HIV-1およびインフルエンザウイルスのゲノムRNA核外輸送機構の解明に基づく創薬

文献情報

文献番号
200614088A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1およびインフルエンザウイルスのゲノムRNA核外輸送機構の解明に基づく創薬
課題番号
H16-創薬-107
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 秀宗(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 飛梅 実(国立感染症研究所 )
  • 松田道行(京都大学大学院医学研究科)
  • 森山雅美(イムノヘルスジャパン)
  • 山口靖雄(大道産業)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV-1のゲノムRNAの核外輸送を含む複製を蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)を応用した分子プローブを使って観察し、新規抗ウイルス薬開発の標的としていくことを目的とした。
研究方法
①Crm1により核外輸送されることが知られているセリンスレオニンチロシンリン酸化酵素MEKを内在性コントロールとして用いた。
②Rev-Crm1の会合によって誘導されるFRETに対する恒常活性化型Ranの影響を調べた。
③恒常活性化型Ranによって誘導された高いFRET値に対する、Revの核外移行阻害因子TTP101の影響を調べた。
④Rev発現細胞のすべてにおいて恒常活性化型Ranを発現させるため、CFP-RevのcDNA下流にIRES配列を挿入し、その下流に恒常活性化型Ran cDNAを挿入した。
結果と考察
①MEKを内在性コントロールとしておくことより、Revに特異的に作用する薬剤がスクリーニングできるようになった。
②Rev-Crm1の会合によって誘導されるFRETは恒常活性化型Ranによって2倍近く増強されることが確認した。
③恒常活性化型Ran存在下ではレプトマイシンBによるFRETの減弱は認められなかったが、Revの核外移行阻害因子であるTTP101存在下ではFRET値が減衰した。
④Revと恒常活性化型Ranを同じベクターから発現させることによりRevとCrm1の会合に由来する高いFRET値を得ることができた。
恒常活性化型Ran存在下では、既存のCrm1阻害剤であるレプトマイシンBを用いてもFRETの減衰が認められなかった。RevとCrm1の結合阻害ではないため、FRETの減衰が認められないものと推察した。一方TTP101はRevの核外移行を抑制する因子であり、FRET値を減衰させたため、開発したRev-Crm1の会合をモニターするプローブは恒常活性化型Ran存在下でもRevの機能阻害を評価できる系であることが明らかとなった。
 CFP-Revと恒常活性化型Ranを同じベクターから発現させることによりRevとCrm1の会合に由来する高いFRET値を得られた。
結論
MEKを内在性コントロールとしておくことより、Revに特異的に作用する薬剤がスクリーニングできるようになった。また恒常活性化型Ranの存在によりFRET値を高めることができた。実際にRevの核外移行抑制因子によりRevの機能阻害を評価できる系であることを示した。恒常活性化型RanをRevと同じベクターから発現させることによりRevとCrm1の高いFRET値を得た。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614088B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV-1およびインフルエンザウイルスのゲノムRNA核外輸送機構の解明に基づく創薬
課題番号
H16-創薬-107
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 秀宗(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 飛梅 実(国立感染症研究所 )
  • 松田道行(京都大学大学院医学研究科)
  • 森山雅美(イムノヘルスジャパン)
  • 山口靖雄(大道産業)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV-1のゲノムRNAの核外輸送を含む複製を蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)を応用した分子プローブを使って観察し、新規抗ウイルス薬開発の標的としていくことを目的とした。
研究方法
①新たな国産蛍光蛋白質、AG(アザミグリーン)とKO(クサビラオレンジ)を用いてFRETのプローブを作成した。
②蛍光蛋白の細胞内局在は倒立型蛍光顕微鏡または共焦点レーザー顕微鏡の画像を取り込み専用ソフトを用いて解析を行った。
③Rev-Crm1の会合によって誘導されるFRET値に対する恒常活性化型Ranの影響をセルソーターにより調べた。
④恒常活性化型Ranによって誘導された高いFRET値に対する阻害剤のレプトマイシンB、Revの核外移行阻害因子TTP101の影響を調べた。
結果と考察
①RevまたはCrm1単独発現細胞で、Rev, Crm1の多くは細胞質に局在し、Revは一部核小体にCrm1は一部核膜に局在する様子が観察された。
②Rev-Crm1の会合によって誘導されるFRETは恒常活性化型Ranによって2倍近く増強された。
③レプトマイシンBは通常のFRET値を低下させたが、恒常活性化型Ran存在下においては変化を検出できなかった。
④恒常活性化型Ran存在下でも、Revの核外移行阻害因子TTP101存在下では、FRET値が抑制された。

AGとKOという国産蛍光タンパク質を用いて、RevとCrm1の2分子FRETをセルソーターで十分に検出することができた。
  恒常活性化型Ran存在下では、既存のCrm1阻害剤であるレプトマイシンBを用いてもFRETの減衰が認められなかった。RevとCrm1の結合阻害ではないため、FRETの減衰が認められないものと推察した。一方TTP101はRevの核外移行を抑制する因子であり、FRET値を減衰させたため、開発したRev-Crm1の会合をモニターするプローブは恒常活性化型Ran存在下でもRevの機能阻害を評価できる系であることが明らかとなった。
結論
HIV-1 Rev、宿主Crm1のプローブを作成し、多細胞数を同時に扱えるセルソーターでFRETを解析する系を確立した。また恒常活性化型Ranの存在によりFRET値を高め、さらにRevの核外移行阻害因子であるTTP101によるFRETの減衰を観察した。Revの機能阻害剤をスクリーニング可能な系であると考えた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614088C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIV-1 Rev、宿主Crm1のプローブを作成し、多細胞数を同時に扱えるセルソーターでFRETを解析する系を確立した。また恒常活性化型Ranの存在によりFRET値を高め、さらにRevの核外移行阻害因子であるTTP101によるFRETの減衰を観察した。以上のようにRevの機能阻害剤をスクリーニング可能な系を開発した。
臨床的観点からの成果
HIV-1 Revの機能阻害剤をスクリーニングする系により治療薬の開発が期待される。

ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
HIV-1 Revの機能阻害剤をスクリーニングする系について、恒常発現細胞開発、融合蛋白とのスペーサーを調節するなどを通じ改良を続けている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Harada T, Tatsumi M, Takahashi H, et al.
HIV-1 particles and CD4(+)cell membrane fragments in a cell-free system of virus fusion or entry.
Microbes and Infection , 6 (5) , 421-428  (2004)
原著論文2
Okada Y, Suzuki T, Sunden Y, et al.
Dissociation of heterochromatin protein 1 from lamin B receptor induced by human polyomavirus agnoprotein: role in nuclear egress of viral particles.
EMBO Rep , 6 (5) , 452-457  (2005)
原著論文3
Takahashi H, Maeda M, Sawa H, et al
Dicer and positive charge of proteins decrease the stability of RNA containing the AU-rich element of GM-CSF.
Biochem Biophys Res Commun , 340 (3) , 807-814  (2006)
原著論文4
Maeda M, Sawa H, Tobiume M, et al.
Tristetraprolin inhibits HIV-1 production by binding to genomic RNA.
Microbes and Infection , 8 (11) , 2647-2656  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-