吸血昆虫唾液腺生理活性物質の特性解明と創薬への応用に関する研究

文献情報

文献番号
200614076A
報告書区分
総括
研究課題名
吸血昆虫唾液腺生理活性物質の特性解明と創薬への応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-093
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
伊澤 晴彦(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、吸血性昆虫や吸血性ダニの唾液腺に含まれ、動物の血液や血管系あるいは皮下組織に特異的に作用する新規生理活性物質を網羅的に探索し、それらの分子構造・活性特性・作用メカニズムを解明し、これら有用活性分子を新規な医薬の素材として開発・利用することを目的とする。
研究方法
病原体媒介ベクターである吸血性節足動物(蚊・サシガメ・マダニ)を研究材料とした。まず、様々な吸血生態を持つ各種吸血性節足動物の唾液腺遺伝子の大量解析を行い、遺伝子構造を指標にした唾液腺発現遺伝子の分類・整理を行い、唾液腺に含まれる生理活性分子を包括的に解析した。次に主要なものに対して組換え蛋白質を作製し、これらを用いて血液や血管系に対する活性特性をin vitroで調べることにより、新規生理活性分子を同定することを試みた。
結果と考察
各種吸血性節足動物の唾液腺発現遺伝子の大量解析によって同定された生理活性分子候補遺伝子の中から、主だった遺伝子の組換え蛋白質を作製し、これらを用いて新規生理活性分子の探索を行った。今年度は、特に血液凝固と血小板凝集の2つの重要な生理反応に対する阻害効果に注目して解析した。その結果、各種吸血性節足動物の唾液腺から、カリクレイン-キニン系(接触相)阻害物質、血小板凝集阻害物質、トロンビン阻害物質など、いくつかの興味深い新規生理活性物質が同定された。これら活性分子は唾液腺に蓄えられ、吸血時に唾液と共に宿主に注入され、動物体内で起こる不都合な生体反応を阻止する役割を持つと考えられた。同定された生理活性分子のほとんどは、分子構造が特徴的であり、標的分子に対してこれまでに報告のないユニークな阻害作用機序を有することが、in vitroの再構成系を用いた実験等で明らかとなった。また、活性に直接関わる最小機能部位の特定にも一部の分子において成功し、その作用機構を分子レベルで明らかにした。
結論
吸血昆虫・ダニの唾液腺で発現し、血液・血管系に特異的に作用すると考えられる新規生理活性分子(カリクレイン-キニン系(接触相)阻害物質、血小板凝集阻害物質、トロンビン阻害物質)が同定され、これら新規活性分子と標的分子の具体的な相互作用部位とその結合様式の特性が明らかとなった。これらユニークな特性を利用した新規創薬のリード分子への応用・開発を検討していくことが今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614076B
報告書区分
総合
研究課題名
吸血昆虫唾液腺生理活性物質の特性解明と創薬への応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-093
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
伊澤 晴彦(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、吸血性昆虫や吸血性ダニの唾液腺に含まれ、動物の血液や血管系あるいは皮下組織に特異的に作用する新規生理活性物質を網羅的に探索し、それらの分子構造・活性特性・作用メカニズムを解明し、これら有用活性分子を新規な医薬の素材として開発・利用することを目的とした。
研究方法
病原体媒介ベクターとして重要な吸血性節足動物(蚊・サシガメ・マダニ)を研究材料とした。まず、様々な吸血生態を持つ各種吸血性節足動物の唾液腺遺伝子の大量解析を行い、遺伝子配列を指標にした唾液腺発現遺伝子の分類・整理を行い、唾液腺に含まれる生理活性分子を包括的に解析した。次に主要なものに対して組換え蛋白質を作製し、その活性特性をin vitroで調べることにより、血液・血管系に作用する新規生理活性分子を同定することを試みた。
結果と考察
蚊・サシガメ・マダニからそれぞれ数百から数千個の唾液腺cDNAの塩基配列を決定した。これら唾液腺cDNAデータベースの解析から、各生物種の唾液腺特異的な分泌型蛋白質が複数同定された。これら分子の組換え蛋白質を用いて生理活性のスクリーニングを行った結果、カリクレイン-キニン系(接触相)阻害物質、血小板凝集阻害物質、トロンビン阻害物質など、新規生理活性物質が複数見いだされた。これら活性分子は唾液腺に蓄えられ、吸血時に唾液と共に宿主に注入され、動物体内で起こる不都合な生体反応を阻止する役割を持つと考えられた。これら同定された生理活性分子は、そのほとんどが標的分子に対してこれまでに報告のないユニークな阻害作用機序を持つことがin vitro再構成系等の諸実験で明らかとなった。さらに、活性に直接関わる機能部位と標的部位の特定にも一部の活性分子において成功し、その作用機構を分子レベルで明らかにすることができた。
結論
本研究での遺伝子大量解析手法では、少ない初期材料から効率的に多種多様な生理活性候補分子を得ることが可能であった。これら分子を用いて生理活性のスクリーニングを行ったところ、血液・血管系に特異的に作用すると考えられる新規生理活性分子が複数同定された。新規活性分子と標的分子の具体的な相互作用部位とその結合様式の特性の解析から、これら活性分子の特異な作用機構を分子レベルで明らかにすることができ、新規医薬の素材物質としての有用性を示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614076C

成果

専門的・学術的観点からの成果
吸血昆虫・ダニ唾液腺より、血液凝固阻害物質や血小板凝集阻害物質など、いくつかの新規生理活性分子の同定に成功した。このことにより、吸血昆虫・ダニの特異な吸血機構を明らかにし、吸血という特異な食餌法の進化的生理的意味ならびに生物の多様な生き様と適応戦略の一端を示すことができた。同時に、これら新規活性分子はヒトを含む哺乳動物の血液や血管等の調節機構解明のための解析手段物質(ツール)としても利用できる点も、領域横断的な成果であり意義深いものといえる。
臨床的観点からの成果
これら様々な新規生理活性分子は、動物の血液や血管の生理機能を直接制御する物質であることから、ヒトの血液や血管系に係わる様々な疾患の予防や治療のための医薬素材分子として利用できる。さらに今後、更なる構造活性相関の解明や創薬リード分子を開発することを通して、作用点や作用機構の特異性から今までにない新規な薬理活性を有し、より効果的で副作用の少ない医薬の創出も期待される。また本研究で得られた知見は、唾液腺を介した病原微生物の媒介機構の解明やワクチン開発に向けた研究に繋がる可能性もある。
ガイドライン等の開発
特記事項無し。
その他行政的観点からの成果
特記事項無し。
その他のインパクト
特記事項無し。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kato, N., Okayama, T., Isawa, H. et al.
Contribution of N-terminal and C-terminal domains of Haemaphysalin to inhibition of activation of the plasma kallikrein-kinin system.
Journal of Biochemistry , 138 (3) , 225-235  (2005)
原著論文2
Morita, A., Isawa, H., Orito, Y. et al.
Identification and characterization of a collagen-induced platelet aggregation inhibitor, triplatin, from salivary glands of the assassin bug, Triatoma infestans.
FEBS Journal , 273 (13) , 2955-2962  (2006)
原著論文3
Isawa, H., Orito, Y., Iwanaga, S. et al.
Identification and characterization of a new kallikrein-kinin system inhibitor from the salivary glands of the malaria vector mosquito Anopheles stephensi.
Insect Biochemistry and Molecular Biology , 37 (5) , 466-477  (2007)
原著論文4
Isawa, H., Orito, Y., Jingushi, N. et al.
Identification and characterization of plasma kallikrein-kinin system inhibitors from salivary glands of the blood-sucking insect Triatoma infestans.
FEBS Journal , 274 (16) , 4271-4286  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-