新しいヒト肝炎動物モデルの確立

文献情報

文献番号
199700152A
報告書区分
総括
研究課題名
新しいヒト肝炎動物モデルの確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
穂積 信道(東京理科大学生命科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 今田美穂(東京理科大学生命科学研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス性肝炎の発症、治療法の研究には in vivo モデルの確立が必須である。しかしHCVは通常の実験動物には感染しない。このように動物モデルの欠如は、HCV肝炎の研究、治療戦略の開発に大きな障害となっている。したがって、このウイルスのヒト標的組織(肝)、免疫系を移植された動物モデルの確立は、ウイルス性肝炎の研究に多大な貢献をすることは、明らかである。本研究はヒト正常、慢性肝炎肝組織をNOD-SCIDマウスに移植し、HCV肝炎の動物モデルを確立する。それと同じに、HCV感染による炎症誘導実験のためヒト免疫系も再構築する。
研究方法
バイオプシーによって得られた肝組織をNOD-SCIDマウスの腎被膜下に移植した。移植された肝組織を、時間を追って回収し、病理組織学的検索をおこなった。HCVのマウス血中における存在は、PCR法でHCVゲノムを検索した。
結果と考察
ヒト肝の皮下移植を試みたが、定着しなかった。血流供給の豊富さが、移植片の定着には、重要な鍵をになっているものと思われる。手術時におけるマウスの麻酔は、ネンブタールにより行っているが、手術によるマウスの死亡例は、殆どみられない。正常肝(HCV陰性)は5例以上、慢性肝炎(HCV陽性)は7例以上移植した。それぞれのドナーからの組織は、5匹以上のマウスに移植した。移植後、7日間毎に、組織を回収し病理組織学的検索を行った。肝細胞は移植後、3週間は正常に保たれているが、その後線維が進行し、5週間後では肝管が殆どとなる。Galun らは、ヒト肝組織をSCID→BNXキメラマウスの腎被膜下に移植した(Galun et al. J. Infectious Diseases 172; 25. 1995)。病理組織学的所見では、肝細胞より胆管がはるかに多くみられ、成功例とは言い難い。我々は、さらにHCV陽性肝組織を移植されたマウスの血中に、PCRでHCVゲノムの存在を確認した。HCVゲノムは、移植後、3週間以上に渡り観察される。しかしHCV陽性の血清の移植では1週間以内に、HCVゲノムはみられなくなる。マウスに移植されたHCV陽性肝組織は、移植後もウイルスを産生し続ける可能が示唆された。この実験系をさらに発展させれば、抗ウイルス薬剤(例えはγーインターフェロン等)の治療効果を検討することも可能であろう。
結論
腎被膜下に移植されたヒト肝組織は、3週間の間、正常に保たれることが判明した。このため感染実験は、3週間以内に終了するようデザインすれば、in vivo 感染実験も可能になるものと思われる。現在、正常肝、HCV陽性血清、正常リンパ球(HCVの肝細胞への感染成立には、リンパ球をとうしておこることを示唆する報告がある)等を移植し、HCVの in vivo 感染実験をおこないつつある。それと同じに、抗ウイルス剤を評価する in vivo 実験系も開発する。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)