各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討(若手医師・協力者活用に要する研究)

文献情報

文献番号
200618010A
報告書区分
総括
研究課題名
各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-チーム(生活心筋)-若手-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
川嶋 成乃亮(神戸大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病の存在は動脈硬化の基盤として重要である。一方、動脈硬化の発症には内皮障害が必須であり、内皮機能障害の存在を早期に把握することは、動脈硬化の初期病変の検出に有用である。
現在、臨床において内皮障害の判定はもっぱら内皮依存性血管拡張反応を測定することでなされているが、方法が煩雑で一般化していない。そのため内皮障害の血清マーカーの開発が望まれる。
我々は、NO合成酵素の補酵素であるBH4、およびその酸化産物BH2の血中濃度が、内皮障害の血清マーカーとして、有用であるかどうかを検討した。
研究方法
冠動脈疾患、ならびに種々の動脈硬化の危険因子を有す患者(n=103)において、血清BH4、BH2をHPLCにて測定し、前腕における一過性血流遮断後の反応性充血時に生じる血流依存性の血管拡張反応(FMD)と比較検討した。
結果と考察
{結果}1.FMDと血清BH4は正の相関を、一方血清BH2は負の相関を示し、その結果、FMDと血清BH4/BH2比は強い正の相関を示した。また、冠動脈危険因子の数が増えるに従いBH4/BH2比は低下した。そして、メタボリックシンドロームの存在はBH4/BH2比を低下させていた。
2.糖尿病・耐糖能異常患者に高脂血症治療薬スタチンを3ヶ月間投与すると、FMDの改善に伴い血清BH4/BH2比も著明に改善することが明らかになった.
{考察}糖尿病・耐糖能異常では、動脈硬化をはじめとした血管障害の初期段階における病態把握が重要である。内皮障害の最大の要因は酸化ストレスであり、この酸化ストレスによりBH4は内皮においてBH2へと酸化される。今回の検討により、BH4/BH2比は内皮特異的な酸化ストレスマーカーである可能性があり、内皮障害に焦点を当てた糖尿病性血管障害の防止の有用なマーカーになりうると考えられた。
結論
糖尿病患者において、糖尿病・耐糖能異常の存在は血管病・血管障害をもたらす。その初期段階把握し、血管病発症・進展防止には血清中、BH4/BH2比は有用なマーカーとなると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200618010B
報告書区分
総合
研究課題名
各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-チーム(生活心筋)-若手-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
川嶋 成乃亮(神戸大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では動脈硬化性疾患の病態形成における糖尿病の役割の解明、および糖尿病患者における動脈硬化性病変の早期診断とその進展防止法の開発を目的とし、以下の研究を行った。

1)薬剤溶出製ステント挿入後の新生内膜形成に及ぼす糖尿病の役割
2 動脈硬化病変の発症・進展に必須である内皮障害を早期に診断しうる血清マーカーの開発
研究方法
1)神戸大学医学部付属病院に入院し、シロリムス溶出製ステントを挿入した冠動脈疾患患者の、ステント挿入後6ヶ月における新生内膜形成の程度を、光干渉波断層(OCT)カテーテルを用いて、定量的に評価し、糖尿病、耐糖能異常の及ぼす影響を検討した。
2)神戸大学医学部付属病院に入院した複数の冠動脈危険因子を有する患者において、内皮機能を前腕の血流依存性血管拡張反応(FMD)で測定し、種々の血清マーカーとの関係を比較検討した。
結果と考察
1)ステントストラップ上の平均新生内膜厚は非糖尿患者では78μmであったのに対し、糖尿病患者では123μmと有意に増加していた。またスタチンの使用の有無により優位な差はなかった。
2)血清CRP値、IRI値などはFMDと相関しなかったが、NO合成酵素の補酵素であるBH4は正の相関を、BH4の酸化産物であるBH2は負の相関を示し、その結果、血清BH4/BH2比はFMDと高い相関関係を有した。そして、冠動脈危険因子の数が増加するほどBH4/BH2比は低下することも判明した。また、スタチンの投与によりFMDが改善すると、血清BH4/BH2比も増加を示した。
以上より、薬剤溶出性ステントの使用により、ステント挿入後の再狭窄は激減したが、やはり糖尿病の存在は内膜肥厚を増強することが明らかになった。
内皮障害の最大因子は酸化ストレスであるが、BH4は内皮において酸化されるため、血清BH4/BH2比は内皮特異的な酸化ストレスのマーカーとなりうる可能性がある。
結論
糖尿病は動脈硬化性病変の重要な基盤となる。糖尿病性血管障害の早期診断は重要であるが、それには血清BH4/BH2比が有用な可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200618010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
薬剤溶出性ステントの心内膜肥厚に及ぼす糖尿病の影響をOCTカテーテルを用い、はじめて明らかにした。また血清BH4/BH2比が内皮特異的酸化ストレスのマーカーであり、内皮機能を反映することを世界に先駆けて明らかにした。
臨床的観点からの成果
日常臨床において動脈硬化性疾患の治療をする際に、病変の早期診断が予防医学の観点からは重要であるが、これまで適切な血清マーカーがなかった。今回我々は、血清BH4/BH2比が、血管病変発症の予知、および治療効果の指標の新たな血清マーカーとなりうることを見出した。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
第69回日本循環器学会(平成17年3月、於 東京)ならびに第71回日本循環器学会(平成19年3月、於神戸)で研究成果の一部を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-