遺伝子修飾による樹状細胞の機能強化に基づいた新規癌免疫療法の開発

文献情報

文献番号
200614082A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子修飾による樹状細胞の機能強化に基づいた新規癌免疫療法の開発
課題番号
H16-創薬-099
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 直貴(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、樹状細胞(DC)への遺伝子導入効率に優れるRGDファイバーミュータントアデノウイルスベクター(AdRGD)を駆使することによって、TNF関連分子(LIGHT)遺伝子を導入したDCの免疫学的機能を解析し、腫瘍免疫誘導能に優れたDC医薬の創製に関する基礎的情報の収集を図った。
研究方法
AdRGDを用いてLIGHT遺伝子を導入したDC(LIGHT/DC)を作製し、in vitro培養系において腫瘍細胞傷害活性およびT細胞増殖刺激活性を評価した。また、担癌マウスに腫瘍内投与したLIGHT/DCの抗腫瘍効果、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能、およびリンパ節移行性について解析した。
結果と考察
LIGHT/DCは、遺伝子導入していないDCおよびルシフェラーゼ遺伝子導入DCと比較して、高い腫瘍細胞傷害作用、同程度の抗原貪食能、およびT細胞増殖刺激能の著しい増強を示した。また、あらかじめ生着させた腫瘍内にLIGHT/DCを投与することによって、腫瘍特異的CTLの効率的な誘導に基づく強力な抗腫瘍効果が発揮された。さらに、LIGHT/DCは、コントロールDCと比較して、投与した腫瘍組織から所属リンパ節への移行性に優れていた。したがって、LIGHT/DCは腫瘍免疫誘導に関わる過程を多段階に促進できる能力を備えており、定着腫瘍治療に有効なDC癌免疫療法の開発において極めて有望なDC医薬となることが示唆された。
結論
LIGHT分子の機能を付与したDC医薬は、DC癌免疫療法の適応を転移・再発予防のみならず、定着腫瘍治療へも拡大できる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614082B
報告書区分
総合
研究課題名
遺伝子修飾による樹状細胞の機能強化に基づいた新規癌免疫療法の開発
課題番号
H16-創薬-099
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 直貴(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、樹状細胞(DC)への遺伝子導入効率に優れるRGDファイバーミュータントアデノウイルスベクター(AdRGD)を駆使することによって、種々の機能分子遺伝子を導入したDCを創製し、これら遺伝子改変DCの免疫学的特性および癌免疫療法における有用性を精査した。
研究方法
AdRGDを用いて、ケモカイン、ケモカインレセプター、サイトカイン、リンパ球機能分子、およびアポトーシス抑制分子の各遺伝子発現カセットを搭載した23種類のAdRGDを用いて遺伝子改変DCを創製し、それらの免疫学的特性ならびにワクチン機能を精査した。その中から、ケモカインレセプター (CCR7) 遺伝子、アポトーシス抑制分子 (Bcl-xFNK) 遺伝子、あるいはTNF関連分子 (LIGHT) 遺伝子を導入したDCについて、抗腫瘍効果と作用機序の連関をより詳細に解析した。
結果と考察
CCR7遺伝子の導入はDCの所属リンパ節への移行性を促進し、Bcl-xFNK遺伝子の導入はDCの生体内寿命を延長し、LIGHT遺伝子の導入はDCのT細胞増殖刺激能を増強することによって、DC癌免疫療法の有効性を大幅に改善できることが明らかとなった。本研究で得られた知見に基づいて、今後、より有効かつ安全なDC癌免疫療法の開発に貢献しうるDC医薬の設計・創製を進めていきたいと考えている。
結論
AdRGDを用いたDCの遺伝子工学的な機能修飾が、腫瘍免疫誘導能に優れるDC医薬の創製に極めて有用性の高いアプローチであることを実証した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614082C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現在、腫瘍関連抗原を導入した樹状細胞(DC)を『nature's adjuvant』として用いる癌免疫療法が活発に研究されており、細胞医薬として投与されるDCの腫瘍免疫誘導能を最大限に発揮させる方法論の確立が望まれている。本研究では、RGDファイバーミュータントアデノウイルスベクター(AdRGD)を活用した遺伝子修飾によるDCへの機能付与が、DC癌免疫療法の有効性改善に繋がるDC医薬の創製に非常に有用なアプローチであることを実証した。
臨床的観点からの成果
本研究では、遺伝子修飾によってDC医薬の生体内分布・生体内寿命等を制御することが可能であり、これらのアプローチがDC癌免疫療法の最適化に有効であることを示した。このように細胞医薬の体内動態を制御することによって治療効果の向上を図る独自の方法論は、DC癌免疫療法のみならず再生療法などを含む細胞療法全般への展開が期待され、本研究成果は細胞療法の臨床応用実現に向けて貴重な基礎的情報を提供するものと考える。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
該当なし。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Naoki Okada, Naoki Mori, Ryosuke Koretomo, et al.
Augmentation of the migratory ability of DC-based vaccine into regional lymph nodes by efficient CCR7 gene transduction
Gene Ther. , 12 (2) , 129-139  (2005)
原著論文2
Naoki Okada, Sayaka Iiyama, Yuka Okada, et al.
Immunological properties and vaccine efficacy of murine dendritic cells simultaneously expressing melanoma-associated antigen and interleukin-12
Cancer Gene Ther. , 12 (1) , 72-83  (2005)
原著論文3
Naoki Okada, Jian-Qing Gao, Akinori Sasaki, et al.
Anti-tumor activity of chemokine is affected by both kinds of tumors and the activation state of the host's immune system: implications for chemokine-based cancer immunotherapy
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 317 (1) , 68-76  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-