未破裂脳動脈瘤の要因、治療法選択におけるリスク・コミュニケーションに関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)

文献情報

文献番号
200618014A
報告書区分
総括
研究課題名
未破裂脳動脈瘤の要因、治療法選択におけるリスク・コミュニケーションに関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-心筋-若手-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 信夫(京都大学大学院医学研究科脳統御医科学系専攻脳病態生理学講座脳神経外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 昭夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 福原 俊一(京都大学大学院医学研究科)
  • 宝金 清博(札幌医科大学脳神経外科)
  • 森田 明夫(東京大学大学院医学系研究科)
  • 池田 俊也(慶應義塾大学医学部)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 野崎 和彦(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,328,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳動脈瘤とクモ膜下出血による社会の疾病負担を軽減するためリスク情報の整備とそれに基づいた臨床医と患者間のコミュニケーションの視点からの知見を得、新しい患者支援プログラムの開発を目指す。
研究方法
未破裂脳動脈瘤患者の治療方針における決断分析、費用対効用分析の有用性を過去のデータから検討する。脳動脈瘤の発生要因を症例対照研究とコホート研究により宿主要因と環境要因の面から同定する。脳動脈の脆弱性につきコホート研究を行う。未破裂脳動脈瘤患者に対して質問票とインタビューを併用して患者側の心理的負担、必要としている情報を調査する。患者意志決定支援ツールを作成し、意志決定に与える影響を評価する。脳動脈瘤治療に関連する医療費、入院期間などの臨床諸状況の効用値を求め、費用効用分析に供する基礎資料を整備する。未破裂脳動脈瘤大規模前向きコホート研究UCAS Japanを継続発展させ、日本人における自然歴、患者のQOL解析を行う。医師側の治療法決定の現状と妥当性についてWeb上での症例呈示により解析する。以上の臨床研究のための臨床チームを整備する。
結果と考察
本研究で得られたリスク情報を利用し未破裂脳動脈瘤における決断分析、費用対効用分析の有用性の評価を行い、以下のように各リスク情報の解析と意志決定支援に必要な因子の探索を行った。家族性脳動脈瘤30家系190名について連鎖解析を行い、脳動脈瘤関連遺伝子候補領域を同定し、これらに含まれる脳動脈瘤関連遺伝子についてhaplotypeの同定を行った。UCAS Japan(6646症例)において、研究の質的整合性の改善、予後調査の徹底を行い、詳細な未破裂脳動脈瘤の自然歴・治療リスクの把握解析を行った。前向きQOL調査を開始し1000例の登録を終了した。意思決定支援ツール開発に関して、現時点での情報に基づき医療側の視点からの未破裂脳動脈瘤治療方針決定支援DVDツールの作成を行い有効性の検討を行った。至適治療法選択におけるばらつき検討のためにウエブサイトを立ち上げ、医師による治療法決定のvariationの検討を進めた。患者側のニーズアセスメントを行うため、患者/家族が治療方針を決定する際に求める情報を明らかにする患者インタビュー調査(患者、家族46名)を実施した。未破裂脳動脈瘤をもつ患者の意思決定を支援するWebによる参加型ツールを作成し有用性の検証を行った。
結論
本臨床研究チームにより、頻度の高い未破裂脳動脈瘤が患者の健康、QOLや医療経済におよぼす影響を科学的に検証するための臨床データが得られる。

公開日・更新日

公開日
2007-03-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200618014B
報告書区分
総合
研究課題名
未破裂脳動脈瘤の要因、治療法選択におけるリスク・コミュニケーションに関する研究(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-心筋-若手-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 信夫(京都大学大学院医学研究科脳統御医科学系専攻脳病態生理学講座脳神経外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 昭夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 白川 太郎(京都大学大学院医学研究科)
  • 福原 俊一(京都大学大学院医学研究科)
  • 宝金 清博(札幌医科大学脳神経外科)
  • 森田 明夫(東京大学大学院医学系研究科)
  • 池田 俊也(慶應義塾大学医学部)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 野崎 和彦(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳動脈瘤とクモ膜下出血による社会の疾病負担を軽減するために、リスク情報の整備とそれに基づいた臨床医と患者間のコミュニケーションの視点からの新たな知見を得、新しい患者支援プログラムの開発を目指す。
研究方法
初年度では未破裂脳動脈瘤に関する欧米でのデータに基づいて未破裂脳動脈瘤患者の治療方針における決断分析、費用対効用分析の有用性を検討したが、本邦でのデータの欠如を補填するために次年度より脳動脈瘤の発生要因を症例対照研究とコホート研究により同定した。また脳動脈の危険性、脆弱性につきコホート研究を行った。また初年度から2年目にかけて未破裂脳動脈瘤患者に対して質問票とインタビューを併用して患者側の心理的負担、必要としている情報を調査した。2年目より患者意志決定支援ツールを作成し、意志決定に与える影響を評価した。3年目では本邦におけるデータを用い治療に関連する医療費、入院期間などの臨床諸状況の効用値を求め、費用効用分析に供する基礎資料を整備した。また3年目より未破裂脳動脈瘤大規模前向きコホート研究UCAS Japanを継続発展させ、日本人における未破裂脳動脈瘤の自然歴、患者のQOL解析を行っている。2ム3年目にかけて医師側の治療法決定の現状と妥当性についてWeb上での症例呈示により280名の医師の治療のばらつきを解析した。以上の臨床研究のための臨床チームを3年にわたり整備した。
結果と考察
本研究で得られたリスク情報を利用し未破裂脳動脈瘤における決断分析、費用対効用分析の有用性の評価を行い、予防的治療の有効性を確認した。家族性脳動脈瘤30家系を集積し連鎖解析を行い、脳動脈瘤関連遺伝子についてhaplotypeの解析を行った。UCAS Japan(現段階で6646症例)において詳細な未破裂脳動脈瘤の自然歴・治療リスクの把握解析をほぼ終了した。さらに3年目において前向きQOL調査を開始し1000例の登録を終了した。医師には至適治療法選択において大きなばらつきが存在することを確認した。患者/家族が治療方針を決定する際に求める情報、患者個人の効用値を明らかにする患者インタビュー調査(患者、家族46名)を実施した。意思決定支援ツール開発に関して、未破裂脳動脈瘤治療方針決定支援DVDツールの作成を行い、その有効性を確認した。さらに3年目において未破裂脳動脈瘤をもつ患者の意思決定を支援するWebによる参加型ツールを作成し有用性の検証を行った。
結論
本臨床研究チームにより、未破裂脳動脈瘤が患者の健康、QOLや医療経済におよぼす影響を科学的に検証するための日本独自の臨床データが得られる。

公開日・更新日

公開日
2007-03-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200618014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
家族性脳動脈瘤30家系190名をリクルートし連鎖解析を行い、脳動脈瘤関連遺伝子候補領域としてCh17cen (NPL=3.00)、Ch19q13 (NPL=2.15)、ChXp22 (NPL=2.16) の3領域を同定し、最もMNS(maximum non-parametric logarithm of odds score)が高いCh17cenにつき網羅的に脳動脈瘤関連遺伝子の探索を行い、TNFRSF13Bでmutationが同定された。
臨床的観点からの成果
6642症例を登録し未破裂脳動脈瘤の自然歴、治療のリスクを解析した。年間破裂率は約1%で動脈瘤の大きさ、部位、年齢に強く影響されることがわかった。さらに1000症例を登録し患者QOLの評価を行っている。280名の医師を登録しweb上で治療選択のばらつきを検討し、動脈瘤の大きさ、位置などの動脈瘤因子、治療者側の専門性、患者の希望などが強く影響されていることが立証され、医師が必ずしもガイドラインに従わないことが示された。
ガイドライン等の開発
支援ツールの開発を行い医師、患者を対象に有効性の検討を行った。UCAS Japanのデータに基づいて医療側からの意志決定支援ビデオツールを作成し、全国の約1500の脳神経外科学会指定訓練施設(A項施設、C項施設)に発送完了し、実際に医師、患者に視聴していただき、その結果につき現在アンケート調査を行っている。また、個々の患者が簡便に決断分析を行うWeb上で患者が参加できる意思決定支援システムを開発し、さらにその評価を行った。
その他行政的観点からの成果
UCASより得られた日本のデータを基にして、予防的手術を実施した場合と、経過観察を行った場合の、生涯の費用(医療費・介護費用)と健康結果(QALYs)の推計を、マルコフモデルにより行った。経過観察を行った場合に比べ予防的手術を実施した場合には追加費用が生じるが、3?4QALYsの増加が期待できることから、予防的手術の費用対効果は良好な水準であることが判明した。
その他のインパクト
平成19年3月3日に市民公開講座を行い、本研究の成果を説明し、作成したツールの紹介を行い、啓蒙活動を行った。また未破裂脳動脈瘤についてNHKの「ためして合点」(平成18年)で取り上げられ、分担研究者の森田が出演した。

発表件数

原著論文(和文)
15件
各雑誌に未破裂脳動脈瘤のリスク、治療選択につき報告した
原著論文(英文等)
14件
J Neurosurg, Strokeなどでデータを公表した
その他論文(和文)
3件
脳神経外科関連の教科書へ成果を記載した
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
脳神経外科学会、日本脳ドック学会、日本脳卒中学会などで成果を発表した
学会発表(国際学会等)
6件
American Association of Neurological Surgeons, Congress of Neurological Surgeonsなどで発表した
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
市民公開講座などの開催

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamada S, Utsunomiya M, Inoue K, et al
Genome-wide scan for japanese familial intracranial aneurysms: Linkage to chromosomal regions
Circulation ,  (110) , 3727-3733  (2004)
原著論文2
Houkin K, Nonaka T, Oka S, et al
Inadequate websites disclosure of the surgical outcome of intracanial aneurysms- Surgery of 1225 sites in Japan
Neurologia Medico-chirurgica ,  (45) , 448-453  (2005)
原著論文3
Morita A, Fujiwara S, Hashi K, et al
The risk of rupture of unruptured cerebral aneurysms in the Japanese population: A systemic review of the literature from Japan
J Neurosurg ,  (102) , 601-606  (2005)
原著論文4
Inoue K, Mineharu Y, Inoue S, et al
Search on chromosome 17 centromere reveals TNFRSF13B as a susceptibility gene to intracranial aneurysm
Circulation ,  (113) , 2002-2010  (2006)
原著論文5
Mineharu Y, Inoue K, Inoue S, et al
Association analysis of common variants of ELN, NOS2A, APOE and ACE2 to intracranial aneurysm
Stroke ,  (37) , 1189-1194  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-