HDL形成責任タンパク質ABCA1の代謝制御をターゲットとした新規動脈硬化治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200614104A
報告書区分
総括
研究課題名
HDL形成責任タンパク質ABCA1の代謝制御をターゲットとした新規動脈硬化治療法に関する研究
課題番号
H18-創薬-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
奥平 桂一郎(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 動脈硬化症に対しては、一般的に予防と進行抑制が主な手段とされ、形成された病変に対して積極的に治療する薬剤は現在のところまだ存在しない。最近、HDLが動脈硬化巣を退縮させることが臨床的に証明され、新しい動脈硬化治療法として、HDL形成責任タンパク質である膜トランスポーターABCA1の活性を上昇させる薬剤の開発が期待されている。
 本研究の目的は、ABCA1の発現・機能の促進を標的としたABCA1タンパク質分解抑制メカニズムの解明にある。ABCA1の相互作用タンパク質beta1-syntrophinがABCA1の分解を抑制することに着目し、更なる相互作用タンパク質の同定と、ABCA1安定化のメカニズム解明を目指す。
研究方法
 ABCA1のC末端20残基を含むビオチン標識ペプチドを合成し、メンブレン上にスポットされた一連の大腸菌発現PDZタンパク質(75種のタンパク質由来の122のPDZドメイン)に対して、ABCA1-C末ペプチドとの結合を、オーバーレイアッセイによって観察した。そこから同定された相互作用タンパク質のヒトcDNAを、ライブラリーよりクローニング、または各種遺伝子バンクから入手し、myc標識ベクターに導入した。HEK293細胞に、ABCA1と各種相互作用タンパク質を共発現させ、ABCA1のタンパク質発現と細胞のHDL形成を観察した。
結果と考察
 上記結合実験により、ABCA1に相互作用する13のPDZタンパク質が新たに同定された。ABCA1と相互作用タンパク質の共発現細胞において、GEF11、GEF12、MUPP-1でABCA1の発現が増加し、HDL形成が促進された。しかし、TIP-1ではABCA1発現、HDL形成に与える影響は見られなかった。すなわち、これらPDZタンパク質の結合は、ABCA1安定化に必要であるが十分でないと考えられ、beta1-syntrophin 、GEF、MUPP-1では、それぞれに特徴的なABCA1安定化メカニズムの存在が予想された。
結論
 相互作用タンパク質によってABCA1の分解が抑制されるメカニズムを明らかにするために、ABCA1相互作用タンパク質の探索を行った結果、13種の新規相互作用タンパク質(PDZタンパク質)が同定された。そのうち、GEF11、GEF12、MUPP-1はABCA1の発現を増強しHDL形成を促進することが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-