LEE遺伝子群非保有型腸管出血性大腸菌の疫学マーカーおよび新規治療薬の標的となる病原性遺伝子に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
200614081A
報告書区分
総括
研究課題名
LEE遺伝子群非保有型腸管出血性大腸菌の疫学マーカーおよび新規治療薬の標的となる病原性遺伝子に関する基礎的研究
課題番号
H16-創薬-098
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫田 淳(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本国内における腸管出血性大腸菌 (EHEC) による感染症は依然として年間二千例を超える数が報告されており、公衆衛生上の大きな問題点となっている。これまでの我々の研究から、三大血清群O157, O26, O111以外のEHECの約4割は、多くのEHECが保有するLEE (locus of enterocyte effacement) と呼ばれる病原性遺伝子群を保有しない、非保有型のEHEC (LEE-negative EHEC: LN-EHEC) であることが判明している。LN-EHECの保有する病原性因子については未だ不明な点が多く、その分布状況も不明である。本研究では、LN-EHECにおける病原性遺伝子の保有状況、血清型について解析を進めると共に、それらが保有する新規病原性因子、特に初期接着に関わる因子を同定し、これらがLN-EHECにおける疫学マーカーや新規抗菌剤あるいはワクチンの標的となり得る可能性について基礎的な解析を行うことを目的とする。
研究方法
血清型別よって三大血清群以外のEHECを抽出し、既知の病原性遺伝子の分布および培養細胞への接着能を解析する。新規病原性因子、特に接着因子について遺伝学的手法を用いて明らかにすると共に、新規接着遺伝子の分布・系統解析を行う。
結果と考察
新規接着因子EibGの分布解析から、EibGはLN-EHECに特異的に見出される接着因子であることが判明した。EibGを保有するLN-EHEC株の多くは血清群O91に属し、大腸菌の系統AまたはB1に属することが判明した。EibGに対する3種類のペプチド抗体を用いて接着防御実験を行ったが、細胞接着は阻害されなかった。EibGの特徴であるIgG結合活性はEibGを保有しない多くのLN-EHEC株にも見出された。既知のeib遺伝子に共通な配列を元にPCRプライマーデザインし、新規のIgG結合蛋白質をコードする遺伝子をクローニングした。その結果、少なくとも6つの新規Eib蛋白質をコードする遺伝子がLN-EHEC株に存在することが明らかとなった。
結論
LN-EHECの多くの株はIgG結合活性を持つ蛋白質をコードしており、Eib蛋白質はこれまでに同定されたEibA,C,D,E,F,G以外にも少なくとも6つ存在することが明らかとなった。Eib蛋白質はLN-EHEC株に特異的に存在する接着因子の一つである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614081B
報告書区分
総合
研究課題名
LEE遺伝子群非保有型腸管出血性大腸菌の疫学マーカーおよび新規治療薬の標的となる病原性遺伝子に関する基礎的研究
課題番号
H16-創薬-098
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫田 淳(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腸管出血性大腸菌 (EHEC) による感染症は依然として公衆衛生上の大きな問題となっている。これまでの我々の研究から、三大血清群O157, O26, O111以外のEHECの約4割は、多くのEHECが保有するLEE (locus of enterocyte effacement) と呼ばれる病原性遺伝子群を保有しない、非保有型のEHEC (LEE-negative EHEC: LN-EHEC) であることが判明している。LN-EHECの保有する病原性因子については未だ不明な点が多く、その分布状況も不明である。本研究では、LN-EHECにおける病原性遺伝子の保有状況、血清型について解析を進めると共に、それらが保有する新規病原性因子、特に初期接着に関わる因子を同定し、これらがLN-EHECにおける疫学マーカーや新規抗菌剤あるいはワクチンの標的となり得る可能性について基礎的な解析を行うことを目的とした。
研究方法
血清型別よって三大血清群以外のEHECを抽出し、既知の病原性遺伝子の分布および培養細胞への接着能を解析する。新規病原性因子、特に接着因子について遺伝学的手法を用いて明らかにすると共に、新規接着遺伝子の分布・系統解析を行う。
結果と考察
LN-EHEC株の培養細胞への接着形態をHEp-2細胞で解析したところ、菌体同士が鎖状に繋がり、培養細胞へ強固に接着している形態を示す(Chain-like adhesion:CLA)一群の株の存在が明らかとなった。CLAの表現型を担う接着因子として、大腸菌のIgG結合蛋白質と相同性の高い新規接着因子EibGを遺伝学的手法により同定した。これまでのところEibGはLN-EHECにのみ存在し、その多くは血清群O91に属する。EibGに対する3種類のペプチド抗体を作製し、細胞接着阻害実験を行ったが、これらのペプチドまたはペプチド抗体では細胞への接着は阻害されなかった。EibGを持たないLN-EHEC株でIgG結合活性を持つものが少なくとも40株存在し、このうちの6株には新規のEib蛋白質が存在することが明らかとなった。
結論
LN-EHECの多くの株はIgG結合活性を持つ蛋白質をコードしており、Eib蛋白質はこれまでに同定されたEibA,C,D,E,F,G以外にも少なくとも6つ存在することが明らかとなった。Eib蛋白質はLN-EHEC株に特異的に存在する接着因子の一つである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614081C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HEp-2細胞へ特徴的な接着パターンで、かつ強固に接着する一群のLEE遺伝子群非保有型腸管出血性大腸菌が保有する新規接着因子を遺伝学的手法によって同定したところ、大腸菌の免疫グロブリン結合蛋白質(E. coli immunoglobulin binding protein: Eib)と高い相同性を示した。EibGを発現するプラスミドで形質転換した大腸菌実験室株はHEp-2細胞へ特徴的かつ強固に接着可能となることから、EibGはIgG結合性の接着因子として機能していると結論された。
臨床的観点からの成果
既知のeib(eibA,C,D,E,F)およびeibGに共通なPCR検出系を構築した。この検出系によって、LEE非保有型EHECの約2割の株にeib遺伝子が存在することが明らかとなり、これらの株はEibを接着因子として宿主細胞へ接着している可能性が示唆された。Eib蛋白質の特徴である免疫グロブリン結合活性はeib遺伝子が検出されないLEE非保有型EHEC株においても多数検出されることから、これらの蛋白質は新規ワクチンの標的蛋白質及び疫学マーカとして今後の臨床応用が期待される。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Iyoda S, and Watanabe H.
Positive effects of multiple pch genes on expression of the locus of enterocyte effacement genes and adherence of enterohaemorrhagic Escherichia coli O157 : H7 to HEp-2 cells.
Microbiology , 150 (7) , 2357-2571  (2004)
原著論文2
Iyoda S, Watanabe H.
ClpXP protease controls expression of the type III protein secretion system through regulation of RpoS and GrlR levels in enterohemorrhagic Escherichia coli.
J Bacteriol. , 187 (12) , 4086-4094  (2005)
原著論文3
Toma C, Higa N, Iyoda S, et al.
The long polar fimbriae genes identified in Shiga toxin-producing Escherichia coli are present in other diarrheagenic E. coli and in the standard E. coli collection of reference (ECOR) strains.
Res Microbiol. , 157 (2) , 153-161  (2006)
原著論文4
Iguchi A, Iyoda S, Terajima J, et al.
Spontaneous recombination between homologous prophage regions causes large-scale inversions within the Escherichia coli O157:H7 chromosome.
Gene , 372 , 199-207  (2006)
原著論文5
Iyoda S, Koizumi N, Satou H, et al.
The GrlR-GrlA regulatory system coordinately controls the expression of flagellar and LEE-encoded type III protein secretion systems in enterohemorrhagic Escherichia coli.
J Bacteriol. , 188 (16) , 5682-5692  (2006)
原著論文6
Lu Y, Iyoda S, Satou H, et al.
A new immunoglobulin-binding protein, EibG, is responsible for the chain-like adhesion phenotype of locus of enterocyte effacement-negative, shiga toxin-producing Escherichia coli.
Infect Immun. , 74 (10) , 5747-5755  (2006)
原著論文7
Iguchi A, Iyoda S, Watanabe H, et al.
O side chain deficiency enhances sensitivity of Escherichia coli to Shiga toxin 2-converting bacteriophages.
Curr Microbiol. , 54 (1) , 14-19  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-