HIV感染を阻害するシュードプロテオグリカン型薬剤の作用メカニズム

文献情報

文献番号
200614107A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染を阻害するシュードプロテオグリカン型薬剤の作用メカニズム
課題番号
H18-創薬-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小川 温子(お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 棚元 憲一(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 牛島 廣治(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 星野 洪郎(群馬大学大学院 医学系研究科 )
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シュードプロテオグリカン(シュードPG)は、天然のプロテオグリカンの分子構造を模倣して、直鎖高分子に複数のグリコサミノグリカン(GAG)鎖を共有結合させてわれわれが創成した人工複合体分子である。その新しい構造に基づき、シュードPGはサイクロフィリンAなどのGAG結合タンパク質に対して単独のGAG鎖とは異なる結合活性を示すことを見出した。本研究では、シュードPGの構造的特徴と顕著な結合特性に着眼し、細胞膜上プロテオグリカンを必要とするHIV-1ウイルスの初期感染機構をブロックし、かつHIV-1に対する宿主の抵抗性を回復する効果を併せ持つ感染阻害剤としての利用を目指すとともに、シュードPGの抗HIV-1メカニズムを解明する。
研究方法
種々の天然GAGまたはオリゴ糖鎖をもつシュードPGを調製し、MT-4細胞およびMAGIC-5A細胞を用いて抗HIV活性を測定した.次にシュードPGのGAG鎖の種類および鎖長、ならびに骨格高分子の鎖長と、抗HIV活性の関係を研究した。また、活性を示すシュードPGの構造解析法を開発するため、nanoLC/ESI-TOFMSを用いたGAGオリゴ糖の分析条件を検討した。さらにシュードPGの作用機構について、ヘパリンによるHIV感染抑制機序を解析した。
結果と考察
調製した種々のシュードPGの中で、特定のGAG鎖をもつシュードPGが有効な抗HIV活性を示した。GAG鎖の鎖長が大きく、また骨格分子の鎖長が短いシュードPGが、高い抗HIV活性を示し、活性の鎖長依存性が見出された。C18 カラムを用いたnanoLC/ESI-TOFMSにより、2-14 糖からなるGAG糖鎖の構成糖と硫酸基結合数を決定することができた。また、ヘパリンはHIV-1エンベロープタンパク質gp120中のV3領域と結合することによって、HIV-1の細胞表面への吸着を阻害していることを明らかにした。
結論
シュードPGの抗HIV活性におけるGAG鎖ならびに骨格分子の鎖長依存性から、構造設計の方針が得られた。また、活性を担うGAG多糖鎖の構成糖と硫酸基の構造解析が可能となった.HIV感染抑制機序についても、鍵となる重要な相互作用を特定した。以上、今後の薬剤開発の基盤となる知見が得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2007-10-09
更新日
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