しつつ、日本の糖尿病患者の現況や診療の状況、治療の有効性、病態的特徴、生活習慣介入の効果などを検討することにより、糖尿病およびその血管合併症を抑制するための、特にこれまでの欧米のデータとは異なる多くの日本人糖尿病患者のエビデンスを生み出して、患者の生命予後とQOLの改善に貢献してきた。
臨床的観点からの成果
これまで糖尿病ならびにその合併症に関する大規模臨床試験は、欧米を中心に実施されてきた。遺伝的背景やライフスタイルが欧米人とは大きく異なる日本人糖尿病患者の診療方針や保健施策決定に、このような欧米のエビデンスを、そのまま適用できるか疑問である。本研究は、これまで日本人患者の診療に安心して使える臨床エビデンスを確立するために貢献してきた。臨床研究チームの活躍はこの成果を支えてきた。
ガイドライン等の開発
韓国糖尿病学会からも同様の研究をするための参考として、その内容と成果の発表を求められている。
その他行政的観点からの成果
メタボリックシンドロームの意義に関して、国会の委員会質問で本研究の論文が取り上げられた。
その他のインパクト
合計50回以上の学会発表、シンポジウム発表、招待講演を行った。その成果の一部はNHKの番組や週刊誌など一般向けのメディアにも紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
50件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sone H, Tanaka S, Ohashi Y, et al.
Cut Points of Waist Circumference
Diabetes Care , 29 , 1189-1189  (2006)
原著論文2
Sone H, Tanaka S, Ishibashi S, et al.
The new worldwide definition of metabolic syndrome is not a better diagnostic predictor of cardiovascular disease in Japanese diabetic patients than the existing definitions. Additional analysis from the Japan Diabetes Complications Study
Diabetes Care , 29 , 145-147  (2006)
原著論文3
Sone H, Mizuno S, Yoshimura Y, et al.
Is the diagnosis of metabolic syndrome useful for predicting cardiovascular disease in Asian diabetic patients? –Analysis from the Japan Diabetes Complications Study–
Diabetes Care , 28 , 1463-1471  (2005)
原著論文4
Sone H, Mizuno S, Yamada N, et al.
Vascular risk factors and diabetic neuropathy
N Engl J Med , 352 , 1925-1927  (2005)
原著論文5
Sone H, Yamada N, Mizuno S, et al.
Requirement for hypertension and hyperlipidemia medication in U.S. and Japanese patients with diabetes.
Am J Med , 117 , 711-712  (2004)
原著論文6
Sone H, Mizuno S, Aida R, et al.
Alcohol Use and Diabetes Mellitus
Ann Intern Med , 141 , 408-409  (2004)
原著論文7
Sone H, Mizuno S, Ohashi Y, et al.
Type 2 diabetes prevalence in Asian subjects
Diabetes Care , 27 , 1251-1252  (2004)
原著論文8
Sone H, Yoshimura Y, Ito H, et al.
Energy intake and obesity in Japanese patients with type 2 diabetes
Lancet , 363 , 248-249  (2004)
原著論文9
Sone H, Katagiri A, Ishibashi S, et al.
Effects of lifestyle modifications on patients with type 2 diabetes: the Japan Diabetes Complications Study (JDCS) study design, baseline analysis and three year-interim report
Horm Metab Res , 34 , 509-515  (2002)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-