各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討(若手医師・協力者活用に要する研究)

文献情報

文献番号
200618011A
報告書区分
総括
研究課題名
各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-チーム(生活心筋)-若手-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 裕司(浜松医科大学臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の脂質低下作用には個体間差が大きい事が知られている。本研究では、スタチン治療応答性の個体間変動要因の解析とスタチンが薬物代謝酵素CYP3A4活性に及ぼす影響を検討した。
研究方法
2004年12月からの1年間に新規にプラバスタチンを投与された全患者102例、およびアトルバスタチンを投与された全患者84例を調査対象とした。プラバスタチン投与でTC は平均17.8 % 低下し、アトルバスタチン投与では28.0 %低下していた。プラバスタチンでTC変化率が-9%以下、アトルバスタチンで-14%以下をpoor-responder群とし、responder群と比較検討を行った。
結果と考察
スタチンを新規に投与された186症例中、poor-responderは42例(22.6%)であり、治療効果には個人差が存在した。アトルバスタチン投与群ではステロイド併用により脂質低下作用が有意に減弱し、poor-responder群でより顕著であった。一方、プラバスタチン投与群ではステロイドの併用によるスタチン応答性の低下は認められず、ステロイドの影響にはスタチン間で差があることが示唆された。この機序として、ステロイドによりCYP3A4が誘導され、基質となるアトルバスタチンの血中濃度が低下する事が示唆された。インタビュー調査結果からは、服薬コンプライアンスは両スタチン服用者で差がなく、またステロイド併用患者では、両スタチンとも服薬状況は非常に良好であった。
スタチンによるCYP3A活性への影響の検討では、シンバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチンを14日間連続投与しても指標薬となるミダゾラムの薬物動態に有意な変動を認めなかった。スタチンのCYP3A活性変化への影響は小さく、臨床の場で上記のスタチンをCYP3A基質薬物と併用してもスタチンが原因薬物となり薬物間相互作用を生じる危険性は少ないと思われる。
結論
スタチンの治療抵抗性要因として、ステロイド併用が示唆された。ステロイド併用の影響はスタチンの種類により異なった。今後、スタチン血中濃度測定、スタチン代謝に関与する薬物トランスポーターや薬物受容体などの遺伝子多型の解析を進めていくことにより、治療応答性の個体間変動要因がさらに明らかとなり、スタチン治療の個別化が可能となる事が期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200618011B
報告書区分
総合
研究課題名
各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-チーム(生活心筋)-若手-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 裕司(浜松医科大学臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病性心血管病の予防に、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)が有用であるが、その脂質低下作用には個体間差が大きい。本研究では臨床薬理学観点からスタチン治療応答性の個体間変動要因について総合的に検討した。
研究方法
浜松医科大学附属病院において、臨床研究を推進していくための基盤となる若手医師や研究協力者を育成し、臨床研究体制を整備することを目的に、以下の4つの臨床研究を実践した。
研究1:スタチン服用患者を対象とした薬剤疫学的検討
研究2:スタチンの脂質低下作用と薬物トランスポーターOATP-C およびOATP-Bの遺伝子多型の関連解析
研究3:スタチン治療応答性の外因的変動要因の解析
研究4:スタチンによる薬物代謝酵素CYP3A4活性に及ぼす影響の検討
結果と考察
浜松医科大学附属病院においてプラバスタチンを処方された569例、およびアトルバスタチンを処方された289例を調査対象とした。虚血性心疾患既往歴のある患者はプラバスタチン群で23%、アトルバスタチン群で36%であった。プラバスタチン投与により総コレステロ−ル値(TC) は平均17.8 % 低下し、アトルバスタチン投与により28.0 %低下することが認められた。一方、スタチンを投与されてもTCが不変あるいは上昇するような治療抵抗性を示す症例がプラバスタチン投与群で14 %、アトルバスタチン投与群で8 %存在した。しかし、スタチンによるコレステロール変化率と薬物トランスポーターOATP-C およびOATP-B遺伝子多型間で有意な相関は認められなかった。一方、外的要因としてステロイドの併用により、アトルバスタチンのTC低下作用が減弱することが明らかとなった。しかし、プラバスタチンではステロイド併用によるTC低下作用の減弱は認められず、ステロイドの影響は薬物代謝酵素CYP3A4を介しスタチン間で異なる事が示唆された。さらに、スタチンによるCYP3A活性への影響は小さく、臨床の場でCYP3A基質薬物とスタチンを併用してもスタチンが原因薬物となり薬物間相互作用を生じる危険性は少ないことが明らかとなった。
結論
スタチン血中濃度測定、OATP以外のスタチン代謝に関与する薬物トランスポーターや薬物受容体などの遺伝子多型の解析を進める事により、スタチン治療応答性の個体間変動要因が明らかとなり、治療の個別化が可能となる事が期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200618011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の脂質低下作用には個体間差が大きく、投与されても血清脂質値が不変あるいは上昇するような治療抵抗性を示す症例が少なからず存在した。脂質値変化率と薬物トランスポーターOATP-C/-B遺伝子多型間で有意な相関は認められなかったが、外的要因としてステロイドの併用が薬物代謝酵素CYP3A4を介してアトルバスタチンの脂質低下作用を減弱させることが示唆された。
臨床的観点からの成果
スタチン投与患者の多くが、一次予防目的の投与であり、危険因子を全く持たない低リスク患者に対してもスタチンが多く処方されていることが明らかとなった。リスクベネフィットの観点、さらに医療経済学的にも低リスク患者群に対する安易なスタチン投与は避けるべきと考えられた。一方、CYP3A基質薬物とスタチンを併用しても臨床的にスタチンが原因薬物となり薬物間相互作用を生じる危険性は少ないことが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
内田信也 渡邉裕司 後藤真寿美etal.
HMG-CoA還元酵素阻害薬 Pravastatin服用患者におけるリスクファクターと血清脂質値に関する調査
臨床薬理 , 36 (2) , 81-87  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-