薬剤排出トランスポーターの基質輸送メカニズムに関する研究

文献情報

文献番号
200614080A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤排出トランスポーターの基質輸送メカニズムに関する研究
課題番号
H16-創薬-097
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 公一(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
真菌症治療薬の開発を目標として、病原真菌の多剤耐性に関わるATP binding cassette(ABC)タンパク質の生化学的、酵素化学的性質を明らかにする。
研究方法
病原真菌Candida albicansのABCタンパク質Cdr1pとCdr2pのアミノ酸配列は相同性が高いが、異なる基質特異性を有している。この二つのABCタンパク質間でドメインを交換したキメラタンパク質を作製し、薬剤感受性試験を行うことで基質認識に関わるドメインを同定し、薬剤結合部位を同定する。また、特異的な阻害剤との相互作用、酵素活性の変化についても検討する。
結果と考察
Candida albicans Cdr1pとCdr2pの各ドメインを交換したキメラタンパク質を出芽酵母において大量発現させた。いずれのキメラタンパク質も野生型のCdr1p、Cdr2pと同程度に発現しており、蛍光顕微鏡観察によるタンパク質の細胞内局在にも大きな障害は認められなかった。また、発現させたキメラタンパク質の酵素活性(ATPase活性)を測定した結果、いずれのタンパク質も活性を保持していることを明らかにした。一般的にドメイン交換解析は、発現したタンパク質が活性を失っていることも多いが、本研究ではアミノ酸配列に高い相同性があり、共通した立体構造をとると予測されるタンパク質を用いたことから、タンパク質発現に成功したものと考えられる。キメラタンパク質発現株の抗真菌薬や抗癌剤を含む種々の化合物に対する薬剤感受性試験と活性阻害剤感受性試験の結果、膜貫通ドメインおよびドメイン間の相互作用が基質特異性を決定していることを明らかにした。この結果は、これまでのABCタンパク質の基質認識機構に新たな知見を加えるものである。
結論
Candida albicansのCdr1pとCdr2pのドメインを交換したキメラタンパク質を出芽酵母で発現させて、機能解析を行った。その結果、細胞質ドメインは輸送基質の認識には関与しておらず、膜貫通ドメインとドメイン間の相互作用が基質特異性を決定していることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614080B
報告書区分
総合
研究課題名
薬剤排出トランスポーターの基質輸送メカニズムに関する研究
課題番号
H16-創薬-097
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 公一(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
真菌症治療薬の開発を目標として、病原真菌の多剤耐性に関わるATP binding cassette(ABC)タンパク質の生化学的、酵素化学的性質を明らかにする。
研究方法
(1) ABCタンパク質の発現に用いる出芽酵母株にsec6-4遺伝子変異を導入し、制限温度において分泌小胞を細胞内に蓄積するような変異株を作製する。この細胞株に病原真菌のABCタンパク質を発現させて、分泌小胞を調製する。調製された小胞を用いた薬剤排出アッセイ系を確立する。(2) 病原真菌Candida albicansのCdr1pとCdr2pのドメインを交換したキメラタンパク質を作製し、機能解析を行うことで、基質認識に関わるドメインを同定し、薬剤結合部位を同定する。
結果と考察
(1) Sec6pタンパク質の挙動およびsec6-4遺伝子変異について詳細に解析をすすめた。sec6-4変異を有するSY1株のSEC6遺伝子配列情報より、部位特異的変異導入と遺伝学的解析を行い、L633Pが表現型の本体であることを明らかにした。また、Sec6pもしくはSec6-4pをGFP融合タンパク質として出芽酵母に発現させて、局在を観察した。Sec6pは主に出芽根部分に局在し、温度上昇に影響を受けないが、Sec6-4pは37℃においては細胞内に蓄積するような局在を示した。この局在の変化が開口分泌における障害を引き起こしていると考えられる。(2) Cdr1pとCdr2pの各ドメインを交換したキメラタンパク質を出芽酵母において大量発現させて機能解析を行った。抗真菌薬や抗癌剤を含む種々の化合物に対する薬剤感受性試験と活性阻害剤感受性試験の結果、膜貫通ドメインおよびドメイン間の相互作用が基質特異性を決定していることを明らかにした。この結果は、これまでのABCタンパク質の基質認識機構に新たな知見を加えるものである。
結論
病原真菌の薬剤排出ポンプ、ABCタンパク質の酵素化学的解析を行うために、分泌小胞を用いた新規実験系を構築した。ABCタンパク質を含む膜タンパク質を分泌小胞に大量に発現させられる酵母株を構築できた。また、Candida albicansのCdr1pとCdr2pのキメラタンパク質を出芽酵母に発現させて機能解析を行った。膜貫通ドメインとドメイン間の相互作用が基質特異性を決定していることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614080C

成果

専門的・学術的観点からの成果
病原真菌の抗真菌薬耐性の原因である薬剤排出ポンプ、ABCタンパク質の出芽酵母発現系を構築し、基質認識の分子メカニズムを明らかにした。分泌小胞を蓄積するような酵母株を作製し、出芽酵母上にABCタンパク質を大量発現させることに成功した。また、基質特異性の異なるふたつのABCタンパク質のドメイン交換解析を行い、基質認識に複数のドメインの組み合わせが関与していることを明らかにした。本研究成果はABCタンパク質のより詳細な分子メカニズムの解明に大きく貢献するものと期待できる。
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-