寄生性原虫の生育に必須な脂質成分の代謝と輸送ならびに創薬探索に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
200614092A
報告書区分
総括
研究課題名
寄生性原虫の生育に必須な脂質成分の代謝と輸送ならびに創薬探索に関する基礎的研究
課題番号
H17-創薬-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中野 由美子(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
赤痢アメ-バ症は腸管内寄生原虫の赤痢アメーバによって引き起こされる大腸炎、肝膿瘍を主症状とする感染症で、近年では性感染症としての対策が求め始められている。現在使用されている抗赤痢アメーバ症薬剤には催寄性、耐性株の出現の報告、シストキャリアーに効きにくいなどの問題点があるため、新規薬剤を開発することが必要である。本研究では赤痢アメーバの生育の必須因子であるコレステロールの取り込み機構と細胞内での役割を解明することを目的とする。
研究方法
赤痢アメーバがコレステロールエステルまたは遊離コレステロールのどちらに要求性を示すのかを、培養系と培地中のコレステロールを定量することにより検討した。宿主のコレステロールにおける病原性の役割を調べるために、宿主細胞をMethyl-beta-cyclodextrinで処理を行った。赤痢アメーバ内でのコレステロールの局在を観察するために、遊離コレステロールをfilipinで染色した。また取込みの動態はNBD-cholesterolを用いてパルスチェイス実験を行った。
結果と考察
赤痢アメーバの生育には遊離コレステロールではなく、コレステロールエステルが必要であった。また宿主細胞からコレステロールを減少させると、赤痢アメーバによる貪食効率が低下することが観察された。赤痢アメーバ内で遊離コレステロールはもっぱらリソソームに蓄積しており、ヒトや他種生物とは異なる局在像を示した。昨年度の解析により、赤痢アメーバの病原因子の一つであるシステインプロテアーゼ(CP)はコレステロールによって活性が変化することを明らかにしたことから、コレステロールはリソソーム内でCPの活性調節を担っていると考えられる。また、肝膿瘍から単離された病原株はリソソームならびに細胞内のコレステロール量が増大していることが分かった。細胞外からコレステロールの取込みの動態を可視化したところ、細胞内の小さな小胞に組み込まれ、リソソームに送られることを観察した。
結論
赤痢アメーバの生育には外界からコレステロールエステルを取込むことが必要であった。しかし、遊離コレステロールがリソソームに蓄積していたことなどにより、赤痢アメーバのコレステロールの細胞内動態は特異であることが分かった。よって、赤痢アメーバの病原性の理解と新規抗アメ-バ症薬剤開発のための基盤を提供するためにもコレステロールの細胞内輸送の解析が有用であることを示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-