内因性幹細胞の動員、生着、心筋分化による重症心不全・再生療法の確立

文献情報

文献番号
200614091A
報告書区分
総括
研究課題名
内因性幹細胞の動員、生着、心筋分化による重症心不全・再生療法の確立
課題番号
H17-創薬-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 浩二(独立行政法人国立病院機構京都医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 桑木 知朗(麒麟麦酒㈱医薬カンパニー開発本部医薬開発研究所 )
  • 森本 達也(財)生産開発科学研究所心血管分子細胞生物学研究室 )
  • 米田 正始(京都大学大学院医学研究科心臓血管外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、重症末期心不全に対する心筋再生療法を確立することであり、この目的を達成するため(1)慢性期における重症心不全に対してG-CSF、エリスロポイエチン、増殖因子を介した内因性幹細胞の動員、生着を促す再生療法の確立、(2)幹細胞の分化効率を上げるための心筋細胞への分化制御機構の解明、の2つに焦点をおいた。
研究方法
分担研究者の桑木らはG-CSFに加えてエリスロポイエチンを用いた動員療法に関して検討し、米田らは増殖因子徐放化投与による幹細胞生着療法の確立を目指し、森本らは転写因子 GATA-4 による心筋細胞分化機構の解明を行った。
結果と考察
桑木らは主任研究者と共にBio14.6心筋症ハムスターの心不全末期において4μg/kg以下の低用量G-CSFの隔日投与が、心機能と生存率を改善することを見出した。その有効性を増強する目的で造血ホルモンであるエリスロポイエチンによる細胞動員に関して検討し、G-CSF とエリスロポイエチンの併用により造血細胞の動員量に相乗的な増加が認められることを見いだした。米田らは生体吸収性ゼラチン水和ゲルを用いた蛋白徐放システムを利用して 半減期の短い細胞増殖因子を徐放化することにより、虚血性心筋症モデルや拡張型心筋症モデルにおいて心機能が改善することを示したが、その機序として血管新生の誘導と心筋アポトーシス減少、組織線維化の抑制が関与していることを見いだした。さらに抗アポトーシス作用、血管新生作用も有するエリスロポイエチンの局所徐放化投与により、心筋梗塞後の心機能が改善することを見出した。本研究グループは胚性幹 (ES) 細胞において心筋特異的転写の統制において中心的役割を担うGATA-4 がアセチル化し心筋細胞分化亢進が誘導されることを報告した。森本らは心筋細胞分化におけるGATA-4 因子の活性化機構に関して検討するため、プロテオミクスによりGATA-4複合体の精製を行いGATA-4 の結合蛋白として Cdk9/Cyclin T1 が存在することを見出した。
結論
血管再生療法は既にヒトにおいて臨床試験が行われているが、重症末期心不全に対する心筋再生療法は未だ確立していない。本研究グループは幹細胞の動員、生着、分化のそのそれぞれのステップにおいて新たなる知見を見出し、動物レベルにおいてこれらを組み合わせた治療法を検討し、重症末期心不全に対する心筋再生療法の臨床応用を目指している。

公開日・更新日

公開日
2007-04-13
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
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