ヒトの薬物体内動態の予測向上を目指した薬物代謝酵素および薬物トランスポーターの誘導に関するインシリコ予測

文献情報

文献番号
200614079A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトの薬物体内動態の予測向上を目指した薬物代謝酵素および薬物トランスポーターの誘導に関するインシリコ予測
課題番号
H16-創薬-096
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小林 カオル(千葉大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
P450および薬物トランスポーターの発現に関与する核内タンパク(pregnane X receptor, PXR)のリガンド結合ポケット内のアミノ酸置換体を用いた検討およびコンピューター予測によりPXRのリガンド結合様式を推定することを目的とした。
研究方法
PXRのアミノ酸置換体の作成はsite-directed mutagenesis法により行った。PXR活性の測定はレポーターアッセイにより行い、ヒト肝がん由来細胞 (FLC7) にレポーターベクターと野生型あるいは変異型PXR発現ベクターを導入し、リガンド曝露後のルシフェラーゼ活性を測定した。PXRのリガンド結合様式は、リガンドの構造安定化計算を行った後、X線結晶解析により得られたPXR構造とのドッキングを行うことにより推定した。
結果と考察
野生型および27種類の置換型PXRを用いたレポーターアッセイにより、13種類の化合物によるPXRの活性化におよぼすアミノ酸置換の影響を検討し、PXRの活性化に関与するアミノ酸残基は化合物により異なることを明らかにした。PXRリガンドの一つであるクロトリマゾールに関しては、PXRの活性化がL240、L411、I414、F420およびF429のアミノ酸置換により著しく減弱した。これらの残基はPhe420を中心に比較的近い位置にあり、S247、L411、I414、L240およびF420がクロトリマゾールとの相互作用に関与することが示唆された。ニフェジピンに関しては、PXRの活性化がV211、L240、W299、H327、L411、F420およびF429のアミノ酸置換により著しく減弱した。分子サイズの小さいニフェジピンは、これら全ての残基と同時に相互作用することは困難であり、F420を中心とする結合様式とW299を中心とする結合様式の二つが推定された。以上より、PXRのリガンド結合に関与するアミノ酸残基は化合物によって異なり、リガンドによってはPXRとの結合に複数の結合様式が存在する可能性が示唆された。
結論
本研究では、リガンド結合ポケット内のアミノ酸残基を置換することにより、化合物によるPXR活性化への影響を検討し、その結果に基づいてリガンド結合様式を推定した。この手法により推定したリガンド結合様式は、PXRのリガンド結合を予測する上で有用な知見になると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614079B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒトの薬物体内動態の予測向上を目指した薬物代謝酵素および薬物トランスポーターの誘導に関するインシリコ予測
課題番号
H16-創薬-096
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小林 カオル(千葉大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
P450および薬物トランスポーターの誘導を引き起こす可能性のある化合物と核内タンパク(pregnane X receptor, PXR)との相互作用を予測することにより、ヒトの薬物体内動態の予測を向上させることを目的とした。
研究方法
PXRのアミノ酸置換体の作成はsite-directed mutagenesis法により行った。PXR活性の測定はレポーターアッセイにより行い、ヒト肝がん由来細胞 (FLC7) にレポーターベクターと野生型あるいは変異型PXR発現ベクターを導入し、リガンド曝露後のルシフェラーゼ活性を測定した。PXRのリガンド結合様式は、リガンドの構造安定化計算を行った後、X線結晶解析により得られたPXR構造とのドッキングを行うことにより推定した。
結果と考察
8種のバルビツール酸誘導体を対象として、化合物の構造的特徴とPXRの活性化作用との関係について検討し、PXRの活性化に重要となる化合物の構造を明らかにした。また、野生型および27種類の置換型PXRを用いたレポーターアッセイにより、13種類の化合物によるPXRの活性化におよぼすアミノ酸置換の影響を検討し、PXRの活性化に関与するアミノ酸残基は化合物により異なることを明らかにした。さらに、PXRリガンドの一つであるクロトリマゾールによるPXR活性化がL240、L411、I414、F420およびF429のアミノ酸置換により著しく減弱した結果に基づき、クロトリマゾールがS247、L411、I414、L240およびF420と相互作用する結合様式を推定した。ニフェジピンに関しては、PXRの活性化がV211、L240、W299、H327、L411、F420およびF429のアミノ酸置換により著しく減弱した。分子サイズの小さいニフェジピンは、これら全ての残基と同時に相互作用することは困難であり、F420あるいはW299を中心とする二つの結合様式が推定された。
結論
本研究では、構造類似化合物によるPXR活性化作用を比較することにより、PXR活性化に重要な化合物の構造を明らかにした。さらに、リガンド化合物によるPXR活性化に及ぼすリガンド結合ポケット内のアミノ酸置換の影響を検討し、その結果に基づいてリガンド結合様式を推定した。この手法により推定したリガンド結合様式は、PXRのリガンド結合を予測する上で有用な知見になると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614079C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今回の研究により、アミノ酸置換体を用いた検討とインシリコでのドッキングにより化合物のタンパク結合様式が予測可能であることが示唆された。多種の化合物についてX線結晶解析からタンパク結合様式を予測ことは現実的ではない。従って、構造の異なる多種の化合物をリガンドとするPXRについて、X線結晶解析を行わずにタンパク結合様式を推定する手法を見いだした今回の成果は学術的に有益であると考えられる。
臨床的観点からの成果
新規医薬品の開発において、PXRリガンドとなるか否かを予測することは、薬物間相互作用の回避あるいは新規医薬品の選択に有益となる。今回検討した手法を用いて結合様式を推定することにより、目的に応じた化合物の構造決定に有益な情報を与え、医療経済の軽減に貢献できるものと考えられる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
45. Shimizu T, Akimoto K, Yoshimura T et al.
Autoinduction of MKC-963 [(R)-1-(1-cyclohexylethylamino)-4-phenylphthalazine] metabolism in healthy volunteers and its retrospective evaluation using primary human hepatocytes and cDNA-expressed enzymes.
Drug Metab Dispos , 34 , 950-954  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-