ヒト型リンパ濾胞を持つエイズモデルマウスの作成とその応用

文献情報

文献番号
200614087A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト型リンパ濾胞を持つエイズモデルマウスの作成とその応用
課題番号
H16-創薬-106
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
清水 則夫(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 寺嶋 一夫(東京医科歯科大学 )
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 )
  • 関根 暉彬(株式会社 リンフォテック)
  • 山本 直樹(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
免疫不全マウスNOGにヒト造血幹細胞を移植すると、ヒトT細胞の発生と脾臓にリンパ濾胞様構造の出現が観察され、HIV-1を感染すると持続感染状態が成立する。本研究は、形成されるリンパ濾胞様構造の詳細な解析とマウスへのHIV-1感染実験とウイルス動態および免疫応答の解析をおこない、このマウスを利用したエイズ治療薬、ワクチン開発、免疫療法の開発へ応用する基盤を作成することを目的とした。
研究方法
ヒト臍帯血造血幹細胞の分離とNOGマウスへの移植:臍帯血CD34陽性細胞、6から8週齢のNOGマウスに尾静脈より投与した。
HIV-1感染実験:移植後、120から150日目のマウスにHIV-1を尾静脈より投与し、経時的にプラズマ中のウイルスコピー数を測定した。
リンパ腫モデルの作成:移植後3ヶ月目および6ヶ月目もEBVをマウス尾静脈から接種した。
T細胞の活性化培養:固相化抗CD3抗体+IL-2刺激により活性化培養した。
結果と考察
1.移植後のマウス末梢血中には、まず初めにB細胞が発生し、その後T細胞が発生する。100日目にはT細胞の割合が上回り、ナイーブT細胞が優位だったためこの時期がHIV-1接種に至適と考えた。
2.HIV-1は移植マウスに全身性慢性感染し、感染後4ヶ月以上高いウイルスコピー数が検出された。マウス末梢血中には、ウイルス特異的抗体が産生されていた。
3.CD4T細胞はHIV-1接種後、エイズ患者と同様に経時的に減少した。
4.移植3ヶ月目にEBVを接種すると高率に日和見リンパ腫と同様なリンパ腫が発生した。
5.感染マウスの末梢血T細胞はHIV-1陰性の状態で活性化増幅が可能だった。作成した日和見リンパ腫モデルを使用し、免疫療法の研究を進めている。
6.移植マウスにはリンパ濾胞様構造が形成されたが、濾胞樹状細胞はマウス由来だった。
結論
NOGマウスを利用したHIV-1の持続感染系の作成法を確立した。感染マウスでは、経時的に末梢血CD4T細胞が減少し、HIV-1特異的抗体が産生されていた。また、マウスにEBVを接種するとエイズ患者に発生する日和見リンパ腫と同様なリンパ腫が誘発された。したがって、本研究により開発したヒト造血幹細胞移植マウスはエイズモデルマウスとして、抗エイズ薬やワクチンおよび免疫療法の開発などに有用である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614087B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト型リンパ濾胞を持つエイズモデルマウスの作成とその応用
課題番号
H16-創薬-106
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
清水 則夫(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 寺嶋 一夫(東京医科歯科大学 医学部)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 医学部)
  • 関根 暉彬(株式会社 リンフォテック)
  • 山本 直樹(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 本多 三男(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト造血幹細胞移植を施した免疫不全マウスNOGに対するHIV-1の感染法と感染マウスの長期維持法を開発し、エイズモデルマウスとして確立することを目的とした。さらに、移植マウスの脾臓に出現するリンパ濾胞様構造の解析とHIV-1感染の影響を解析し、このマウスを利用したエイズ治療薬、ワクチン、免疫療法の開発へ応用する基盤を作成することを目的とした。
研究方法
NOGマウスへのヒト造血幹細胞移植:臍帯血からCD34陽性細胞を分離し、6から8週齢のNOGマウスに尾静脈より投与した。
HIV-1感染実験:マウス尾静脈よりHIV-1を投与し、経時的にプラズマ中のウイルスコピー数を測定した。
リンパ腫モデルの作成:移植後3ヶ月目にEBVをマウス尾静脈から接種した。
T細胞の活性化培養:固相化抗CD3抗体+IL-2刺激により活性化培養した。
結果と考察
1.放射線照射による移植前処置を割愛しても造血幹細胞の生着には影響なく、エイズモデルマウスの要件である長期生存が得られることを見出した。
2.移植マウスには、ヒトB細胞そしてT細胞の順で発生する。100日目にはT細胞の割合が上回り、しかもナイーブT細胞が優位だったためこの時期がHIV-1接種に至適と考えた。
3.HIV-1は移植マウスに全身性慢性感染し、感染後4ヶ月以上高いウイルスコピー数が持続した。マウス末梢血中には、ウイルス特異的抗体が産生されていた。
4.CD4T細胞はHIV-1接種後、エイズ患者と同様に経時的に減少した。
5.EBV感染によりエイズ患者に発生する日和見リンパ腫のモデルを作成した。
6.感染マウスの末梢血T細胞はHIV-1陰性の状態で活性化増幅が可能だった。作成した日和見リンパ腫モデルを使用し、免疫療法の研究を進めている。
7.移植マウスにはリンパ濾胞様構造が形成されたが、濾胞樹状細胞はマウス由来だった。
結論
NOGマウスへの至適なヒト造血幹細胞移植法とHIV-1感染法を開発し、マウスを用いたHIV-1の持続感染系を確立した。感染マウスのCD4T細胞は経時的に減少し、HIV-1特異的抗体が産生されていた。また、移植マウスにEBVを接種するとエイズ患者に発生する日和見リンパ腫と同様なリンパ腫が誘発された。本研究により開発したヒト造血幹細胞移植マウスは、エイズモデルマウスとして抗エイズ薬やワクチンおよび免疫療法の開発などに有用である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614087C

成果

専門的・学術的観点からの成果
最新の免疫不全マウスNOGへの造血幹細胞移植の至適条件を見出し、移植マウスを安定して長期間生存させることが可能になった。移植マウスはHIV-1に感受性であり、感染後HIV-1に対する特異抗体の産生とCD4T細胞の経時的な減少が確認され、エイズモデルマウスとしてエイズの発症機序の解明やウイルスと免疫系との相互作用の研究などに使用できる。また、移植マウスはHIV-1以外にも動物実験系がない他のヒトウイルスの研究に応用可能であり、ウイルス学の進展に大きく寄与するものと期待される。
臨床的観点からの成果
作成したエイズモデルマウスは、エイズ患者に見られるHIV-1の全身性慢性感染、CD4T細胞の経時的減少や免疫応答が再現されることから、抗エイズ薬やワクチン開発へ応用可能である。また、移植マウスにEBウイルス感染により誘発されるリンパ腫を標的としス免疫療法の実験系として、そしてウイルスに対する易感染性や感染抵抗性遺伝子を標的とした遺伝子治療の研究など、従来適当な動物実験系がないため実用化が後れていた様々な先進医療の早期実用化への寄与が期待できる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
日本経済新聞の平成18年11月20日号に「HIV抗体作成に成功 感染研と東京医歯大」「ワクチン開発に道 マウスで感染実験」とのタイトルで掲載された。平成19年2月3日にベルサール西新宿において「造血幹細胞移植と感染症対策:臍帯血移植・エイズ・活性化T細胞輸注療法をめぐって」との題で公開シンポジュームを開催した(主催:財団法人ヒューマンサイエンス振興財団)。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
NOGマウスにヒト臍帯血造血幹細胞を移植しヒトリンパ系を有するヒト化マウスを作製した。このマウスでHIV-1の長期慢性感染、全身感染が成立し新しいHIV-1感染モデルとして様々な研究に応用可能である。
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
頸部の濾胞樹状細胞肉腫例。細胞はCNA42,CD21,CD4,Estrogen R, 接着班, microtubuloreticular構造陽性。ウイルス感染はPCRで陰性だが培養によりVLPを認めた
学会発表(国際学会等)
1件
ヒト臍帯血幹細胞をIL-・2γ鎖__マウスに移入、ヒト血液細胞の分化増殖に成功しT-, M-tropicエイズウイルス感染マウスモデルを世界では初めて樹立。なおヒトFDCを含む胚中心の構築が課題
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成18年度政策創薬総合研究推進事業 研究成果発で臍帯血移植の問題点、臍帯血DLIの基礎研究と臨床パイロット研究、エイズモデルマウスの作製と今後の応用について研究担当者がその成果をわかりやすく解説した

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Satoru Watanabe, Kazuo Terashima, Shinrai Ohta,Shig eo
Long-Lasting HIV-1 Infection with Specific Humoral Immune Responses In Hematopoietic Stem Cell-Engrafted NOD/SCID/IL2RγnullMice
Proceedings of the National Academy Of Science , 109 (1) , 212-218  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-