治療ターゲットとしてのFcγ受容体を介したデング出血熱の病態形成機序の解析

文献情報

文献番号
200614094A
報告書区分
総括
研究課題名
治療ターゲットとしてのFcγ受容体を介したデング出血熱の病態形成機序の解析
課題番号
H17-創薬-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
林 昌宏(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デングウイルス(DENV)はフラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるウイルスであり蚊によって媒介される.DENVには 1-4型の4つの異なる型が存在する.DENVの感染により典型的な症状を示す場合一過性の熱性疾患であるデング熱(DF),致死的疾患であるデング出血熱(DHF)という2つの異なる病態を示す.FcγRは細胞外領域,膜貫通領域,細胞質領域から構成される蛋白質であり,DENVの抗体依存性感染増強(ADE)に関わるとされるが,その機序は明らかとなっていない.本研究の目的はFcγRIIa(CD32a)を用いてDENVのADEにおけるFcγRの役割を解析することである.
研究方法
ヒト モノサイト由来U937細胞由来CD32a遺伝子をクローニングベクターpcDNA3.1(+)にサブクローニングし、その細胞質領域の欠損変異体,点変異体を作製した.アフリカミドリザル腎細胞由来Cos-7細胞に作製した各変異CD32aを導入し,DENV感染におけるCD32aのADEにおける役割を検討した.
結果と考察
CD32aの各変異体を作製し,Cos-7細胞に導入しフローサイトメトリーでその発現を解析したところ,すべてのCD32a変異体が細胞の表面に発現されていることが確認された.また各CD32a変異体を発現させたCos-7を用いてデングウイルスを感染させたところ,その感染性に変化は認められなかった.次に各CD32a変異体を発現させたCos-7を用いてDENVに対するADE活性を検討したところ,作製した変異体にADE活性が低下しているものが認められた.現在詳細について解析を進めている.
結論
CD32aの細胞質領域に各変異体を作製しCos-7細胞に導入した結果,各変異体は細胞膜表面に正常に発現していることがフローサイトメトリーによる解析により確認された.また各CD32a変異体を発現させたCos-7細胞のDENVに対する感受性は変化しなかったことから,これら細胞を用いてDENVのADE解析を行ったところ変異体の一部にADE活性の低下したものが認められた.以上の結果よりFcγRを介したADEのメカニズムの解析はDENV感染症の病態形成機序の解明に寄与することが示唆された.現在も世界の熱帯・亜熱帯地域においてDF/DHFの流行は続いており,日本における輸入感染例も毎年報告されている.DHFはひとたび発症するとその致死率は高く,DENVワクチンは未だ開発されていない.本感染症の病態形成機序を解明し,その治療法を開発することは本邦への防疫のみならず世界の公衆衛生の向上に貢献する.

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
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