各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討(若手医師・協力者活用に要する研究)

文献情報

文献番号
200618004A
報告書区分
総括
研究課題名
各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-チーム(循環器(生習)-若手-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
横手 幸太郎(千葉大学 大学院 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,174,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
千葉大学附属病院に臨床研究実施チームを編成し、確かな研究の遂行に役立てる。チームの活用を通じて、糖尿病ならびに耐糖能異常患者(IGT)を対象とした高脂血症の治療(特に脂質値と高脂血症薬の種類)が、心血管イベントの発症や予後に如何なる影響を及ぼすか、日本人におけるエビデンスを確立する。
研究方法
糖尿病患者、IGTならびに正常血糖者計5,437名を対象に、前向き追跡比較対照試験を実施、臨床検査値、イベント発症、高脂血症薬について登録時およびその後年1回ずつ評価した。糖尿病患者の動脈硬化予防への有用性が期待される第3世代スタチン投与症例を対象に、薬剤の種別による脂質改善作用を比較解析した。
結果と考察
臨床研究実施チームが、千葉大病院臨床試験部および千葉臨床試験ネットワークとの連携により、専門性を活かし効率的に試験を実施した。全登録患者の内訳は、糖尿病患者4,014名、IGT 302名、正常血糖者1,121名、糖尿病患者の半数に脂質低下薬が投与され、脂質管理目標値達成率32.7%であった。1年後の心血管イベント発生率は3.57%(致死0.63%、非致死2.94%)であった。本研究チームでは初年度に276症例の糖尿病患者を登録、本年度(2年次)までに28症例が脱落し、248症例が最終有効解析対象となった。登録時検査平均値はHbA1c 7.16 、TC204、TG179、HDLC55、2年後にはHbA1c7.63 、TC201、TG153、HDLC55.3であった。イベント発生率(0.4%)は全体研究に比べ著しく低く、本チーム症例の脂質平均値がわが国で推奨される糖尿病患者の脂質目標値(TC<200)をほぼ達成できていたこととの関連が示唆される。メタボリックシンドローム(MS)合併例におけるアトルバスタチン(A)とピタバスタチン(P)の脂質改善効果を比較したところ、脂質改善率がPで有意に大きく、またAでは、腹部肥満が高度になるとnonHDLC低下率が有意に減弱した(P<0.05)。症例の特性に応じた第3世代スタチンの使い分けの有用性が示唆された。
結論
若手医師と協力者からなる臨床試験チームを編成、有効に症例登録と追跡調査を実施し、糖尿病合併高脂血症患者における脂質低下剤の有効性に新知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200618004B
報告書区分
総合
研究課題名
各種高脂血症治療薬の糖尿病性心血管病進展予防効果の総合的検討(若手医師・協力者活用に要する研究)
課題番号
H16-チーム(循環器(生習)-若手-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
横手 幸太郎(千葉大学 大学院 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 臨床研究基盤整備推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
千葉大学附属病院に臨床研究実施チームを編成し、確かな研究の遂行に役立てる。チームの活用を通じて、糖尿病患者(DM)ならびに耐糖能異常患者(IGT)を対象とした高脂血症の治療(特に脂質値と高脂血症薬の種類)が、心血管イベントの発症や予後に如何なる影響を及ぼすか、日本人におけるエビデンスを確立する。
研究方法
DM、IGTならびに健常者計5,437名を対象に、前向き追跡比較対照試験を実施、臨床検査値、イベント発症、高脂血症薬について登録時およびその後年1回ずつ評価した。可能症例には頭部MRIにより大脳白質病変を評価し、認知機能との関連を解析した。DMの動脈硬化予防への有用性が期待される第3世代スタチン投与症例を対象に、薬剤の種別による脂質改善作用を比較解析した。
結果と考察
臨床研究実施チームが、千葉大病院臨床試験部および千葉臨床試験ネットワークとの連携により、専門性を活かし効率的に試験を実施した。全登録患者の内訳は、DM4,014名、IGT 302名、健常者1,121名、DMの半数に脂質低下薬が投与され、脂質管理目標値達成率32.7%であった。1年後の心血管イベント発生率は3.57%(致死0.63%、非致死2.94%)であった。本研究チームでは初年度に276症例のDMを登録、本年度(2年次)までに28症例が脱落し、248症例が最終有効解析対象となった。登録時検査平均値はHbA1c 7.16 、TC204、TG179、HDLC55、2年後にはHbA1c7.63 、TC201、TG153、HDLC55.3であった。イベント発生率(0.4%)は全体研究に比べ著しく低く、本チーム症例の脂質平均値がわが国で推奨されるDMの脂質目標値(TC<200)をほぼ達成できていたこととの関連が示唆される。認知機能と白質病変 (P<0.01)の間に負の、抑うつと脳梗塞(P=0.02)の間には正の相関を得た。アトルバスタチン(A)とピタバスタチン(P)はいずれもDMの脂質改善に有効だったが、メタボリックシンドローム(MS)合併例での脂質改善率はPで有意に大きく、またAでは、腹部肥満が高度になるとnonHDLC低下率が有意に減弱した(P<0.05)。症例の特性に応じた第3世代スタチンの使い分けの有用性が示唆された。
結論
若手医師と協力者からなる臨床試験チームを編成、有効に症例登録と追跡調査を実施し、合併症予防を目的としたDM・MS患者の脂質低下療法に新知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200618004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
千葉大学医学部附属病院に臨床研究実施チームを編成し、同院臨床試験部を中心に組織された千葉臨床試験ネットワーク(Chiba University Clinical Research Network)と連携、内分泌・代謝・老年病の専門性を活かして、効果的に臨床研究を遂行する体制を確立した。
臨床的観点からの成果
糖尿病患者の高脂血症治療により心血管病の抑制を試みる全国研究に参加、症例登録と追跡調査を成功裡に進めたほか、糖尿病・メタボリックシンドローム患者における第3世代スタチンの種別による有効性の差異や、高齢糖尿病患者の合併症と認知機能との関連に新知見を得た。
ガイドライン等の開発
本事業の成果と経験を活かし、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2007年版」および厚生労働省の指導による「新医師臨床研修制度における指導ガイドライン」(http://www.niph.go.jp/soshiki/jinzai/kenshu-gl/index.html/)の作成に携わった。
その他行政的観点からの成果
千葉県下の医療機関を中心とした多施設共同臨床研究の推進に実績を上げた。
その他のインパクト
第3世代スタチンの種別による脂質改善作用の成績が、2006年8月発行の医療経済情報誌Japan Medicine(じほう社)に掲載された。また糖尿病患者に対する高脂血症治療薬の使用法が、わが国の実地医家手引書として定評のある「今日の治療指針2007(医学書院)」に反映された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
39件
総説、著書
その他論文(英文等)
3件
総説、症例報告
学会発表(国内学会)
8件
日本内科学会、日本糖尿病学会、日本老年医学会、日本動脈硬化学会
学会発表(国際学会等)
3件
国際動脈硬化学会、米国糖尿病学会、欧州動脈硬化学会
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
動脈硬化性疾患診療ガイドライン2007年版、新医師臨床研修制度における指導ガイドライン

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kobayashi K., Yokote K, Fujimoto M, Yamashita K et al.
Targeted disruption of TGF-β-Smad3 signaling leads to enhanced neointimal hyperplasia with diminished matrix deposition in response to vascular injury.
Circ Res  (2005)
原著論文2
Yokote K, Kobayashi K and Saito Y
Role of TGF-beta/Smad3 signaling in response to vascular injury.
Trends Cardiovasc Med  (2006)
原著論文3
Yokote K, Hara K, Mori S, Kadowaki T et al.
Dysadipocytokinemia in Werner syndrome and its recovery by treatment with pioglitazone.
Diabetes Care  (2004)
原著論文4
Kawamura H, Yokote K, Asaumi S, Kobayashi K.
High Glucose-Indused Upregulation of Osteopontin Is Mediated via Rho/Rho Kinase Pathway in Cultured Rat Aortic Smooth Muscle Cells.
Arterioscler Thromb Vasc Biol  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-