超急性期脳梗塞治療法の確立に関する多施設共同ランダム化比較試験(若手医師・協力者活用に要する研究)

文献情報

文献番号
200618006A
報告書区分
総括
研究課題名
超急性期脳梗塞治療法の確立に関する多施設共同ランダム化比較試験(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-チーム(心筋)-若手-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小川 彰(岩手医科大学 脳神経外科学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,288,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床研究全体の推進のため、臨床研究の手法、ルールの周知及び治験の推進を目的として臨床研究実施チームを組織した。今後の、治験管理センターの立ち上げ準備を目的とした。
研究方法
主研究においては、20歳以上75歳以下で、CTでは全く変化を認めないか軽度の初期虚血変化のみの、発症6時間以内の中大脳動脈閉塞症を対象とした。症例はランダムに治療群と対照群に割り付けられた。治療群にはウロキナーゼ局所線溶療法を、対照群には線溶療法以外の治療を行った。有効性は30日後、90日後のmodified Rankin scale (mRS)、NIHSS、Barthel Indexで評価した。安全性は全ての死亡および有害出血性変化の割合を評価した。また臨床研究実施チームは、組織を大きく3組「計画・評価」、「管理」、「実施」に分けた。全国54施設からの症例登録等に関する問い合わせには若手医師もしくは研究協力者が電話、メールにて対応するよう整備した。
他の臨床研究、治験に関しては、治験薬ごとに分かれ、登録を推進した。指導医の指示により若手医師及び研究協力者が相互にチェックをしながら登録業務を進めた。
結果と考察
主研究においては、114例が登録され、UK群、対照群にそれぞれ57例が割り付けられた。ITP解析を行った。死亡率・有害出血性変化に関して治療群・対照群に有意差を認めなかった。転帰良好となる症例は治療群において8.8-22.1%高かった。1次endpoint の90日後mRS 2以下の症例では有意差を認めなかったものの、2次endpoint とした90日後mRS 1 以下の症例は治療群24例、対照群13例と有意に治療群に転帰良好な例が多かった(p = 0.045)。後ろ向き登録研究では、経静脈的線溶療法の対照となる症例が限られていることが判明した。最終年度であるため、データ管理に重点を置いた研究を行った。チームを組織したことにより臨床研究の事務的な煩雑さが緩和され、担当医師の負担が軽減された。さらなる臨床研究及び治験の参加が期待できる。治験管理センターを早期に立ち上げ、臨床研究、治験に関するコンサルティング機能、プロトコルの立案等を提供し他機関との共同研究を主導できるスタッフの育成を継続して行っていく。
結論
本研究の結果、中大脳動脈閉塞症に対する6時間以内局所線溶療法の有効性・安全性が証明された。臨床研究実施チームを組織し、若手医師、研究協力者を積極的に現場との関わりを持たせた結果、臨床研究及び治験に対する意識が上がり、症例数の増加につながった。臨床研究実施チームの有用性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200618006B
報告書区分
総合
研究課題名
超急性期脳梗塞治療法の確立に関する多施設共同ランダム化比較試験(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-チーム(心筋)-若手-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小川 彰(岩手医科大学 脳神経外科学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床研究全体の推進のため臨床研究の手法、ルールの周知及び治験の推進を目的として臨床研究実施チームを組織した。今後の、治験管理センターの立ち上げ準備を目的とした。
研究方法
主研究においては、54の研究協力施設を選定し多施設共同ランダム化比較試験(RCT)を組織した。(略称:MELT Japan)主研究における臨床研究実施チームは3組「実施」、「評価」、「管理」に分けた。各チームは連携を取り合い、プロトコールの周知徹底、症例の登録を推進した全国54施設からの症例登録等に関する問い合わせには若手医師もしくは研究協力者が電話、メールにて対応するよう整備した。他の臨床研究、治験に関しては、治験薬ごとに分かれ登録を推進した。研究の手法、ルールの周知のため検討会等にて問題点を出し合い、各関係部署との連携を密にした。治験に関しては、事務手続きに係る書式の統一等また相談窓口の整備、スタッフの研修プログラムの検討を行った。
結果と考察
主研究においては、急性期ランダム化・診断法の標準化、急性期に行う適応決定の為の検査法,血管内治療手技を標準化することができた。さらに全国の急性期局所線溶療法実施施設における治療手技、治療成績を調査し、試験デザインを作成した。登録された症例は仮登録337例、本登録114例に達した。最終解析結果では、局所線溶療法群において、社会復帰率が保存群に対して有意に改善していることが証明された。今後使用する薬物の変更、手技の変更を行いより効果的な手法を確立する予定である。主研究は、全国54施設の登録施設があり登録推進のため各施設の担当医等との連絡を若手医師及び研究協力者が行い症例登録数の維持、プロトコールの遵守が守られた。
結論
主研究は、診断手法の標準化、急性期のランダム化を確立できた。さらに最終解析では線溶療法群において社会復帰率改善が証明された。若手医師、研究協力者を積極的に現場との関わりを持たせた結果、臨床研究及び治験に対する意識が上がり、施設全体の治験数の増加に直接つながった。臨床研究実施チームの有用性が確認された。3年間で確立されたチームにより臨床研究の事務的な煩雑さが緩和され、担当医師の負担が軽減されたため、さらなる臨床研究参加が期待できる。治験に関しては、各科関連部署との連携が症例数の増加に結びついている。今後、治験管理センターを早期に立ち上げ、臨床研究、治験に関するコンサルティング機能、プロトコルの立案等を提供し他機関との共同研究を主導できるスタッフの育成を継続して行っていく。

公開日・更新日

公開日
2007-04-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200618006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
主研究において研究期間中に114例が登録され、UK群、対照群にそれぞれ57例が割り付けられた。死亡率・有害出血性変化に関して治療群・対照群に有意差を認めなかった。有効性の検討では、90日後mRS 1 以下の症例、社会復帰する症例は治療群24例、対照群13例と有意に治療群に転帰良好な例が多かった(p = 0.045)。チームを組織したことにより臨床研究の手法、ルールの周知が行われ質の高い研究が維持され症例数の増加にもつながった。臨床研究実施チームの有用性が確認された。
臨床的観点からの成果
主研究においては経静脈的線溶療法は発症3時間以内の症例に限られ、小梗塞への有効性は高いものの、本研究が対象としている中大脳動脈閉塞症例に対する有効性は限られている。本研究の結果では、局所線溶療法を行うことにより、社会復帰率が有意に改善することが示された(p = 0.045)。また、本治療を6例行えば、1例の症例が恩恵を受けることが統計学的に証明された。これは極めて臨床的有効性が高い。3年間で確立されたチームにより担当医師の負担が軽減されたため、さらなる臨床研究及び治験への参加が期待できる。
ガイドライン等の開発
主研究においては線溶療法適応決定においては、現在CTが広く用いられている。しかし、その具体的な運用方法に関しては国際的にも未だコンセンサスは得られていない。本研究を通じて、線溶療法適応決定におけるMELT基準を提案した。MELT基準は簡易でありなおかつ、非常に明確にその基準が定義されている。今回重篤な合併症が少数であったことは、この適応基準を明確にしたこともその理由の一つと考えられる。適応に関しては、評価と実施チームを分離したため、より正確な決定に寄与した。
その他行政的観点からの成果
主研究において、初期虚血変化をCTで正しく読影することが重要であることが示された。そのため、マルチメディアコンテンツを利用したCT初期虚血変化読影訓練システムを開発した。これにより、初期研修医等において脳卒中診断能力が向上し、全国均霑化がはかられた。今後は、治験管理センターを早期に立ち上げ、臨床研究、治験に関するコンサルティング機能、プロトコルの立案等を提供し他機関との共同研究を主導できるスタッフの育成を継続して行っていく。
その他のインパクト
本研究成果の一部は2006年脳卒中学会総会で報告した。またその内容の一部はメディカルトリビューン誌に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-