腹膜癒着予防剤の開発と応用

文献情報

文献番号
200614100A
報告書区分
総括
研究課題名
腹膜癒着予防剤の開発と応用
課題番号
H18-創薬-006
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
土肥 多惠子(国立国際医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 鏑木 康志(国立国際医療センター )
  • 名取 泰博(国立国際医療センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はケモカインを標的とした腹膜癒着防止剤の創製を目指すものである。我々は、これまでにマウスを用いて、腹腔内のケモカインCCL1とその受容体CCR8が、腹膜癒着防止のための標的となりうることを明らかにした。本年度の目的は、CCL1の低分子阻害剤のスクリーニング、マウス癒着モデルにおいての評価、および癒着のメカニズムのヒトでの検証である。
研究方法
1.In silicoスクリーニング技術を応用して既成のライブラリーから低分子化合物を選定し購入した。
2. 我々の作成したマウス中皮細胞とマクロファージのCCL1誘導凝集試験に化合物を加えて阻害効果を解析した。マウスCCR8発現細胞を作製し化合物によるCa2+流入阻害を測定した。またヒトCCR8発現細胞を作製した。
3.阻害活性の強かった化合物について、マウス術後癒着モデルで試験した。
4.下部消化管手術時の様々な時点で、腹腔内洗浄液を採取しその細胞成分を解析した。
5.上記の術中洗浄液の蛋白解析のため夾雑物除去の条件などを検討した。
結果と考察
細胞凝集試験では、9種類の低分子化合物に阻害活性が認められた。Ca2+流入阻害試験を行った結果、活性の高いもので30%程度の阻害であった。これについてマウス癒着モデルを用いて試験したところ、非投与群に比べて癒着が顕著に軽減したが、高濃度の投与を要した。阻害効果の高い候補化合物をさらに探索するため、in silicoスクリーニング方法を改善する予定である。
手術開始直後の腹腔洗浄液からはマクロファージが得られたが,術中および手術翌日のドレーン液では好中球が90%以上を占めマクロファージはごくわずかであった。外科ストレスにより、腹腔内のレジデントマクロファージは非常に早い時期に創部などに付着して浮遊細胞画分から消失し、好中球が浸潤するものと考えられた。開腹手術時の腹腔内洗浄液中に回収される総タンパク量は、採取のタイミングによる差は明らかでなかった。これに対して、腹腔鏡手術開始直後では蛋白の滲出量が開腹術に比べて低い傾向がみられた。洗浄液サンプル濃縮とアルブミン除去法の検討を行い、また腹腔内洗浄液中から、ELISA法によりCCL1を検出することができた。このことからヒトにおいてもCCL1/CCR8が癒着に関与している可能性が示唆された。
結論
細胞凝集を阻害する低分子化合物を見いだし、in vivoでも腹膜癒着阻害効果があった。しかし阻害に高濃度を要するものであったため,さらにスクリーニングを続けることとした。外科ストレス下のヒト腹腔内洗浄液の解析を行った。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
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