急性心不全とその関連疾患に対するより効果的かつ効率的な治療等の確立に関する臨床研究-院外心停止者の救命率向上に対する自動体外式除細動器を用いた心肺蘇生法の普及とエビデンス確立のためウツタイン様式を用いた大規模臨床研究-

文献情報

文献番号
200618005A
報告書区分
総括
研究課題名
急性心不全とその関連疾患に対するより効果的かつ効率的な治療等の確立に関する臨床研究-院外心停止者の救命率向上に対する自動体外式除細動器を用いた心肺蘇生法の普及とエビデンス確立のためウツタイン様式を用いた大規模臨床研究-
課題番号
H16-チーム(心筋)-若手-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
野々木 宏(国立循環器病センター心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
18,983,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度の目的は、若手研究者とともに構築した院外心停止例の全例登録システムおよびデータ管理システムにより作成したデータベースから心停止例の予後に影響する因子解析し救命対策を構築することにある。
研究方法
1.前向き登録における入力システムとデータマネジメントを一貫して解析可能な管理システムの構築を行い、今後の各介入試験の効果検証における基礎データをまとめる。2.致死的不整脈に対するⅢ群薬のニフェカラントの前向き登録パイロット試験を開始する。3.モバイルテレメディシンによる新しい救急システムの実用化を行う。4.一般市民に向けた胸骨圧迫のみに単純化した講習プログラムの開発とその普及活動によりその効果を評価する。5.監察制度のある地域での解析により大動脈疾患による院外心停止の実態を検証する。
結果と考察
1.大阪府で8年間に登録された40,000例を越える院外心停止症例の蘇生に関するデータを解析し、バイスタンダーCPR実施割合の上昇、除細動までに要する時間の短縮に伴い、救命率は改善しているもののいまだ不十分であることを明らかにした。2.治療抵抗性心室細動に対するニフェカラント前向き登録パイロット試験のプロトコール作成を行い、北摂地域の当施設と救命救急センター4施設にて登録システムの有効性と安全性を検討した。3.モバイルテレメディシンにより、12誘導心電図、動画等を救急車-病院間伝送可能なシステムの実施試験を経て地域における実用化を検討した。4.院外心停止解析から得られた胸骨圧迫のみのCPRの有用性を利用し、①市民の救命意識は地域キャンペーンにCPR講習会を組み合わせることで向上すること、②市民のCPRへの参加意識は胸骨圧迫のみに単純化することで向上すること、③胸骨圧迫のみに単純化したCPRであれば、短時間で効率よく習得できること、を明らかにした。5.大動脈疾患による院外心停止症例の発症頻度と疾患内訳を明らかにした。
結論
本研究で構築したシステムは、国際標準のウツタイン様式を用いた疫学研究として世界最大規模のものであり、世界の救急医療の発展に資するエビデンスを提供し得た。 今後、院外心停止の救命率向上のための蘇生教育・救命意識向上のためのキャンペーンを継続して実施し、市民の救命意識向上、地域の救急システム改善による心臓突然死の救命率向上を客観的に評価することが可能となった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-11-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200618005B
報告書区分
総合
研究課題名
急性心不全とその関連疾患に対するより効果的かつ効率的な治療等の確立に関する臨床研究-院外心停止者の救命率向上に対する自動体外式除細動器を用いた心肺蘇生法の普及とエビデンス確立のためウツタイン様式を用いた大規模臨床研究-
課題番号
H16-チーム(心筋)-若手-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
野々木 宏(国立循環器病センター心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、若手研究者とともに院外心停止例の全例登録システムおよびデータ管理システムを構築し、そこから得られたエビデンスに基づいた対策の効果を客観的に評価するとともに、根拠に基づく医療として日本人の特性に応じた、より効果的な保健医療技術の確立を目指すものである。
研究方法
院外心停止全例登録システムおよびデータ管理システムを構築し、若手研究者とともに大規模臨床疫学データの解析を行う。また同時にCPRとAEDの普及とその教育システムの開発、致死的不整脈に対する薬物治療法の確立、ITを利用した新しい救急システムの開発、大動脈疾患救急システム構築を行い、その効果を客観的に評価する。
結果と考察
ウツタイン登録・解析システムの構築により大阪府で8年間に登録された約4万例におよぶ院外心停止症例のデータ解析を実施し、院外心停止症例に対する救命の連鎖の検証では、Bystander CPR実施率は約30%まで上昇し、救急隊による除細動までに要する時間は中央値で15分から10分にまで短縮していた。それに伴い心原性で目撃のある心室細動症例の救命率は6%から26%に改善した。心停止から15分程度の発症早期の間であれば、人工呼吸と胸骨圧迫からなる従来の蘇生法と同様に胸骨圧迫のみのCPRにより心室細動の維持、救命率の改善に効果があることを明らかにした。胸骨圧迫とAEDの使用法に単純化した講習会および胸骨圧迫のみのCPRに関するキャンペーンを実施した。同時に、全国の無作為抽出された一般市民を対象に調査し、AED、CPRに関する認知度は約4割、CPRを試みようと思うものは22%であった。CPR実施に対する抵抗感を持っているもののうち、胸骨圧迫のみのCPRなら約半数が実施すると解答した。今後、胸骨圧迫のみのCPRの普及により、bystander CPR実施割合の上昇、院外心停止例の救命率改善に結びつく可能性が示唆された。
結論
本研究により、汎用性のあるデータ収集・解析システムを構築したことで世界の救急医療の発展に資するエビデンスを発信する基盤が達成でき、その推進に若手研究者チームの養成が可能となった。またAEDを有効に活用するための市民の認知度を高めるためのキャンペーン効果、単純化した蘇生法の効果が明らかとなり、今後継続して院外心停止の救命率向上のための介入効果を検証し、心臓突然死の救命率向上のための救急システム改善に寄与していくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-11-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200618005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で構築したシステムによるデータベースは、過去8年間で約4万件と国際標準のウツタイン様式を用いた疫学研究として世界最大規模のものであり、世界の救急医療の発展に資するエビデンスを提供し得た。若手研究者に国際的に通用する養成をなしえた。
臨床的観点からの成果
今後、院外心停止の救命率向上のための蘇生教育・救命意識向上のためのキャンペーンを継続して実施し、市民の救命意識向上、地域の救急システム改善による心臓突然死の救命率向上を客観的に評価することが可能となった。
ガイドライン等の開発
胸骨圧迫のみの単純化した蘇生法の効果を明らかにし、国際的に注目され、更に市民向けトレーニングシステムを開発し、その普及を開始した。
その他行政的観点からの成果
院外心停止前向き登録における入力システムとデータマネジメントを一貫して解析可能な管理システムの構築を行い、標準化し汎用性のあるものとした。
その他のインパクト
モバイルテレメディシンにより、12誘導心電図、動画等を救急車-病院間伝送可能なシステムの実施試験を経て地域における実用化を検討し、公開講座により報道発表を行った。簡易型心肺蘇生法による講習会に関する市民公開講座を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
40件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-