向精神薬のSNPs解析による有効性・安全性に関する研究

文献情報

文献番号
200614078A
報告書区分
総括
研究課題名
向精神薬のSNPs解析による有効性・安全性に関する研究
課題番号
H16-創薬-095
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 亮太(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、抗精神病薬、気分安定薬そして抗うつ薬の治療反応性と重大な副作用と関連する遺伝的要因について明らかにすることで、オーダーメード医療の実現に向けた知見を得ることを目的とする。
研究方法
 国立精神・神経センター武蔵病院にて、統合失調症、躁うつ病、うつ病の患者様をリクルートし、向精神薬の有効性や副作用などの薬物応答のデータを収集し、精神疾患に関連する遺伝子を新たに同定し、薬物応答と遺伝子多型との関連を検討した。本研究は、国立精神・神経センター武蔵地区倫理審査委員会において承認を受けており、それに基づいて、試料提供者への説明とインフォームド・コンセント、個人情報の厳重な管理(匿名化)などを徹底させた。
結果と考察
 統合失調症とPACAP遺伝子、ALK遺伝子の関連、うつ病とDISC1遺伝子との関連を報告した。これらの遺伝子は我々のサンプルにおいてそれぞれの疾患との関連が認められたが、他の日本人のサンプルまたは他の人種におけるサンプルで追試研究を行い、結果を確認する必要があると考えられる。
 薬物応答性と遺伝子多型との関連については、気分安定薬であるリチウムの維持療法の効果について検討を行った。BDNFのVal66met多型との関連が認められないこと、XBP1-116G/C多型と関連することをすでに報告しているが、それに加えてBCRのAsn796Ser多型と関連することを見出した。双極性障害との関連について、BDNFのVal66Metに関しては、日本人サンプルにおいては関連が認められていない。逆に、XBP1に関しては、日本人サンプルで双極性障害との関連が報告され、海外での追試研究の結果は否定的であった。BCR遺伝子は我々のグループが世界ではじめて双極性障害との関連を報告した。日本人において疾患との関連が認められたXBP1とBCRのみで治療反応性と関連が認められたことは、人種差によるものと考えられる。
結論
 これらの科学的検査法を組み合わせた解析が客観的診断法開発の糸口となり、国民の健康・福祉・医療に貢献すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614078B
報告書区分
総合
研究課題名
向精神薬のSNPs解析による有効性・安全性に関する研究
課題番号
H16-創薬-095
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 亮太(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、抗精神病薬、気分安定薬そして抗うつ薬の治療反応性と重大な副作用と関連する遺伝的要因について明らかにすることで、オーダーメード医療の実現に向けた知見を得ることを目的とする。
研究方法
 国立精神・神経センター武蔵病院にて、統合失調症、躁うつ病、うつ病の患者様をリクルートし、向精神薬の有効性や副作用などの薬物応答のデータを収集し、精神疾患に関連する遺伝子を新たに同定し、薬物応答と遺伝子多型との関連を検討した。本研究は、国立精神・神経センター武蔵地区倫理審査委員会において承認を受けており、それに基づいて、試料提供者への説明とインフォームド・コンセント、個人情報の厳重な管理(匿名化)などを徹底させた。
結果と考察
 統合失調症とディスバインジン遺伝子、PACAP遺伝子、ALK遺伝子、Chimerin2遺伝子の関連、双極性障害とBCR遺伝子(特許出願)、BDNF遺伝子との関連、うつ病とp75、GMIP遺伝子、DISC1遺伝子との関連を報告した。これらの遺伝子は我々のサンプルにおいてそれぞれの疾患との関連が認められたが、他の日本人のサンプルまたは他の人種におけるサンプルで追試研究を行い、結果を確認する必要があると考えられる。
 薬物応答性と遺伝子多型との関連については、気分安定薬であるリチウムの維持療法の効果について検討を行った。BDNFのVal66met多型との関連が認められないこと、XBP1-116G/C多型と関連すること、そしてBCRのAsn796Ser多型と関連することを見出した。双極性障害との関連について、BDNFのVal66Metに関しては、日本人サンプルにおいては関連が認められていない。逆に、XBP1に関しては、日本人サンプルで双極性障害との関連が報告され、海外での追試研究の結果は否定的であった。BCR遺伝子は我々のグループが世界ではじめて双極性障害との関連を報告した。日本人において疾患との関連が認められたXBP1とBCRのみで治療反応性と関連が認められたことは、人種差によるものと考えられる。
結論
 これらの科学的検査法を組み合わせた解析が客観的診断法開発の糸口となり、国民の健康・福祉・医療に貢献すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614078C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 統合失調症とディスバインジン遺伝子、PACAP遺伝子、ALK遺伝子、Chimerin2遺伝子の関連、双極性障害とBCR遺伝子(特許出願)、BDNF遺伝子との関連、うつ病とp75、GMIP遺伝子、DISC1遺伝子との関連を報告した。これらの成果は、精神疾患の臨床遺伝学分野において学術的に大変意義深いものである。今後、他の日本人のサンプルまたは他の人種におけるサンプルで追試研究を行い、結果を確認することが重要であろう。
臨床的観点からの成果
 気分安定薬であるリチウムの維持療法の効果について検討を行い、XBP1遺伝子の-116G/C多型やBCR遺伝子のAsn796Ser多型と関連することを見出した。どちらの遺伝子も、日本人サンプルにおいて双極性障害との関連が報告されている。一方、BDNF遺伝子のVal66Met多型はリチウムの治療反応性と関連がなく、日本人双極性障害との関連も認められなかった。このことは、治療反応性にも人種差があることを示唆し、日本における臨床薬理学的検討が必要であることが示された。
ガイドライン等の開発
 全国的な共同研究組織(気分安定薬治療反応性共同研究プロジェクト)を構築し、そこでリチウムの治療反応性の基準についてのガイドラインを作成した。今後、この基準を用いた研究が全国で展開されることが期待される。
その他行政的観点からの成果
 該当なし
その他のインパクト
 該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hashimoto R, Numakawa T, Ohnishi T, et al.
Impact of the DISC1 Ser704Cys polymorphism on risk for major depression, brain morphology, and ERK signaling.
Hum Mol Genet. , 15 , 3024-3033  (2006)
原著論文2
Masui T, Hashimoto R, Kusumi I, et al.
Lithium response and Val66Met polymorphism of the BDNF gene in Japanese patients with bipolar disorder.
Psychiatr Genet. , 16 (2) , 49-50  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-