網羅的遺伝子破壊による真菌症病原性発現の分子機構の解明と新規抗真菌剤開発への応用に関する研究

文献情報

文献番号
200614084A
報告書区分
総括
研究課題名
網羅的遺伝子破壊による真菌症病原性発現の分子機構の解明と新規抗真菌剤開発への応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-101
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
梅山 隆(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日和見感染症を初め、免疫不全による易感染症患者に認められる深在性真菌症は、患者の予後を大きく左右する深刻な感染症である。主要な医真菌であるカンジダやアスペルギルス等に対して、アゾール系薬剤とは異なる作用機作をもち、副作用の少ない新規抗真菌剤の開発が期待されている。本研究課題では、様々な分子生物学ツールを開発することによって病原真菌の基礎研究の進展を促進させる。それとともに、ゲノム情報を基にした網羅的な遺伝子破壊を行い、医真菌の病原因子を同定するとともに、創薬のために、同定した分子に対する特異的阻害剤を探索することを目的としている。
研究方法
C. albicansにおいて既に公開されているゲノムデータベースを基に、目的遺伝子について遺伝子破壊用カセットDNAをPCR法によって作製し、プロモーターをメチオニン・スレオニンの添加によって抑制可能なMET3プロモーターと置換した株を作製した。この株について、遺伝子抑制した際の増殖速度を調べ、遺伝子が生育に必須であるかどうかを確認した。また、二つの相同染色体から完全に遺伝子が欠失した株を取得した。さらに、プロテインキナーゼ以外の遺伝子破壊株について、遺伝子破壊による形態分化への影響を調べた。
結果と考察
プロテインキナーゼ93種類のうち、昨年度の結果から必須であると考えられる21の遺伝子についてMET3プロモーター置換株の作製を試みた。そのうち2種類について生育に必須であることが確認できた。それ以外の19種類のプロテインキナーゼについて、2つの相同染色体部位から完全に欠失した遺伝子破壊株の作製を再度試みた。最終的に、9種類の遺伝子について遺伝子破壊ができなかった。これらの遺伝子は生育に必須である可能性が高い。また、プロテインキナーゼ以外の遺伝子についても、遺伝子破壊株の解析や生化学的解析により抗真菌剤標的候補として考えることのできる遺伝子を数種類見出した。
結論
C. albicansでは困難とされている遺伝子破壊法について簡便に行える系を開発し、様々な遺伝子の遺伝子破壊株を作製した。C. albicansのゲノム上にコードされている全てのプロテインキナーゼ遺伝子について遺伝子破壊を行った。それにより、生育に必須である可能性が高い遺伝子を11種類見出した。また、プロテインキナーゼ以外の遺伝子についても、いくつか抗真菌剤標的候補を見出した。これらの遺伝子を今後詳細に解析することにより抗真菌剤の探索に貢献できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614084B
報告書区分
総合
研究課題名
網羅的遺伝子破壊による真菌症病原性発現の分子機構の解明と新規抗真菌剤開発への応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-101
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
梅山 隆(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日和見感染症を初め、免疫不全による易感染症患者に認められる深在性真菌症は、患者の予後を大きく左右する深刻な感染症である。主要な医真菌であるカンジダやアスペルギルス等に対して、アゾール系薬剤とは異なる作用機作をもち、副作用の少ない新規抗真菌剤の開発が期待されている。本研究課題では、様々な分子生物学ツールを開発することによって病原真菌の基礎研究の進展を促進させる。それとともに、ゲノム情報を基にした網羅的な遺伝子破壊を行い、医真菌の病原因子を同定するとともに、創薬のために、同定した分子に対する特異的阻害剤を探索することを目的としている。
研究方法
C. albicansにおいて既に公開されているゲノムデータベースを基に、プロテインキナーゼをコードする遺伝子93種類について遺伝子破壊用カセットDNAをPCR法によって作製し、網羅的な遺伝子破壊を行った。作製した株について、遺伝子が生育に必須であるかどうか、また、遺伝子破壊が形態分化に影響を与えるかどうかを確認した。さらに、プロテインキナーゼ以外の遺伝子破壊株について、遺伝子破壊による形態分化への影響等を調べた。
結果と考察
プロテインキナーゼ93種類のうち、既に報告されている19種類の遺伝子を除いた遺伝子について破壊を試みた。そのうち、63種類について、何らかの方法で遺伝子破壊株を作製することができた。作製できた株については寒天培地上の形態に与える影響を調べ、基礎研究に活かせるデータを得ることができた。また、破壊株が作製できなかった遺伝子は11種類であった。これらの遺伝子は生育に必須であることが考えられる。また、プロテインキナーゼ以外の遺伝子についても、遺伝子破壊株の解析や生化学的解析により抗真菌剤標的候補として考えることのできる遺伝子を数種類見出した。
結論
C. albicansでは困難とされている遺伝子破壊法について簡便に行える系を開発し、様々な遺伝子の遺伝子破壊株を作製した。C. albicansのゲノム上にコードされている全てのプロテインキナーゼ遺伝子について遺伝子破壊を行った。それにより、生育に必須である可能性が高い遺伝子を11種類見出した。また、プロテインキナーゼ以外の遺伝子についても、いくつか抗真菌剤標的候補を見出した。これらの遺伝子を今後詳細に解析することにより抗真菌剤の探索に貢献できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614084C

成果

専門的・学術的観点からの成果
病原真菌の遺伝子解析を行うためのツールは、本研究以前では非常に少なかった。本研究による分子生物学的ツールや遺伝子破壊法の開発により、病原真菌のポストゲノム解析に大きく寄与できている。また、プロテインキナーゼを中心とした網羅的遺伝子破壊の結果は、カンジダの病原性を解明するための必要なデータとして、今後の研究に大いに役立つ。さらにその結果の一部は、多数の原著論文として発表され、病原真菌の研究の発展に大きく貢献している。
臨床的観点からの成果
カンジダ症を含む深在性真菌症は、日和見感染症として大きな問題となっている。本研究で得られた結果から、これまでとは違った新しい標的分子が同定されている。従来の抗真菌剤に対する耐性問題が大きくなっているので、新しい標的分子に対する阻害剤は、臨床上非常に有用な薬剤となる可能性が高い。新規抗真菌剤の探索、そして薬剤開発と繋がれば、本研究の結果を臨床へと貢献させることができると考えている。
ガイドライン等の開発
現在のところ、行っていない。
その他行政的観点からの成果
高齢化社会において感染症の増加が見込まれる近年において、治療薬・治療方法の選択幅を広め、多剤耐性真菌の増加を抑制するとともに、高齢者の健康を維持していくことに貢献することが期待される。また、医療の高度化に伴って今後臓器移植が増加すると見込まれるが、移植後の感染症コントロールにも新規抗真菌剤の開発研究が必要不可欠であり、国民の医療と健康の向上に貢献できる。
その他のインパクト
現在のところ、特にない。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Umeyama T, Kaneko A, Nagai Y, et al.
Candida albicans protein kinase CaHsl1p regulates cell elongation and virulence.
Molecular Microbiology. , 55 (2) , 381-395  (2005)
原著論文2
Kaneko A, Umeyama T, Hanaoka N, et al.
Tandem affinity purification of the Candida albicans septin protein complex.
Yeast , 21 (12) , 1025-1033  (2004)
原著論文3
Hanaoka N, Umeyama T, Ueno K, et al.
A putative dual-specific protein phosphatase encoded by YVH1 controls growth, filamentation and virulence in Candida albicans.
Microbiology , 151 (7) , 2223-2232  (2005)
原著論文4
Umeyama T, Kaneko A, Watanabe H. et al.
Deletion of the CaBIG1 gene reduces beta-1,6-glucan synthesis, filamentation, adhesion, and virulence in Candida albicans.
Infection and Immunity , 74 (4) , 2373-2381  (2006)
原著論文5
Murayama SY, Negishi Y, Umeyama T, et al.
Construction and functional analysis of fatty acid desaturase gene disruptants in Candida albicans.
Microbiology , 152 (5) , 1551-1558  (2006)
原著論文6
Umeyama T, Kaneko A, Niimi M, et al.
Repression of CDC28 reduces the expression of the morphology-related transcription factors, Efg1p, Nrg1p, Rbf1p, Rim101p, Fkh2p and Tec1p and induces cell elongation in Candida albicans.
Yeast , 23 (7) , 537-552  (2006)
原著論文7
Kaneko A, Umeyama T, Utena-Abe Y, et al.
Tcc1p, a novel protein containing the tetratricopeptide repeat motif, interacts with Tup1p to regulate morphological transition and virulence in Candida albicans.
Eukaryotic Cell , 5 (11) , 1894-1905  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-